今ある資源生かし変革を…佐和隆光・滋賀大新学長に聞く 「環境首都」目標に政策提案 『読売新聞』2010年4月24日付

『読売新聞』2010年4月24日付

今ある資源生かし変革を…佐和隆光・滋賀大新学長に聞く
「環境首都」目標に政策提案

1942年、和歌山県生まれ。京大経済研究所長、立命館大政策科学研究科教授などを歴任した。「経済学とは何だろうか」「グリーン資本主義」(ともに岩波書店)など著書多数。趣味は30年間続けている週末のスポーツジム通い。今後は「県内の古刹めぐりがしたい」という。 滋賀大(本部・滋賀県彦根市)の12代学長に1日付で就任した環境経済学者・佐和隆光さん(67)。環境政策に力を注ぐ滋賀に根ざした大学として、どのような改革に臨むのか。将来の展望や今後にかける意気込みを聞いた。

(東田陽介)

学長就任を打診されたのは昨年9月。滋賀大は経済、教育の2学部とコンパクトだが、潜在的な魅力を持つ大学と聞いていた。13年間、京大経済研究所で所長を務め、約30人の研究者を束ねてきた経験を生かし、学生や教職員の活力にあふれた大学にしようと、迷うことなく引き受けた。

地方大学の多くが抱える問題の一つに、変革に乏しい点がある。いわゆる有名大学の場合、ネームバリューや立地の良さを生かし、周辺地域や企業、市民との交流が活発だ。一方、地方大学は外部へのアピールが少なく、小さくまとまっている感がある。

滋賀大では、これまで周辺大学との統合が取りざたされたり、歴代学長が例えば「社会工学部」のような時代に合った新学部構想を編んだりと、生まれ変わるチャンスがたびたびあった。私も変革を求め、新学部や他大学との統合について、是非を検討する必要はあると思っている。

ただ、それらを実現するためには、大学にある資源を生かし、魅力を向上させるという本質的な課題をクリアしなければならない。まずは、今あるものの見直しに着手したい。大学の魅力向上が実現できれば、研究費獲得にもつながるだろうし、地域や県内の他大学との交流など多くの可能性が生まれてくる。

大学をアピールするため、私が取り組んできたことも、どこかで生かせればと思っている。

私の専門は元々、統計学を経済データに当てはめて分析する計量経済学。京大、米スタンフォード大など、国内外の大学で研究に没頭した。40歳前後になって、この分野でやるべき研究はし尽くしたと思い、科学や数学が好きだったことと、1990年に経済団体主催の環境フォーラムで部会長に就任したことをきっかけに、環境経済学の研究を始めた。

環境問題は技術革新が解決の決め手と考えられがちだ。環境経済学では、地球温暖化対策と発展途上国の経済発展や、環境税導入による経済影響などを考え、望ましい環境政策を提案できる。その研究者である私が、環境先進県である滋賀で学長をすることになったことに、縁を感じている。

学長職を全うしながらも、研究活動にブレーキをかけるつもりはない。大学のPRはもちろんだが、「滋賀を環境首都に」をテーマに、地域の情報を発信していきたい。

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