奨学金の返還滞納、10年で2.6倍 文科省が報告書『朝日新聞』2010年9月3日付

『朝日新聞』2010年9月3日付

奨学金の返還滞納、10年で2.6倍 文科省が報告書

 独立行政法人「日本学生支援機構」が扱う奨学金の返還滞納者が増えている問題で、文部科学省は2日、有識者がまとめた報告書を公表した。3カ月以上の滞納額は2009年度に2629億円と10年間で2.6倍に増加しているが、回収体制が追いついていないとして機構に抜本的な組織改革を求める方針だ。

 機構は04年に設立されて日本育英会から大学生の奨学金事業を引き継いだ。1999年度以降、有利子奨学金の規模が急速に拡大。無利子も合わせると今年度の貸与人員は118万人、事業費は10年前の2.4倍の1兆55億円に。

 一方で、貸し倒れの危険がある「リスク管理債権」にあたる3カ月以上の滞納額は、09年度に2629億円。卒業して返還中の273万人のうち21万人に達する。

 債権回収に詳しい弁護士や銀行担当者ら6人による有識者が業務を検証したところ、育英会時代からの滞納者の捕捉が難しいのに加え、業務に使うシステムが古いことも回収が進まない理由に挙がった。たとえば、返還期限の猶予願の処理だけで平均56日かかっており、職員へのアンケートでも「月に何日もシステムが停止する」「統計処理に限界があり、手作業での集計が多くなる」との声が寄せられた。

 報告書では、組織内の責任の明確化や業務の集約・効率化を求めたほか、奨学金を借りる窓口になる大学ごとの滞納率の公表について検討が必要だとした。(見市紀世子)

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