室蘭工業大学が社会的な使命を果たすために-平成23年度概算要求シーリングへの要望-平成22年7月20日国立大学法人室蘭工業大学長佐藤 一彦

平成22年7月20日

室蘭工業大学が社会的な使命を果たすために
-平成23年度概算要求シーリングへの要望-

国立大学法人室蘭工業大学長
佐藤 一彦

室蘭工業大学は,自然豊かなものづくりのまち室蘭の環境を活かし,総合的な理工学教育を行い,未来をひらく科学技術者を育てるとともに,人間・社会・自然との調和を考えた創造的な科学技術を展開し,地域社会さらには国際社会における知の拠点として豊かな社会の発展に貢献することを理念として定め,「創造的な科学技術で夢をかたちに」を合い言葉に,教職員が一丸となって教育・研究と社会連携に取り組んでいます。学士課程においては,全学科・コースの教育プログラムがJABEE(日本技術者教育認定機構)の認定を受け,その基準に対応する教育を行うことにより教育の質を確保しています。また,大学院博士前期課程では,研究・実践能力,応用力を高める教育を行い,幅広い教養と国際性,深い専門性と倫理観を有する専門技術者を育成するとともに,後期課程においては,前期課程の教育研究をさらに深化させ,創造的な研究者・科学技術者を育成するための理工学教育と研究指導を実施しています。

研究については,教員個人やグループによる基盤研究を着実に進め,その水準向上を目指す一方,3重点研究分野(環境科学・防災研究,航空宇宙機システム研究,新産業創出分野研究)を定め,組織的・戦略的な研究を推進しています。

さらに,地域共同研究開発センター,ものづくり基盤センター等による地域連携事業のほか,教職員個々のレベルでの地域交流も盛んに行われており,市民と目線を合わせ,地に足のついた活動を展開している実績が,社会から高く評価されているところです。加えて,国際交流センターを中心とした国際交流・連携事業を活性化させることによって,外国人留学生の受入数が増加傾向に転じ,教育研究面における国際化もめざましく進展しています。

本学における教育・研究及び社会連携に必要な財源は,主に,国からの運営費交付金,学生からの授業料等納付金,外部からの競争的資金の獲得により賄われています。しかしながら,運営費交付金については,平成16年度の法人化以降,毎年1%の効率化係数による減額,さらには総人件費改革による毎年1%の減額を強いられてきました。削減額は平成22年度までの累計で3億7500万円に上ります。本学はこの削減に耐えつつ,社会の負託に応えるため,弛まぬ経営努力を続けてきました。

このたび,6月22日に閣議決定された「財政運営戦略」の「中期財政フレーム」によると,平成23年度からの3年間,「基礎的財政収支対象経費」は前年度を上回らないこととされ,その結果,その他の一般歳出は年率8%の削減を余儀なくされることが予想されています。「中期財政フレーム」が機械的に適用されれば,国立大学法人の運営費交付金もその対象となり,削減額は単年度だけでも927億円になります。この試算による本学の平成23年度運営費交付金に与える影響は,約2億3400万円の減額となり,法人化以降6年間で削減された3億7500万円の約3分の2に相当する凄まじい削減幅です。

本学において「2億3400万円」が削減されると,

① 学部・大学院の一年間の教育研究費に相当することから,大学の消滅につながります。

② 本学の特色ある3プロジェクトであるスペースプレーン開発,ロボットアリーナ及びものづくり教育の1年間の実施経費に相当することから,3つのプロジェクトの中断につながります。

③ 全教育研究施設の1年間の運営費を上回る金額に相当することから,教育研究施設の廃止につながります。

④ 授業料収入によって削減分を補填しようとすれば,学部学生の場合,一人あたり年額10万円の負担増を強いることとなります。

本学は,先に述べた理念を全うし,「知の拠点」として社会的な使命を果たしていくにあたり,運営費交付金の削減による本学への打撃を看過することは到底できず,誠に憂慮すべき事態であると受け止めています。

我が国の次世代を担う人材の育成と学術研究,これらを通じた社会貢献に邁進している国立大学の活動を低下させることがないよう,高等教育予算は今以上に充実されるべきであり,少なくとも,国立大学法人運営費交付金は,平成23年度概算要求シーリングにおける削減の対象としないことを強く要望いたします。

以 上

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com