京大外科 脱“白い巨塔”
3科が交流センター設立
地方の医師不足や激務である外科医離れが深刻な問題になる中、京都大医学部(京都市左京区)の三つの外科が中心となって設立した全国でも例のない交流センターが本格的に動きだし、他大学や医療関係者から注目されている。各科の教授が決めていた大学関連病院の人事権や研修方法などを集約し、閉鎖的になりがちな医局の枠を超えて優秀な外科医を育て、地域に人材を適切に配置しようとする試みだ。
大学医学部では、教授を頂点とした医局が関連病院を含めた人事権を持ち、臨床研修なども縦割りで行ってきた。だが、新たな臨床研修制度が2004年から始まり、研修医が自由に病院を選べるようになったため、待遇が良く、症例の多い都市部の民間病院に人気が集中。医局に残る研修医が激減した。とりわけ外科は産婦人科などとともに、激務で訴訟になるリスクも高く、研修医に敬遠されて深刻な人材難に陥っている。
こうした大学病院離れと外科医不足の解消を狙い、京大医学部の消化管、肝胆膵(すい)・移植、乳腺三外科の教授らが中心となり、06年12月に京大外科交流センターを設立した。徐々に会員を増やし、現在は三外科の卒業生などを中心に医師635人、京都や滋賀、大阪などの関連病院67法人が会員になっている。
8月には社団法人になり、新たな臨床研修制度(後期研修も含め5年間)を終えた医師が現場に出始める今年から、本格的に稼働している。
柱は研修と人材配置。手術の技能向上のための実地研修を始めた。関連病院の医師ニーズや症例数などの情報を開示し、会員から希望者を募って引き合わせる人事調整も動きだしている。今後、職場情報のデータベース化や、女性医師も働きやすい就労環境の整備支援なども予定する。
理事長の小泉欣也医師は「10年間の徒弟制度に耐えないと一人前の外科医になれないといわれたり、上からの命令で関連病院に行くような医局の慣習は若い医師から敬遠されている。きちんとしたプログラムで地域医療に貢献できる外科医を育てたい。将来的には他大学とも連携し、京都全体の外科交流センターにできれば」と話している。