低賃金の再雇用教員頼み 東北の国立大交付金削減直撃『河北新報』2010年5月17日付

『河北新報』2010年5月17日付

低賃金の再雇用教員頼み 東北の国立大交付金削減直撃

定年を迎えた教員を低賃金で再雇用したり、無報酬で引き続き講義を担当してもらったりする動きが、東北の国立大で目立ち始めた。主要財源である国の「国立大運営費交付金」が減らされた上、国に人件費削減を迫られ、教授の補充がままならないためだ。一時的にせよ「非正規」雇用の教員が増えることに、学内では「これから大学を背負うべき人材が育たなくなる」と不安視する声も出ている。

「年金があるから低賃金でも大学に『滅私奉公』してくれるはず、ということだろう。再雇用されるかどうかも大学の都合次第で、抵抗感はある」。福島大の「特任教員」の1人は複雑な心境を明かす。 福島大は2009年度から、1年ごとに契約更新する特任教員として退職教員を雇用している。給与はおよそ退職前の4分の1。現在14人の特任教員が講義を受け持つ。

福島大の場合、運営費交付金が毎年3000万円以上、減っている。06年度からは教員の補充を抑制。退職後の2年間、基本的にポストを空席にしているため、特に専門性の高い分野を教えられる人材が不足し、契約雇用の教員に頼っている。

定年退職した教授に、無報酬の「特任教授」を委嘱しているのは岩手大。「大学に愛着を持つ教授に活躍の場を提供したい」(財務企画課)というのが理由で、05年度に導入した。本年度までの5年間で19人の教員を減らす人員削減計画は、実は約40人の特任教授が支えていることになる。

やはり教員21人を本年度までの5年間で減らす山形大も、今年に入って、退職教員の力を借りることができないかどうかの検討を始めた。 東北のほかの国立4大学では人件費削減に伴う再雇用の動きはまだないが、補充を一時やめたり、比較的安く雇える若手教員を積極採用したりして、人件費を抑えようと必死。学内の教育、研究組織の在り方を見直し始めた大学もある。

大学にとって気掛かりなのは教育や研究能力の低下だ。将来を背負う「正規」雇用の教員の減少は、体力低下につながりかねない。福島大の特任教員は「若手がこれからの研究や教育に責任を持つべきなのに、私たちが残ることで変に安心してしまうのではないか」と心配する。

人員削減を迫られて苦労する各大学の状況は、文部科学省も認識している。国立大学法人支援課は「効率化は必要だが、国も配慮しなくてはならない。大学側の不安を取り除けるよう、来年度に向けて予算確保に取り組みたい」と話している。

[国立大運営費交付金] 2004年度の国立大法人化を機に、各大学に対して文部科学省から配分されている。大学の最大の財源だが、09年度まで毎年1%ずつ削減された。10年度も臨時的に減額されている。国立大はまた、06年施行の行政改革推進法により、本年度までの5年間で5%以上の人件費削減を求められており、各大学が削減計画を策定している。

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