独法の事業仕分け 抜本見直しにつなげよ 『中国新聞』社説 2010年4月29日付

『中国新聞』社説 2010年4月29日付

独法の事業仕分け 抜本見直しにつなげよ

無駄の洗い出しは十分にできたのだろうか。独立行政法人(独法)を対象にした行政刷新会議の事業仕分けがきのう終わった。

公開の下での4日間にわたる審査の結果、16法人の36事業が「廃止」となり、「縮減」も50以上に及んだ。

高額の役員報酬を受け取る天下り官僚、関連法人との不透明な随意契約、民間や自治体でもやれる事業など「無駄の温床」とされてきた独法の実態を、かなりあぶり出すことができたようだ。

2010年度予算編成に絡めた昨秋の仕分け第1弾とは、やや性格が異なる面もある。ただ、仕分けという手法そのものは一定程度定着したといえるのではないか。

独法は01年の中央省庁再編に伴い、行政サービスの効率化などを目指し誕生した。毎年約3兆円の国費が投入されながら、省庁や族議員の抵抗もあってほとんど改革は進んでいなかった。

今回、必要性や運営の効率性、民間と事業が重複していないかなどについて、仕分けの俎上(そじょう)に載せたのは104法人のうち47法人の151事業である。国民はもちろん国会の監視すら届きにくかったものも多い。

賃貸住宅の供給などをしている都市再生機構(UR)は典型といえる。関連法人に317人が再就職し、そこに競争がない随意契約で725億円の事業を発注していた。関連法人側がため込んだ剰余金は407億円にも上る。所管する国土交通省さえ「問題がある」と認めざるを得なかったほどだ。あらためて怒りを覚えた国民も多いのではないか。

一方、患者から要望が強かった医薬品関連の新薬審査や副作用情報提供事業などは「拡充」とされた。削るだけではなく、手厚くすべきところを伸ばす姿勢は評価できる。

ただ、仕分けを受ける側も「学習」して、追及を巧みにかわす場面も少なからずあったようだ。仕分け人の機先を制するように自ら施設の売却方針を示した国際協力機構(JICA)などは、その最たるケースだろう。今後の進め方には工夫が求められる。

一定の成果があったとはいえ、今回はあくまで独法の事業の一部を取り上げたにすぎない。表に出てきた無駄も「氷山の一角」とみるべきだ。ある程度時間をかける覚悟で、すべての事業について仕分け作業をしなければ、国民が望むような効果も得られまい。

独法の「全廃を含む抜本的な見直し」は、昨年夏の衆院選で掲げた民主党マニフェストの柱でもある。支持率の低下に歯止めがかからない鳩山由紀夫首相にとって、今回の仕分けを7月の参院選に向けたアピール材料にしたい意図があるのは明らかだ。

政府は5月下旬に公益法人などの事業仕分けを行い、早ければ6月ごろに独法全体の見直し方針を示す考えとされる。ただ独法や省庁の抵抗は必至だ。今の鳩山政権にそれを押し切る実行力があるのかどうか、気にかかる。

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