『日本経済新聞』2010年5月26日付
業績や入学者数、ネットで開示 文科省が大学に義務付け
文部科学省は来年4月から、すべての大学と短大、大学院にインターネットのホームページ上に入学者数や授業内容などの情報を盛り込むよう義務付ける。これまで大学の情報開示には詳細なルールがなかった。少子化などで経営に行き詰まる大学が増える中、都合の悪い情報も表に出させることで受験生が適切に学校を選べるようにするとともに、教育の質の向上につなげる。
中央教育審議会の大学分科会が26日、義務化について了承した。同省は6月にも学校教育法施行規則を改正し、来年4月に実施する。
公開を義務付けるのは(1)入学者数や定員、在学者数、卒業者数と進路(2)授業方法や年間授業計画(3)教員数や保有学位・業績――など9項目。定員割れなど不都合な情報を隠せなくするほか、授業内容の公開で大学側が教育の質を高める努力を積極的にするようになると期待している。
ただ、授業内容などについて同規則では具体的な公開範囲を定めない見通し。どこまで明らかにするか各校で対応が分かれそうだ。
文科省は、義務ではないが教育内容の充実や国際的評価を高めるために公開が望ましい情報も例示する。「教員1人あたりの学生数」「外国人教員数」「留学生へのサポート体制」などで、英語での表記を勧める。
義務化する項目の公開状況は第三者機関が定期的にチェックし、結果を公表する。不十分でも罰則はないが、「大学への補助金を減らす可能性がある」(同省)という。
文科省によると、大学は学校教育法などで積極的な情報公開を求められている。しかし内容や方法については詳細なルールがなく、海外の大学に比べて情報公開の遅れが指摘されていた。
同省の調査では2007年度時点で、742校のうち36%が受験者数や入学者数をホームページで公開していなかった。第三者機関の評価結果を公開していた大学も42%にとどまっていた。定員割れなどを明らかにして学生に敬遠されるのを嫌がる大学が少なくなかったという。
同省は「大学の質を高めるには教育情報を分かりやすく示し、社会の評価にさらすことが欠かせない」とし、昨秋から中教審大学分科会の部会で公開ルールを検討してきた。別の部会では、私立大を経営する学校法人の財務情報の公開基準についても議論している。