国立大:不況で学費重荷…名古屋大で値上げ反対署名急増『毎日新聞』2010年11月28日付

『毎日新聞』2010年11月28日付

国立大:不況で学費重荷…名古屋大で値上げ反対署名急増

 長引く不況のため学費納入に苦労する学生が増えている。奨学金の貸与希望者は年々増加。国立大学への国の交付金が今後、大幅に減らされれば、学費が値上げされる可能性もあり、名古屋大学の学生たちは「値上げ反対」の署名活動を展開する。学生たちの危機感を反映し、署名数も増えている。【福島祥】

 名古屋大理学部自治会が6月に学部1年生150人を対象に実施したアンケートによると、3分の1にあたる49人が年間53万5800円の学費を「高い」と回答。奨学金を「借りている」「これから借りる予定」とした学生は58人に上った。

 日本学生支援機構の過去10年間の奨学金の貸与人数は、01年度の75万人から増え続け、10年度は118万人に達した。全大学生に占める割合をみると、08年度に奨学金を受けた大学生は86万9600人で、全体の32.4%を占めた。

 04年度に国立大学法人になって以降、国の国立大運営費交付金の総額は毎年約1%ずつ減ってきた。さらに文部科学省は来年度予算の概算要求で、前年度比マイナス4.8%と大幅に削減。同省は「特別枠」として大学向け事業費を要望しているが、これらが認められなければ、しわ寄せが学費値上げという形で学生に及ぶ可能性も懸念されている。

 名古屋大の学生有志は10月下旬から値上げ反対を大学側に訴える署名活動を実施。09年に11月初旬から12月中旬まで行った同様の活動では370人分が集まったが、今年は24日までの約1カ月で既に711人分に達した。

 署名を呼びかける名古屋大文化サークル連盟の永野敏夫委員長(理学部4年)は「『親が整理解雇されそう』『給料が減るかも』という声も聞く。生活費を稼ぐため部活に入るのをあきらめた新入生もいるようだ」と学生を取り巻く厳しい経済環境を訴える。

 署名を呼び掛けるチラシでは、ある男子大学生の声を紹介。高校3年の夏、父親の勤務先が倒産。父はコンビニエンスストアでアルバイトし、母は介護士をしている。妹は高校生。男子大学生は月4万5000円の奨学金を借り、週4回程度のアルバイトで通学費や教科書代、昼食代を賄う。音楽サークルに参加しているが「家計が苦しいので、部の方は少し休もうかと思っています」という。

 東海地方では、愛知教育大の松田正久学長が国の交付金削減反対を訴える緊急声明を7月に発表。大学側も削減を食い止めようと国などに働きかけている。

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