技術移転機関「長崎TLO」5月に解散 長崎大、黒字化めど立たず『長崎新聞』2010年9月2日付

『長崎新聞』2010年9月2日付

技術移転機関「長崎TLO」5月に解散 長崎大、黒字化めど立たず

全国のTLOの取り消し状況

 長崎大(片峰茂学長)の研究者らが生み出した研究実績などの知的財産を実用化するため、企業との調整を図る技術移転機関「株式会社長崎TLO」(長崎市)が5月に解散していたことが1日、分かった。運営経費に関する国からの補助金の期限切れを背景に、継続的な黒字化にめどが立たなかったことが主因。

 TLO制度は、2004年の国立大の独立法人化に伴い、大学の新たな収入の柱と注目された。しかし、民間との成約案件によるロイヤルティー収入を基盤にする運営は、成約そのもののハードルが高く「至難の業」(ある大学の産学官連携担当者)。「国の補助金がなければ成り立たない制度」(同)という実情もあり、全国的にTLOの解消が相次いでいる。

 長崎TLOは、長崎大教授らが出資し、04年1月に設立。研究者らが開発した特許を企業に中長期の契約で貸し出したり売却することで、ロイヤルティー収入として約4割を得る仕組みで、独製薬会社と契約した08年度が最高の年間約3600万円の収入があった。最終剰余金は190万円だった。

 しかし、最大で年間1400万円の支援があった国補助金は規定上、設立5年間の支給のため長崎TLOは08年度で終了。09年度以降は明確な収入の確保に見通しが立たなかったため「赤字に陥る前に解散し、大学内の類似組織で特許の民間転用を進める」と判断した。

 長崎大は今後、知的財産本部を中核にして、研究者と企業との共同研究や大学発ベンチャーの支援といった機能を強化する方針。

 TLOをめぐっては、これまで全国で、筑波大や北海道大などの6機関が経営の効率化を主な理由に解散し、学内組織に一本化するなどしている。

 産学官連携に詳しい技術ジャーナリストの丸山正明氏は「全国的に経営状況の厳しさからTLOを解散し、機能を大学内に取り込む動きは今後も進むのではないか。大学側は、黒字化の事業モデルを明確にすべきだ」としている。

 ◆ズーム/TLO

 研究者が持つ特許を民間企業に転用するための機関で、株式会社や財団法人などの組織形態がある。1998年に成立した大学等技術移転促進法(TLO法)により設置が可能になった。経済産業省によると現在、株式会社東京大学TLOなど学内組織と分離した独自のTLOは全国に29機関。赤字に陥っている機関は増加傾向で国補助金の交付終了後、経営が厳しくなるケースが多いという。

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