朝をひらく 【西頭 徳三さん】地域貢献 共通目標達成 全力で『朝日新聞』富山版2010年11月29日付

『朝日新聞』富山版2010年11月29日付

朝をひらく 

【西頭 徳三さん】

地域貢献
共通目標達成 全力で

 国立大学の法人化は2004年度だった。それ以降、どの大学でも「地域貢献」ということを言い始めた。富山大学も例外ではない。教育や研究と並んで、地域貢献を目標の柱の一つにしている。

 大学が、なぜ地域貢献を重視するのか。その理由として▽足元の急速な少子高齢化▽地域経済・医療体制の弱体化▽財政難による大学運営費交付金の減額――など、様々な地域社会の変化が列挙できる。

 こうした変化を中期的な視点で見ると、大学と地域のかかわり方が根底から変質したと指摘できる。特に20世紀後半以降の社会構造の工業化により、科学技術は大学だけではなく民間でも研究され、知識は社会全体に拡散し、大学の独占物でなくなった。大学は地域社会の様々な活動体と密接に連関し合う形態へと変化したのだ。

 2年前、富山大学は地域貢献を推進するため、学内の関連センターを再編・統合して、「地域連携推進機構」を立ち上げた。

 本学の地域貢献は十分な効果を上げているか。地域社会の活性化に役立っているか。残念ながら、現段階では「否」だ。副機構長の升方勝己教授はこれまでを振り返り、次のような提言をされた。大学は地域からの多様な要請に追われて受け身だった。これからは地域に存在する資源を共有化し、大学は地域連携活動で「ハブ機能」を果たすべきだ、と。

 大学をはじめ、地方公共団体や企業などは個々の目標を持ち、その実現に向けてそれぞれの役割を果たしている。共同的な地域連携事業の目標が明確でないと、各自の役割が優先され、やがて「あなた任せ」の状態になり、期待された事業効果を生まない。

 だから、最も重要なことは地域連携事業ごとに共通目標を設定し共有することになる。第二に、あくまでも本来的な機能をベースに、役割分担をすること、である。

 大学側から見れば、本来的機能の「教育」、つまり地域貢献にかかわる人材育成機能こそが、最も力を発揮する要素だ。大学は最先端科学技術を開発できても、それを産業化や製品化するノウハウを持ち合わせていないからだ。

 私は同機構にある「地域づくり・文化支援部門」の金岡省吾教授が推進している地域再生塾「高度差4000」での「地域貢献人材育成学」の展開に強い関心を抱いている。

 地域貢献とは、実現可能な共通目標を設定・共有し、全関係者が全力投球で自ら獲得するもの、と私は現時点で理解している。

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