【政論】23年度予算案 これが政治主導といえるのか!?産経ニュース配信記事2010年12月25日付

産経ニュース配信記事2010年12月25日付

【政論】23年度予算案 これが政治主導といえるのか!?

 民主党政権が初めて最初から編成した平成23年度予算案を見てため息が漏れた。子ども手当など先の衆院選マニフェスト(政権公約)を中途半端に実現するために財務省がお膳立てした埋蔵金で帳尻を合わせただけではないか。揚げ句の果てに「24年度から消費税増税」。これが菅直人首相の唱える政治主導なのか。

 「元気な日本を復活する予算ができた」「地域主権改革は知事会から評価が高い」-。

 24日の閣僚懇談会で、各閣僚は上気した表情で所管事業の予算化を自賛しあう「自慢大会」となった。

 最後を締めくくった首相は「広報機能を強化し、大いに訴えていきましょう」。予算案が評価されないのは各省庁の広報が悪いと思っているのか。それともマスコミの報道に責任転嫁するつもりなのか。

 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で首相は「行き当たりばったり」の対応を重ねて国益を損ねたが、この傾向は予算編成でも繰り返された。

 「何とか科学技術予算をプラスにしてくれ」

 予算編成作業が大詰めを迎えた22日午後、首相は野田佳彦財務相に科学技術予算の上積みを指示した。

 理系出身の首相が科学技術分野にこだわるのは分かるが、それならば概算要求の段階から指示を出せば済む話だ。直後に「科学技術の面ではわがままを言わせてもらう」と自らの政治決断をアピールしたことを考えると「出来レース」ではないかと勘ぐってしまう。

 もしそうならば、自らが「財務相と閣僚のセレモニーにすぎない」と批判し、廃止した「復活折衝」と同じではないか。しかも手柄は首相が独り占め。こんな陳腐な演出は、どんな高等な広報技術でも糊塗(こと)することはできないはずだ。

 法人税減税でも、首相は13日、実効税率5%引き下げを一方的に表明し、財源調整は官僚に丸投げした。公的年金支給額の引き下げも「据え置き」を一方的に指示し、閣僚の抵抗にあい断念に追い込まれた。首相の政治主導はむしろ混乱を呼んだといえる。

 ただ、今回の予算編成で「無駄遣い根絶で16・8兆円の財源を見いだせる」と大風呂敷を広げた先の衆院選マニフェストが実現不可能であることだけははっきりした。それならば、まずマニフェストを撤回し、国民に謝罪することが政治主導を実現するための第一歩ではないか。(加納宏幸)

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com