医学部の地域枠、16大学定員割れ…読売調査『読売新聞』2010年8月17日付

『読売新聞』2010年8月17日付

医学部の地域枠、16大学定員割れ…読売調査

地域の医師不足解消を目的に、ここ数年急増した医学部の地域枠が、16大学で2010年度、定員割れだったことが読売新聞の調べでわかった。

地域枠全体の定員から見ると9割以上確保できたが、地域によって明暗が分かれた。

地域枠は主に、地元出身者を対象に推薦などで選抜し、奨学金と引き換えに一定期間の地域勤務を義務づける場合が多い。文部科学省によると、07年度には79大学中21大学(定員計173人)だったのが、地域の医師確保策として、10年度には(入学後に希望者を募る方式も含む)65大学(同1076人)に急増。医学部の全入学定員(約8800人)の1割以上を占める。

調べでは10年度、16大学で募集定員に満たず、不足分は計80人だった。不足分は一般枠の合格者を増やすなどして対応していた。長崎大では5人の地域枠に3人しか志願がなく、合格者はゼロ。宮崎大では10人の枠に24人が志願したが、センター試験の成績が合格ラインに達せず、合格者は2人だった。定員通りの合格者を出したが、入学を辞退され結果としてゼロという大学があったほか、定員には達したものの、合格後に奨学金を辞退した例のあった大学が複数あった。

入学定員(約110人)の半分近くを地域枠に充てている旭川医大は、募集50人に合格者は22人だった。吉田晃敏学長は「地域枠は、地元の学生を大切にしているメッセージとして意義がある。今後も続けたい」と、11年度から合格基準を引き下げて確保に努める考えだ。

医学教育に詳しい平出敦・近畿大医学部教授は「入学前に地域勤務を約束させるより、入学後に地域の現場を体験させて、希望者を育てることが大切ではないか」と指摘している。

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