伊都キャンパス移転『西日本新聞』2010年9月29日付

『西日本新聞』2010年9月29日付

伊都キャンパス移転

 福岡市東区の箱崎キャンパス(工学系、理学系、文系、農学系の7学部と大学院)と、同市中央区の六本松キャンパス(1、2年生が学ぶ全学教育など)が対象。計画は2005―19年度。これまで工学系と全学教育の移転が完了し、伊都に通う学生・教職員は現在、約1万800人。最終的な学生・教職員数は約1万8千人。医学系の馬出(東区)、芸術工学系の大橋(南区)、理工系大学院などがある筑紫(春日市)の各キャンパスは現在地に残る。

【プラス・アングル】西区の九大学研都市駅周辺 学生向け物件「供給過剰」? 不足一転、空室不安も

 開発が進む九州大学伊都キャンパス(福岡市西区、糸島市)周辺で、学生向けの住宅事情に異変が起こりつつある。これまで、キャンパス移転に伴う学生数の急増に物件が追いついていない状態が続いていたが、今年に入ってアパートやマンションの建設が相次ぎ、来春には逆に供給過剰になる可能性が出てきた。地元や大学関係者からは、需要に見合った開発を求める声が上がっている。 

 ■新たに千戸以上

 伊都キャンパスの最寄り駅、JR筑肥線九大学研都市駅前(西区)。建築中のマンションがいくつも目に入る。建築現場の囲いには「入居者募集」「九大生向け」などの文字も。「駅周辺で建築中か建築予定の学生向け物件は今、確認しているだけで千戸以上」と地元で30年以上営業を続ける不動産会社の池勝次社長(66)は話す。今後もさらに増える可能性があるという。 

 九大が計画する来春の新入生は約2500人。全員が伊都キャンパスに通うものの、2年生の途中から学部ごとに通うキャンパスが異なることもあり、生協などの予測では、伊都地区への居住を希望するのは1000―1400人程度と見込まれるという。転出する学生による入れ替わりを差し引くと、新たに必要な戸数は600―800ほどで、現在建築中の戸数を大きく下回る。 

 「ここまで物件が急に増えるとは思っていなかった」と生協のある役員。来春は供給数が需要を上回るとみられている。 

 ■ニーズ満たすか 

 今春、伊都キャンパス周辺の学生向け物件がほぼいっぱいとなり、同駅前の不動産店ではいい物件を抑えようと合格発表を待たずに契約をする例が相次いだ。 

 それが状況一変したのは、「これまで様子見をしていた地主や開発業者が一斉に動きだした結果ではないか」と地元の不動産関係者たちは口をそろえる。 

 ただ、学生向け住居の“建築ラッシュ”で戸数が増えても、必ずしも学生のニーズが満たされるとは限らない。伊都に暮らして3年目の九大大学院工学府修士1年の北田さん(22)は「この辺りはバイト先も少ないので、家賃が安いことが重要。物件が増えても高かったら選択肢にはならない」と話す。

 ■家賃4万円超も 

 池社長が自社の管理する物件に暮らす学生約200人に実施した聞き取り調査でも、約8割が4万円以下の安い物件を望んでいた。ところが池社長によると、現在建築が進む物件の部屋面積は25平方メートル以上とやや広めで、家賃が4万を超える可能性が高いという。「九大生の希望に合わない物件が建ち過ぎている。このままでは新築でも空室だらけの物件が出てくるのではないか」。

 

 こうした状況について、九大は「民間の動きについては見守るしかない」(広報課)と当面は静観の姿勢。同大新キャンパス計画推進室副室長の坂井猛教授(48)は「仮に物件が供給過剰だとしても、駅の近くならば学生以外の単身者も使える。必要なのはニーズを見据えた物件作り。大学としては、学生のニーズを把握するために定期的な調査活動などを続けていきたい」と話している。

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