山形大:学長選、教職員投票廃止の方針 来年の次期から『毎日新聞』山形版2010年12月17日付

『毎日新聞』山形版2010年12月17日付

山形大:学長選、教職員投票廃止の方針 来年の次期から

◇「意見聞く場失われる」 組合、白紙撤回求める

 山形大の学長選考会議(議長、有馬朗人元東大学長、元文相)は、来年の次期学長選から全学の教職員による投票「学内意向聴取」を廃止する方針を決めた。来月の学長選考会議で規則を変え、正式決定する見通し。この方針に山形大職員組合は反発。「大学構成員の意見を聞く貴重な場が失われる」と白紙撤回を求める声明を発表した。投票をせずに学長を決める国立大学法人は全国で4大学だけという。

 現在の学内投票は、助教以上の教員と課長補佐級以上の職員約900人が対象。投票結果を踏まえて、選考会議が協議し学長を選ぶ。前々回05年までは、学内投票1位の候補者がそのまま学長に選ばれた。しかし、前回07年は学内投票で2位だった前文部科学事務次官の結城章夫現学長が、選考会議で逆転して学長に選ばれた。学内投票の結果が覆ったのは初めてで、「天下り人事だ」と当時、学内から批判が噴出した。

 選考会議のメンバーは、大学の各学部長と付属病院長の学内委員7人と、学外の有識者7人の計14人。廃止の方針を決めた11月22日の選考会議には13人が出席。有馬議長を除く12人のうち、出席した学外委員全5人を含む7人が廃止に賛成、5人が反対したという。

 山形大総務部によると、選考会議では廃止の理由として「票集めに奔走し、選挙後に遺恨を残すなど弊害が大きい」「大規模な学部が有利」などが挙がった。また投票の代わりに学部ごとに新たに意向聴取をする方針が決まった。

 この決定について、教職員組合の松本邦彦書記長は「寝耳に水で驚いている。民間会社と異なり、大学は教育研究機関。『大学の自治』が認められており、学長を選ぶ時に構成員の意見を聞く場が無いのは問題だ」と憤っている。

 一方、投票廃止に賛成した山下英俊医学部長は「投票結果に引きずられず、組織のトップを選ぶ(選考会議の)責任を明確にする必要があると思った」と説明する。

 背景に04年の国立大学法人化で、学長の権限が強化された一方、学長に一層の経営能力が求められるようになった点がある。山下医学部長は「法人化が大きな転機になった。民間会社で投票をして経営者を選ぶ会社はない」と説明。これに対し松本書記長は「大学に十分な理解の無い学外の委員に学長を選ぶという重大な判断を委ねるのは危険だ」と危惧する。

 山形大によると、全国の86国立大学法人で教職員らによる投票を実施しない大学は、東北大▽鳴門教育大▽政策研究大学院大▽総合研究大学院大--の4大学だけ。東北大は06年の学長選から廃止した。【林奈緒美】

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