大学院生の研究環境改善を求める要請書2010 年11 月18 日全国大学院生協議会

文 部 科 学 省
大臣
髙木 義明 殿

大学院生の研究環境改善を求める要請書

2010 年11 月18 日
全国大学院生協議会

私たち全国大学院生協議会(以下、全院協)は、大学院生の研究・生活諸条件の向上および大学における大学院生の地位と権利の確立を求めて活動している組織であり、全国の国公私立大学大学院の院生協議会・院生自治会によって構成されています。全院協では、2004 年より「大学院生の経済実態に関するアンケート調査」を実施し、大学院生の研究生活実態の把握とその改善を求める政策提言をおこなってきました。

政府は6 月22 日に閣議決定された「財政運営戦略」のなかの「中期財政フレーム」において、2011 年から3 年間「基礎的財政収支対象経費」が前年度を上回らないとの方針を示しました。文科省の試算によれば、国立大学法人の収入の半分を占める運営費交付金は、これにより年率8%の削減を余儀なくされます。学生一人あたりの授業料23 万円の値上げ、もしくは研究経費の32%削減に相当する大規模な減額であり、大学の教育・研究機能が停止しかねない問題として、各国立大学や学長らによる声明が相次ぎました。

また、2005 年の行革推進法で、5 年間で5%以上の人件費削減をおこなうことが義務付けられて以降、大学では退職教員の不補充、非正規雇用の拡大が進められてきました。2009 年に中教審がまとめた「大学院の現状について」では、人文科学分野の博士課程修了者のうち非就職者は43%にのぼり、死亡・不詳の者と合わせると実に7 割近くが不安定な進路状況にあることが明らかとなっています。

さらに、全院協のおこなったアンケート調査では、大学院生の多くが高額な学費負担と低収入のなかで、大学院生活を維持していけるのかという経済上の不安をかかえていることが浮き彫りとなりました。生活費のみならず、高い授業料や研究費を捻出するためのアルバイトに時間を割かれ、研究活動が滞るという悪循環も生じています。経済不安、就職不安が高まるなかで、博士課程への進学を断念する大学院生も増加しています。

大学院生倍化政策が講じられて以降、その経済的支援や受け皿がないなかで、多くの大学院生が研究活動を安定的におこなえる環境を欠き、また、大量の「高学歴ワーキングプア」が生み出されてきました。このことは、次世代の研究者・教育者の育成や高等教育機関の担い手の再生産、さらには日本の学術研究の継承・発展という観点から鑑みても、大きな損失というよりほかにありません。大学院生の研究・生活環境の改善を求めて、以下の項目について貴省に強く要請いたします。

要請項目

1.学費負担の軽減および研究生活の保障につながる経済支援の拡充
①授業料の標準額の減額、および学費の段階的無償化を追求することを求めます
②授業料免除枠の拡大などにより高額な学費負担を軽減することを求めます
③TA・RA 制度、特別研究員制度の拡充をはかることを求めます
④私費外国人留学生学習奨励費給付制度の拡充、宿舎確保など、留学生への生活・経済支援をおこなうことを求めます

2.奨学金制度の充実
①給付制奨学金制度の創設と無利子奨学金採用枠の拡大を求めます
②個人信用情報機関利用の即時撤廃を求めます
③返還猶予期間の上限(5 年)の撤廃と返還免除枠の拡大、およびそれら制度の周知徹底を求めます
④機関保証制度における保証料の減額を求めます

3.就職状況の改善
①大学教員の増員をはじめ、就職率が向上するための必要な措置をとるよう求めます

4.国立大学法人運営費交付金および私学助成の拡充
①基盤的経費の拡充とその安定的確保を求めます

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