国立大法人化評価/格差が広がらない工夫を 『河北新報』社説 2010年4月16日付

『河北新報』社説 2010年4月16日付

国立大法人化評価/格差が広がらない工夫を

組織でも個人でも、第三者の評価には納得できる部分もある半面、強く反論したくなることも出てくる。まして全国86の国立大が研究、教育などの目標達成度をランク付けされ、予算配分に反映されるとなれば。

文部科学省の大学評価・学位授与機構などは、2004年度の国立大法人化の際に各校が立てた「中期目標・計画」に対する初の総合評価(07年度まで)を行った。上位を得意分野に特化した単科大が占め、20位以内に東大、東北大など旧帝大6校が入った。下位には教育大や地方の総合大が並んだ。

各大学は基礎的経費として「運営費交付金」を文科省から支給されている。評価の結果は数値化され、2010年度の配分に反映されたため、交付金が増えた大学と減額された大学とで泣き笑いが起きた。

象牙の塔が漫然と研究費を使う時代は終わり、国民に使途をつまびらかにする点で評価は必要である。予算に差をつけて競争を引き出す狙いも分からないではない。しかし、国の急な改革の中でどたばたの末に法人化した地方の大学も多い。

豊富な財源や人員、高い競争力を持つ規模の大きいところと、それ以外の大学を一律に論じて差をつけるのは無理がないか。イメージ先行で有力な大学に資金や人材が流れ、格差が広がることを懸念する。

評価は「研究・教育」と「財務・経営・管理」など4項目について全学部ごとに採点。学業の成果、就職、社会貢献などを「非常に優れている」「良好」「不十分」などと段階評価し、総合点を算定した。

1位の奈良先端科学技術大学院大は400万円の増額。2位の滋賀医大は300万円増。反映額は予算規模によって異なり、東大(6位)は最も多い2500万円増。東北大(13位)もプラスされた。大規模校は年間数百億円の交付金を受けており、それに比べれば微々たるものだが、さらにブランド力が増す意味は小さくない。

一方、最下位の弘前大は700万円減額され、琉球大(84位)は800万円と減額幅が最大だった。イメージ低下、学生募集などへの影響を憂慮して、弘前大など22校が評価確定前の原案段階で「意見申し立て」を行った。「改善努力を何も行っていないように受け取られかねない」と同大は困惑気味だ。

文科省が行う中期目標・計画評価はほかにも、「年次報告」がある。各大学は毎年、法人化の進行状況をチェックされ、提出資料の作成など事務作業は膨大な量に上る。

法人化は、国からの上意下達を改め、自立性を高める目的があった。しかし、現行の評価制度は、基盤の弱い大学の自由度を奪い、いつまでも文科省を意識せざるを得ない状況に追い込んでいないか。国の関与の在り方を含め、過度の影響と負担を与えない工夫をしてほしい。

大学には、知的財産の還元、産業雇用創出など地域経済のリード役も期待される。有力大だけが活気づいても、地域は元気にならないことを心に留めたい。

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