独法改革 仕分けを弾みに推進を 『信濃毎日新聞』社説 2010年4月29日付

『信濃毎日新聞』社説 2010年4月29日付

独法改革 仕分けを弾みに推進を

独立行政法人(独法)に対する行政刷新会議の事業仕分けが一段落した。

都市再生機構や理化学研究所をはじめ、47法人の151事業をまな板にのせて、必要性や効率性などを検証した。全独法のほぼ半数にあたる法人にメスを入れたことになる。

切り込み不足との批判もあるが、天下りなど独法の実態の一部を明らかにした点は評価できる。作業をスタートラインに、独法の抜本改革に向けて着実な取り組みを求めたい。

独法は、公共性は高いけれども国が直接行う必要がない分野の事業を担う。独立の法人格を与えられた機関である。中央省庁の再編に伴い2001年からスタートした。発足当時の57法人が現在は100を超える。

今回の事業仕分けのなかで、天下りの実態が国民の目にさらされた点は、重要な成果ととらえることができるだろう。

例えば、国土交通省所管の都市再生機構(UR)から関連法人側へ、300人を超える役員や一般職員が再就職していたことが分かった。URと関連企業とは巨額の随意契約が行われており、関連企業側には400億円超の剰余金も見つかっている。

URは前原誠司国交相がすでに「解体的見直し」を指示している機関である。今回の作業を弾みにどこまで抜本改革が進むのか、今後の政府の取り組みを監視していく必要がある。

科学技術振興のあり方について、厳しい指摘があったことにも注意を払いたい。

研究機関同士のテーマの重複を避ける工夫が要る、といった意見が出た。また、研究分野をどこが担うべきかなどについて、科学技術政策の抜本的な見直しが必要だとの指摘もあった。

前回の事業仕分けでは、科学技術予算の削減に科学者から批判が相次いだ。傾聴すべき面もあるが、財源は限られている。「選択と集中」のもとに適切な投資をすることが望ましい。この点が強調されたことを、科学者にも理解してもらいたいと思う。

独法は公共性の高い事業を担うだけに、効率性のみが前面に出るようでは国民の暮らしに副作用が出かねない。国や自治体が本来担うべき分野はなにか、根本的な論議を深めなければならない。

改革には天下りや無駄の削減とともに、行政改革に向けた大局的な視点が大事になる。鳩山政権の理念と政策が引き続き問われる。

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