進まぬ契約の効率化 国立大の「民間開放度」内閣府調査 『朝日新聞』2010年4月26日付

『朝日新聞』2010年4月26日付

進まぬ契約の効率化 国立大の「民間開放度」内閣府調査

全国86の国立大学法人の運営に、どの程度競争が導入されているかを調べたランキングを内閣府が初めて公表した。官の事業の民間開放度を測る「市場化テスト」の国立大学版とも言えるものだ。「事業仕分け第2弾」と時を合わせ、独立行政法人をモデルにした国立大の「ムダ」も洗い出されたかたちだ。

調査は、今年1月実施した。経営改善度を測る指標として競争原理を導入しやすい「施設管理業務」に注目して点検。建物の清掃や管理経費を、継続中の契約について、一般競争入札の導入率▽複数年度契約の導入率▽随意契約の上限額、の3指標を点数化し、順位付けした。効率化が進んでいない大学について、内閣府は今夏の閣議決定を目指す「公共サービス改革基本方針」に盛り込むなどし、経営改善を促す。

大学全体では一般競争入札は87.8%(事業費ベース)と導入が進んだものの、複数年度契約は43.7%にとどまった。また、随意契約の上限額は、86大学のうち80大学が、04年度の法人化前の100万円より引き上げていた。なかでも東京、京都、大阪の3大学は1千万円に上げた。上限額に満たない契約は基本的に公表対象にならないため、内閣府は「納税者がチェックすることが困難」と指摘している。

4月8日開かれた政府の官民競争入札等監理委員会国立大学法人分科会でも、「国立大は効率化が遅れている」「民間で当たり前のことがなぜできないのか」などの指摘が出た。だが、文部科学省の徳永保高等教育局長は「研究などと直結しない部分は改善を考えたい」としつつ、「理系などでは施設管理が研究開発と一体化した面もあり、すべて競争入札を入れるべきかは慎重な検討が必要」と反論した。

大学側からも、調査の手法や、教育・研究に過度に「市場原理」が浸透することへの反発が漏れる。

46位の東京大は、指摘されたエレベーターの保守業務について「安全を重視し一括随意契約を行った」などと説明。「実態を考慮せず、単純に数値化して比較している」と反論する。随意契約上限額も「調達効率の向上と透明性・公平性確保の考えのもとに設定した」とする。

最下位となった和歌山大の松浦功理事(財務・施設担当)は「業者数が限られる地方では、仮に入札しても応札は1社という場合も少なくなく、逆にコストがかかることもある。そこを理解していただかないと」と恨み節だ。職員一人あたりの学生数が国立大平均より20人以上多いことを挙げ、「コスト削減は、人件費を含めたトータルで見てほしい」と話す。

官民競争入札等監理委員会委員の小林麻理・早大大学院公共経営研究科教授は「研究・教育は重要だが、管理運営で学部ごとの壁が残るなど、法人化後の取り組みに温度差が出ているのも事実。部分的でもこうした効率化の指標が出て業務が国民の目にさらされることは意義がある」と話す。(石川智也)

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com