学生怒った! 大学予算1割カット“経済的理由に関係なく学びたいのに”『しんぶん赤旗』2010年11月22日付

『しんぶん赤旗』2010年11月22日付

学生怒った! 大学予算1割カット
“経済的理由に関係なく学びたいのに”

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 「国立大学の授業料が年間20万円以上値上がりし、1・5倍になってしまう」「学部や研究室の廃止につながる」―。大学生のなかから、民主党政権が来年度の大学予算を1割削減する概算基準を決めたことにたいし、深刻な影響を憂慮した声が上がっています。各大学では、学生の声にこたえ、自治会を先頭に大学予算削減をやめて抜本的増額を求める運動をはじめています。(伊藤悠希)

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アンケートに反響 京都

 “自治会としてできることはないか”と自治会の常任委員会が7月から情報収集をし、勉強をしてきたのが、京都大学法学部自治会です。まずは学生の声を聞くことにしようと9月末、前期の成績配布の日に、学費・奨学金にかんするアンケートを実施しました。
 全学部生1500人のうち約3分の1にあたる学生が回答。4分の3以上の学生がこれ以上の学費の値上げについて「問題だ」と答えました。現在の学費(年間約53万円)について「負担に感じる」と答えた学生は回答者の半数を超えました。
 アンケート結果を学部棟の入り口に近いところに目立つように張り出しました。
 政府が受け付けていた予算にかんする意見・要望(パブリックコメント)に、「運営費交付金を減らすな」「大学の予算を増やせ」という意見を送ろうとよびかけるビラを掲示し、法学部や一般教養を学ぶ教室に配布しました。早朝や昼休みの時間を使い、5日間で1500枚のビラを配りました。
 法学部長に対しては、運営費交付金の大幅な削減が実施された場合の大学側の対応をたずねる質問書を10月21日に提出しました。(1)大学の研究教育環境に深刻な被害をもたらすと予想されるが、どう考えるか(2)授業料の値上げや課外活動援助の削減など、学生の負担増を伴う措置を実施する考えなのか―との内容です。
 11月4日には大学内の学生有志団体が京大総長に公開質問状を提出。法学部自治会はこの行動にも名を連ねました。
 自治会執行部のある3回生は、大学の運営にかかわる予算を“事業仕分け”の対象にすること自体がおかしいといいます。
 「大学とは、経済的理由に関係なく学びたい人は誰でも通えるところのはずです。教育を受けることは個人の利益になるからお金を払うべきだという『受益者負担』の発想はやめて、究極的には学費はゼロにしてほしい。大学を誰にでも開かれた空間にしてほしい」
 自治会は今後、大学側の回答も待って新しいビラを配布し、他学部や学生と広くつながって大学当局にも働きかけたいとしています。

緊急署名に次々と 東京
 東京では、東京都学生自治会連合と個人加盟のネットワーク「学費ZERO(ゼロ)ネット東京」が、「2011年度大学予算1割削減に反対し増額を求める緊急署名」を集めています。
 「教育にお金をかけないのはおかしい」「学費の値上げはやめて」「奨学金の返済が不安」との声があがっています。10月からの1カ月半の取り組みで約3600人分集まっています。
 東大本郷キャンパス、東大駒場キャンパス、中央大学、日本社会事業大学、東京農工大学農学部では昼休みにビラを配布したり、研究室を訪問したりして集めています。1人で100人分の署名を集めた東洋大学の学生や29人分の署名を届けてくれた山梨大学の学生もいます。
 学園祭をしている各大学前で宣伝をしたところ、学生だけでなく、保護者や高校生、地域住民、教職員も署名に応じてくれました。
 東大法学部で1週間後に回収するとして署名を配布したところ、署名用紙をいっぱいにして持ってきた学生や家族や知り合いによびかけて2枚分を届けに来た学生もいます。


 東京大学教養学部学生自治会は10月から、予算削減が各学部にどのような影響をもたらすのか、各学部長にインタビューをしています。すでに全10学部中、農学部、理学部、工学部、文学部、薬学部、教育学部、法学部の7学部長がインタビューに応じました。
 その内容をビラにして配布しながら、緊急署名も集めています。

全学連が来月要請・集会
 全日本学生自治会総連合(全学連)は12月17日、学費負担軽減や予算増額、就職難打開を求め、国会議員や経済界へ要請をします。
 18日には交流集会をします。分科会、全体会で思いや実態を交流します。集会後はリクルートスーツパレードをします。

◇ 全学連は、「大学予算の1割削減反対」の声を届けるため、学生や教育関係者、国民の思いをポストカードに書いて届ける「日本の未来を守れ! ポストカード作戦」を行っています。「学びたい思い」や「政府や社会に伝えたいこと」を募集しています。
 問い合わせは全学連へ=℡0422(38)9047

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予算1割削減
 政府は来年度予算の概算要求基準で前年度比1割削減との基準を閣議決定しています。国立大学予算に削減率を適用した場合、国立大学の運営費交付金は1000億円以上の削減となります。小規模な国立大学29校分の予算に相当します。国立大学が法人化してからの6年間で運営費交付金は毎年削減され、合計830億円削られてきました。それを上回る額です。

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