教員免許更新制1年 もう見直し 先見えず大学苦慮『東京新聞』 2010年5月7日付

『東京新聞』 2010年5月7日付

教員免許更新制1年 もう見直し 先見えず大学苦慮

教員免許更新制が始まって一年。更新に必要な講習を開く大学が減っている。昨年度に大幅な定員割れとなった上、政権交代で制度の見直しが打ち出されたことが影響した。先の見えない状況に、大学側も翻弄(ほんろう)されている。  (中沢佳子)

「制度の先行きが不透明。開講は見合わせる」。法政大の担当者が明言する。同大は昨年度の募集要項で、千代田区という都心の立地を前面に押し出し、「交通至便」と通いやすさをアピールした。最新の教育事情を学ぶ「必修」で百五人を募集したが、集まったのはわずか二十一人。

「立地がいいので受講者が集まると思った。でも東京では講習数が多く、結局ガラガラだった」と担当者は語る。今後については「制度の見通しがついた時点で、また判断する」と消極的だ。

文部科学省によると四月現在、講習を実施する大学や法人は、前年同期より百二十七減の三百二十九で、早稲田大、中央大など有名私立も中止を決めた。全体の定員もほぼ半減した。

背景には大幅な定員割れがある。同省の昨年五月のまとめでは、定員に対する申込者は必修が六割、教科別に指導法などを学ぶ「選択」も四割にとどまった。

都市部で講習が供給過剰だったことや、様子見をする教員などが原因。そこへ政権交代が起き、制度の見直し表明が拍車をかけた。

定員を五千人から千人に減らした東京学芸大。講習は受講生が払う受講料で運営するが、昨年度は約千二百人しか集まらず、千六百万円の赤字が出た。横浜国立大でも一時期は約二千万円の赤字が予測され、本年度は定員を千百六十人に絞り、希望が多い八月に集中して開く対応策を打ち出した。

一方で、予約が集中している講習もある。筑波大は本年度の募集人員を昨年度より二百人減らして千人にしたところ、募集から一カ月もたたずに八割埋まり、急きょ定員を増やす方向に。

担当者は「講習をやめる大学が増え、申込者が流れてきたのではないか」とみる。先行きがあいまいな制度に左右された形で「文科省は早く方針をはっきりさせてほしい」とため息をついた。

<教員免許更新制> 安倍政権が「教育再生」の一環として打ち出し、2009年度に開始。幼稚園から高校までの教員の免許を原則10年ごとの更新にする制度。区切りは35歳、45歳、55歳で、指定された期限までの2年間で、「教育政策の動向」「学校と危機管理」など最近の教育状況を学ぶ必修と、「微生物と環境」「伝統的な楽器を弾く」など教科別に学ぶ選択で、計30時間の受講を義務付けている。

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