奨学金拡充 教育格差は許されない『琉球新報』社説2010年9月1日付

『琉球新報』社説2010年9月1日付

奨学金拡充 教育格差は許されない

 日本学生支援機構が大学生らに貸与する無利子奨学金を拡充する方針を決めた。基準を満たす学生なら申請者全員が受けられるようにする方針だ。必要な措置であり、正しい方向と評価したい。

 2010年度の無利子奨学金貸与者は約35万人いる。だが枠の不足で毎年2万6千人前後が奨学金を受けられなかった。文部科学省は今回、その2万6千人分の枠の増額を11年度概算要求に盛り込んだ。

 教育の機会はすべての人に保障されるべきだ。その意味で、今回の方針は理にかなっている。

 高校無償化も、「機会保障」という理念では同一線上にある。「コンクリートより人」という昨年の民主党マニフェストの理念にも合致しよう。予算査定が焦点となるが、財政事情が厳しいとはいえ、何を優先すべきか、政権の出発点に戻って判断すべきだ。

 そもそも日本は教育予算の乏しさが批判されてきた。教育機関への公的財政支出をGDP(国内総生産)比で見ると、日本は5・8%(06年)。先進国と同義語とも言えるOECD(経済協力開発機構)加盟国で見ると、28カ国中、下から2番目だ。高等教育に限ると最下位である。

 教育支出のうち私費で負担している割合を見ても、加盟国平均は27・4%にすぎないが、日本は67・8%と突出している。3分の2を私費で負担する形であり、これでは低所得者の家庭では進学が困難だ。教育格差も甚だしい。

 教育格差が許されないのは、人道上の理由からだけではない。若者が資金不足ゆえに高等教育を受けられず、可能性を伸ばせないのでは、社会全体の損失になるからだ。その意味で、今回の方針は社会全体にとっても適切と言えよう。

 充実すべきは機会保障だけではない。小学校1学級当たりの児童・生徒数はOECD平均の1・3倍、中学は1・4倍だ。中央教育審議会が先月、小中学校の少人数学級化を提言したが、むしろ遅すぎるくらいだ。

 過去10年間、先進各国が政策的に教育予算を増やす中、日本だけは増やさなかった。米国は教員以外のスタッフが教職員全体の46%もいるのに、日本は24%にとどまる。日本の教員は忙しすぎる。これでは教育の質にも影響しよう。

 資源小国・人材立国なら教育予算増は当然だ。教育の質や機会の保障に大胆な取り組みを望みたい。

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