渡ろうとしているのは三途の川かルビコンか  国立大学の第2期中期目標期間の開始とホームページのリニューアルにあたって

渡ろうとしているのは三途の川かルビコンか?
国立大学の第2期中期目標期間の開始とホームページのリニューアルにあたって

2010年4月13日
国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

2010年4月から国立大学法人の第2期中期目標期間が始まった.自律性が増すというふれこみで始まった国立大学の法人化であったが,研究・教育の基盤的経費となる運営費交付金の逓減と人件費1%削減によって国立大学の体力は大幅に失われた.各大学・各部局は半ば強制的な個性化,機能分化を迫られ,資金の獲得のために「自主的」「改革」を競わされ,研究・教育現場は疲弊し,疎外感が広がっている.

法人制度の一つの根幹である評価制度についても,次々と新しい基準や評価法が持ち込まれ,いびつなものになってきている.しかもそれをもとに,順位付けがされ,部分的であるとはいえ運営費交付金の配分へ反映されるようになったことは記憶に新しい.各法人が自主的に原案を策定した中期目標の達成状況に関する評価なのだから,一律・相対的な評価はなじまないとしてきた国立大学法人評価の原則が,自身でそう言ってきた当局者の手でくつがえされたのである.

その結果,大学自身が直接に国民や人類社会の発展に貢献する研究・教育のあり方を考えるのではなく,評価や順位を気にして,判断停止に陥る危険が増している.さらに,大学や研究機関における教員の新規採用が減る一方,大学院重点化の中で増加した博士課程修了者の就職は困難を極めている.学術的研鑽をつんだ多くの若手研究者が,短期・政策的プロジェクト資金で糊口をしのいでいる状況は,研究・教育の後継者養成や日本の学問の将来に暗い影を落としている.

一方,政権交代後においても,新自由主義的構造改革の残渣ともいうべき行政仕分けが進められ,その第2弾においては独立行政法人と政府系公益法人が対象とされている.「官と民」「国と地方」「予算削減」という粗雑な理屈によって,組織・事業の統廃合が画策されているが,その行きつく先には極めて国家統制的な色彩が強い体制が待ち構えていることに注意を払わなければならない.独立行政法人の次は,国立大学がターゲットとされることは避けられないだろう.内閣府の官民競争入札等監理委員会が中心となった施設運営や図書館運営への市場化テスト導入の動きは,そのような大きな流れに先鞭をつけるものである.

2010年4月から始まった第2期中期目標期間,とりわけその前半は,国立大学が今後どのような方向に行くかにとって決定的に重要な数年間になる.評価と事業・組織改廃に関する独立行政法人通則法のしくみを援用しながら,文部科学省の統制を拡大・強制していく国立大学法人法体制を温存するのか,この体制と訣別し,学問の自由と大学自治を保証する新たな法制度を探り,研究・教育と社会貢献,組織運営の十全な展開を展望していくのか,関係者一人ひとりの判断と行動が問われている.そのために,国立大学法人法反対首都圏ネットワークは,共有すべき情報・データとそれらの分析,そしてわれわれの見解等を提供する活動を引き続き進めていく所存である.

第2期中期目標期間の開始とときを同じくして,本事務局のホームページも体裁を一新した.事務局発のトピックス,教職員組合声明,各種報道など,記事をカテゴリ別に整理,情報提供するシステムはこれまで通りである.くわえて,現在注目の多い記事のトップ10やオンライン中の人数がわかるシステムなど新機軸も盛り込んでいる.1999年8月に開設した旧ホームページ(~2003年8月,「独立行政法人反対首都圏ネットワーク」,2003年8月~2010年4月,法人法成立を受けて「国立大学法人法反対首都圏ネットワーク」)には,総計で230万件を超えるアクセスがあった.今回のリニューアルを期に,今までにも増して多くのアクセスを期待したい.

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