『朝日新聞』2010年5月20日付
大阪府立大、理系特化「NO!」 05年統合の府立女子大OGら 知事案を批判
旧・府立大阪女子大の同窓会「斐文会(ひぶんかい)」の会員60人が16日、大阪市天王寺区の府教育会館で集いを開き、橋下知事らが府立大を理系に特化する改革案を進めていることに異議を唱えた。
府立大阪女子大は2005年、府立大に統合された。前身は1924(大正13)年創立の府女子専門学校。公立の女子高等教育機関としては全国で2番目に古い。
集いには女子大1期生で米在住の芥川賞作家、米谷ふみ子さん(79)も参加。「谷崎潤一郎に大阪弁を教えたのは大阪女子大の同窓生」とのエピソードを披露し、「女子大時代から守ってきた文科系の史料はどうなるのか。大阪は歌舞伎、漫才など文化の発祥地。府民は納税者として、日本の文化を壊すような知事はいらんと強く主張してほしい」と話した。
府立大人間社会学部の山中浩之教授は今年3月、女子大から府立大に移管された史料のうち特に貴重な92点を、カタログ「蔵品選」にまとめた。室町末期の写本「源氏物語絵詞」、浮世絵の先駆者大森善清の絵本「あやね竹」、幕末の英書や蘭書(らんしょ)などが掲載されている。夏目漱石や国木田独歩の自筆原稿もある。山中教授は「貴重書は調査・研究する人があってこそ真価を発揮する」。府立大は14日、新体制への移行時期を1年遅い2012年春にすると発表したが、文系学部廃止後、文科系の研究がどうなるかは未定だという。
会場からは「女専や女子大は、学生に英語や国語の教員免許、司書資格などを取らせ、女性の社会進出に役立ってきた。その機能がなくなるのは問題」「なぜ理系中心なのか、知事も学長も説明不足。府民にも、もっと広く問題点を知ってほしい」などの声もあがった。
米谷さんは「誰か知事の頭に女専の歴史をインプットしたらんと。知らんのでしょ、彼は。まだ、改革案をひっくり返す余地はある」と女性たちを鼓舞した。
斐文会は近く意見をまとめて、橋下知事に、大学での史料保管や文科系の教育・研究機能の存続を要望する予定。(阿久沢悦子)