中期目標「素案」審議関連文書(「10・15事務連絡」「10・14評価委員会資料」)を公表、批判する 2009年11月4日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

 

中期目標「素案」審議関連文書(「10・15事務連絡」「10・14評価委員会資料」)を公表、批判する

2009年11月4日
国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

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本事務局は、文部科学省高等教育局国立大学法人支援課が2009年10月15日付で、各国立大学法人中期目標・中期計画担当者宛に通知した「事務連絡」「中期目標及び中期計画の素案の審議について」および、同時に送付された10月14日開催の国立大学法人評価委員会 国立大学法人分科会配付資料を、その重大性に鑑み、本事務局ホームページに掲載することにした。

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文部科学省は先に、国立大学法人はいっせいに第二期中期目標期間において教育研究組織の改廃を検討すべきとし、大学院博士課程、法科大学院、教員養成系学部、附置研究所、融合・学際的な学部・研究科を対象とする「見直し内容」(文部科学大臣決定「組織及び業務全般の見直し(内容)」2009年6月5日)を決定し、ただちに、この方針に従った検討を開始するよう指示した(国立大学法人支援課「事務連絡」6月10日)。この動きと並んで、国立大学法人評価委員会は、「見直し内容」が、各法人が作成した中期目標の「素案」(原案の前段階のもの)に反映されていない場合、「検討」および「修正」を求める方針を取り決めた(2009年6月9日、総会)。今回の一連の文書は、この方針ならびに「検討」「修正」手続きを具体化したものである。以下に、その内容を要約紹介する。

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文部科学省高等教育局国立大学法人支援課「中期目標及び中期計画の素案の審議について」(各国立大学法人中期目標・中期計画担当者宛「事務連絡」)2009年10月15日

「第2期中期目標及び中期計画の素案」を文部科学省ホームページに公表したこと、11月6日に予定されている評価委員会総会(第30回)までにさらに差し替えを認めること、および、今後の中期目標・中期計画「素案」「原案」の策定スケジュールなどについて通知するとともに、以下5点の「10・14評価委員会資料」を添付している(以下の資料番号は10月14日開催の国立大学法人評価委員会 国立大学法人分科会のもの)。

資料1-2 第2期中期目標・中期計画に関するワーキンググループについて

第2期中期目標・中期計画に「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」(平成21年6月5日文部科学省決定)に示された「見直し内容が適切に反映されているか等について、専門的な観点から審議を行う」ために、国立大学法人分科会の下にワーキンググループを設置(委員長 池端雪浦、委員 荒川正昭・宮内忍・平野眞一)した。

資料1-3 国立大学法人の第2期における中期目標及び中期計画の素案の修正等の実施方針(案)

6・5文部科学大臣決定の「見直し内容」に従って、「素案」の「修正」「検討」を行う際の手順を、「各法人の目指す方向性が明らかになるよう、一層の個性化が明確となる中期目標及び中期計画とすること」「見直し内容等に沿って検討を行うこと」「検討の結果を中期目標及び中期計画の素案や年度計画に具体的に盛り込むこと」「具体的な取組内容を可能な限り定量的に明らかにすること」などにわけて、詳細に指示している。

資料1-4 国立大学法人の中期目標及び中期計画の素案についての意見(案)

「素案」を確認した結果、全法人に対して「各法人の目指す方向性が明らかになるよう、一層の個性化が明確となる中期目標・中期計画とする」よう、「さらなる検討を求める」こととしている。そして、「別添」として、実例を挙げながら、博士後期課程、法科大学院、教員養成系学部などの「修正を求める必要がある事項」を指摘。また、総人件費改革は、「第2期中期目標期間も引き続き所要の取組が求められる」と念を押している。さらに、全法人の「各法人の基本的な目標等と主な取組」を一覧化したり(別添資料4)、「事後的に検証できるとは言い難い記述」例(別添資料6)をまとめるなどして、「素案」の書き方に全面的な方向づけと介入を行っている。

資料1-5 中期目標及び中期計画原案へ文部科学大臣の修正等意見が反映されなかった場合の対応について(案)

「修正」「検討」を求めた記述が中期目標及び中期計画原案へ反映されなかった場合、文部科学大臣は、法人に「理由」「説明」を求め、それに対する法人の回答内容を国立大学法人評価委員会が審議、文部科学大臣が「所要の対応」を行う、というプロセスを明らかにしている。

資料1-6「組織及び業務全般の見直し」に基づく取組内容が中期目標及び中期計画以外に反映された場合の取り扱いについて(案)

「組織及び業務全般の見直し」に基づく取組内容が中期目標及び中期計画以外(年度計画、アクションプラン)に反映された場合でも、「一部は国立大学法人評価の枠組みを活用しつつ、『組織及び業務全般の見直し』への取組状況に関するフォローアップを行い、各法人の取組全体確認」するとしている。

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なお、国立大学法人の「第2期中期目標及び中期計画素案」は現在、文部科学省ホームページに掲載されているが、トップページ「新着情報」にはなく、一般には気づかないような場所にひっそりとリンクが置かれてい る。また、「10・14評価委員会資料」の文部科学省ホームページ(国立大学法人評価委員会のコーナー)への掲載はおよそ3週間後とされている。
なぜ、文部科学省は「素案」を堂々と公表しないのか、すでに評価委員会委員には配付されている資料を公開するだけの作業がなぜこんなに時間を要するのか、不明である。

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われわれは、上記のような「10・15事務連絡」「10・14評価委員会資料」の内容および、公表・通知の仕方には、重大な問題があると考える。

(1) 国立大学法人に対する違法かつあからさまな権力的介入である

これまでわれわれが批判してきたように、当初(国立大学法人評価委員会「中期目標期間の業務実績評価に係る実施要領」2007年4月6日)、国立大学法人の権限とされていた組織・業務の検討を文部科学省の権限に移し、その一般的方針を示した上で、中期目標に反映させることを迫るという一連の「組織及び業務全般の見直し」方針は、「中期目標の実際上の作成者が国立大学法人である」(国会附帯決議)とした国立大学法人法(第30条)に明確に違反する。

「10・14評価委員会資料」は、こうした違法な方針に基づき、国立大学法人の中期目標の原案策定権を縛るプロセスを具体化するものであり、違法行為の継続にほかならない。また、素案に「組織及び業務全般の見直し」が反映されなかった場合に権力的修正を行うと述べたり、「参考にしうる記載例」「事後的に検証できるとは言い難い記述」(書いてはならな い例)を列挙したりした同「10・14評価委員会資料」を、「事務連絡」と装って送りつける行為は、各法人に対する行政指導以外の何者でもない。

(2) 教育研究組織の「不断の見直し」を強要し、かつ財政上の責任を負わないことを公言している

「10・14評価委員会資料」は、中期目標を統制するだけでなく、その内容にも大きな問題をはらんでいる。評価委員会はこの中で、教育研究組織を「不断に見直す」として、「規模及び課程を維持」すると書くことの禁止、教員組織(研究組織)を中期目標に記載することの禁止など、大学が中期目標期間中、安定的した組織体制により研究・教育を行うことをくりかえし否定している。一方、「中期目標及び中期計画に記載されていることをもって個別に予算措置を行うことを意味するものではない」と公言し、国立大学法人の中期目標達成に政府として追うべき財政上の責任を放棄している。

(3) 文科大臣の中期目標原案「修正」権を不当に拡大している

評価委員会はこれまで、各法人の作成した中期目標の素案に対して文科大臣が「修正」を行いうる場合を「不適切な場合」に限定することよって、「中期目標の実質的な作成主体が各国立大学法人」であることを担保しようとしてきた。ところが、今回、評価委員会は、中期目標の内容を「より適切な記載にする」ために、文科大臣が各法人に「検討」を求める権限を認めた。このため、文科大臣が中期目標の内容を改変しうる範囲が不当に拡大された(傍線は首都圏ネットワーク事務局)。

(4) 総人件費改革が中期目標全体を拘束することを確認した6・10「事務連絡」がくり返されている

そもそも総人件費削減は、第1期当初の中期目標・計画にもないことであり、小泉構造改革のもとで、急遽書き換えを命じられた経緯がある。教員数増加をマニフェストに掲げている民主党が政権党なった現在、抜本的な見直しを行うべきである。 

(5) 評価委員会総会が開催されておらず、情報公開もない

一連の文書は、国立大学法人評価委員会国立大学法人分科会の議事を受けてつくられている。しかし、この会合は総会ではないため、評価委員会の総意ではない。また、10月14日国立大学法人分科会は、議事録や配付資料が公開されておらず、開催通知も行われていない。出席者や議事の詳細が一切わからない密室審議である(配付資料の公開すら3週間もかかると公言している)。

6.

かかる不当かつ違法な「素案審議」を、われわれは認めることはできない。文部科学省および国立大学法人評価委員会は、すみやかに関連文書を回収し、これまでの「素案」審議を白紙に戻すべきである。

以上

 

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