奨学金利用増 人材育成の根幹が危うい『琉球新報』社説2010年11月21日付

『琉球新報』社説2010年11月21日付

奨学金利用増 人材育成の根幹が危うい

 県内5大学に通う学生の4割強が奨学金に依存し、依存率は毎年高まっているというから深刻だ。

 各大学も学費の減免など独自の奨学支援制度を強化しているが、支援の限界も見え始めている。

 急ぎ抜本的な制度改革や支援強化策を講じなければ、沖縄を担う中核的な人材育成が中折れしかねない。

 学費が調達できないなどの経済的な理由から休学した学生は、昨年度だけでも219人に上る。大学教育の継続が困難となり除籍された者も224人。退学者は40人を数える。

 大学合格のために努力を重ねながら、入学した後で就学資金不足から志半ばで中退を余儀なくされる。長びく不況が最も大きな原因だ。学生や学費を支援する親、きょうだいも「給与やボーナスが減額されて経済的に厳しい」との悲鳴と救済要望の声が増えている。

 県内5大学の奨学金受給者数は、この5年間で急増している。2005年度の4622人から、09年には7621人と、約3千人(65%)も増えている。

 「奨学金の受給者は経済のバロメーター」と、沖縄国際大学の富川盛武学長(経済学)は言うが、全学生に占める受給者は43%にも上る。経済的な支援を必要とする大学生たちの比率が、不況を背景に年々増加傾向にある。

 学ぶ意欲はあっても経済的な困窮から休学や退学を強いられる。沖縄の将来にとって、大きな損失となりかねない事態である。

 政府や県、経済界の沖縄振興の論議の中で、人材育成はすべての振興策の要と強調され続けてきた。

 人材育成の一つの重要な指標ともされる「大学進学率」は、全国平均を大きく下回り続けている。

 現在も全国平均が5割超の中にあって、沖縄県は3割台。高校卒業者数からは毎年約3千人が大学教育を受ける機会を逸する計算だ。

 学歴に対する評価は変化しているとはいえ、上場・中堅企業の多くが「大卒」程度を採用資格に課している。

 県民所得は全国最低水準、貯蓄率も低く、失業率は全国最悪の厳しい現実がある。離島県の沖縄にとって子弟の県外大学進学は大きな費用負担を強いられる。

 県内外を問わず、沖縄の若者たちに高等教育を受ける機会を全国並みにいかに保障し、実現するか。抜本的な支援策を、国や県も含め早急に論議し、確保したい。

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