事業仕分け:第2弾 研究開発独立法人、改革めぐり混乱 効率化重視を懸念 『毎日新聞』2010年5月4日付

『毎日新聞』2010年5月4日付

事業仕分け:第2弾 研究開発独立法人、改革めぐり混乱 効率化重視を懸念

◇現場は「多様性を」

行政刷新会議の事業仕分け第2弾(4月23~28日)では、研究開発を担う14の独立行政法人が対象となり、効率化の観点から厳しい判定が相次いだ。独法改革は「政治主導」を掲げる現政権の旗印の一つだが、研究開発独法にその手法がなじむかは異論があり、別に研究開発独法改革を話し合っている総合科学技術会議との不協和音も表面化。改革の行方は不透明だ。【西川拓、山田大輔】

■「政治主導」に反発

仕分け最終日でもあった28日。研究開発独法のあり方を協議してきた総合科学技術会議の作業部会に一通の文書が提出された。提出者は鈴木寛・副文部科学相。鈴木氏は各府省の副大臣、政務官でチームを作り、独自に研究開発独法の改革案をまとめた。

案は、新たに国立研究開発機関(仮称)を設立し、現存する複数の研究開発独法を再編することを示唆。トップダウン型の運営で研究の成果を最大化できる--とした。

作業部会メンバーからは異論が相次いだ。岸輝雄・東京大名誉教授は「いきなり改革案がよそから出された。研究開発独法改革は大学の研究所も含めて考えないと意味がない。今ある独法を中途半端にくっつけたりするだけでは、日本の衰退は目に見えている」と批判した。26日の仕分けでは、物質・材料研究機構(茨城県つくば市)が「研究が他法人と重複しており、管理部門の効率化が必要」として、他法人との統合を示唆されている。

研究開発独法をめぐっては、枝野幸男行政刷新担当相が10日、「多くても10ぐらいに整理できる」と講演で語り、川端達夫科学技術担当相が「仕分けもされてないのにいかがか」と苦言を呈したいきさつがある。枝野氏が描く手法も明らかではないが、こうした政治主導のやり方には、研究現場から懸念の声が上がっている。

仕分け前の視察を受け入れた理化学研究所の野依良治理事長は「重要な分野ほどあちこちで研究する」と、研究の多様性の意義を強調した。仕分けを受けて自然科学系の26学会が28日に開いたシンポジウムでも「研究は予測不能な面があり、集中して資金を投下しても成果が出るとは限らない」「多様性こそが重要だ」という意見が大勢を占めた。

■司令塔の改組遅れ

本来、日本の研究開発のあり方を示す役割は、国の総合科学技術会議にある。しかし同会議も「機能不全」が言われてきた。

研究開発独法の仕分けが集中した26日。複数の独法が同じテーマを研究していることが繰り返し指摘され、批判の矛先は個々の法人ではなく同会議に向かった。

「総合科学技術会議は、各独法が決めたテーマを追認しているだけ」「どの独法が何を研究しているのか全体を把握していない」。首相が議長、主要閣僚が議員を務める重要政策会議に仕分け人が公然と批判を加える異例の事態だった。

同会議は「科学技術政策の司令塔」と呼ばれる半面、自前の調査予算を持たず、省庁への権限も弱い。民主党は昨年公表した政策集で同会議を「科学技術戦略本部(仮称)」に改組し、権限を強化するとうたった。

菅直人財務相は30日、東京都内で講演し「科学技術の予算配分について(概算要求の)前に打ち出してもらい、それを参考に予算を組みたい」と、同会議の機能強化への期待をにじませた。同会議の有識者議員を束ねる相澤益男・元東京工業大学長は「(活動に)制約はあるが、できるだけのことをやっている」と弁明する。だが、その成果は見えづらい。

川端科学技術担当相は「科学技術政策の展開には戦略、資金、配分、実行の4機能が必要で、同会議は戦略を担う。(同会議を現在の内閣府ではなく)組織論としては国家戦略局に置くべきだと思うが、まだそこまで煮詰まった議論になっていない」と、改革の遅れを認める。

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