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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学独立行政法人化問題週報抄
 
[he-forum 3646]  国立大学独法化問題週報86 抄.
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国立大学独立行政法人化問題週報抄
Weekly Reports  No.86 2002.3.25 Ver 1

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-86.html
総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html
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              目   次
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[86-0] 内容紹介
 [86-0-1] 大学評価公表により露呈した独立行政法人化の問題点
 [86-0-2] 文部科学省を囲んだ人の輪
 [86-0-3] 「大学システムの改革に関する研究会」有志の提言の意図への疑念
 [86-0-4] 国立大学法人化の現実的不可能性
 [86-0-5] 黒川放談の盲点
[86-1] 大学評価機構の評価公表について2002.3.22
 [86-1-1] 報道記事 2002.3.22/23
 [86-1-2] 報道記事についてのコメント
 [86-1-3] 国大協第8常置委員長から大学評価機構への申し入れ(2002.3.1)
[86-2] 文部科学省を囲んだ人間の鎖
 [86-2-1] 写真記録:170名の人間の鎖が完成ー「最終報告」の撤回を!
 [86-2-2] 3月22日文部科学省前行動 報告 
 [86-2-3] 高等教育フォーラムより
[86-3] 高等教育フォーラムの1週間を振り返って
 [86-3-1] 2002年03月09日 4300 大学教員が砂に見える高所からの大学改革
 [86-3-2] 2002年03月17日 4405 再編統合による大学の個性喪失について
 [86-3-3] 2002年03月18日 4409 教育の現場への競争原理導入について
 [86-3-4] 2002年03月18日 4412 大学の足腰の弱さの懸念
 [86-3-5] 2002年03月18日 4415 国立大学批判への質問
 [86-3-6] 2002年03月20日 4435 独立行政法人化した研究所の現状
 [86-3-7] 2002年03月21日 4450 民主的かつ迅速な合意形成法 
 [86-3-8] 2002年03月22日 4461 黒川提言2000.10について
 [86-3-9] 2002年03月22日 4465 私立/国立という不毛な線引き
 [86-3-10] 2002年03月23日 4477 「基本大学法(試案)」の提言」など
 [86-3-11] 2002年03月23日 4485 黒川放談の問題点
[86-4] 中教審第3回2002.3.13 基本問題部会(資料目録)
 [86-4-1] 教育振興基本計画(柱立て)<素案>
 [86-4-2] 教育振興基本計画の主な枠組みについて(検討メモ2002.2.25)
 [86-4-3] 中央教育審議会基本問題部会委員名簿
 [86-4-4] 第2回2002.2.25「議事録」
[86-5] 声明・公開質問書・交渉申し入れ等
[86-6] 記事・意見等
 [86-6-1]  「大学システムの改革に関する研究会」有志提言
 [86-6-2]  黒川清「21世紀の研究システムの再構築」
 [86-6-3]  ◆国立大の値段は? 法人移行控え資産計算に難問(朝日 3.2)
 [86-6-4]  「ムルアカ氏の奨学金問題の本質」
  [86-6-4-1] 「文部官僚、鈴木氏秘書ムルアカ氏に私大講師の職を紹介」
  [86-6-4-2] cf:参議院予算委員会3/12(ムルアカ氏研究奨励金問題)
 [86-6-5]  団藤保晴氏の論説に対するコメント(竹田保正氏3.02)
 [86-6-6]  「国連大学:「融資」と「学問の自由」の危い関係」(01.5.21)
 [86-6-7]  「大学院“改革”が悲劇の出発点になった」(01.10.14)
[86-7] IDE 2002年2月号<私の大学改革論ー現場からの発言>
 [86-7-1] 伊丹敬之「資源投入と役割を考える」p5-8
 [86-7-2] 草原克豪「政府と大学との関わり方を問う」p9-13
 [86-7-3] 広田照幸「「時間」コストに配慮した大学改革を」p45-48
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[86-0]              内 容 紹 介
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[86-0-1] 大学評価公表により露呈した独立行政法人化の問題点

 大学評価・学位授与機構が昨年度に行った国立大学評価結果を公表した
[86-1-1]が、国立大学協会第8常置委員会の詳細な調査により評価プロセスの
杜撰さが明らかになっている[86-1-3]。同委員会から大学評価機構へ種々の問
題点を指摘し改善を要求した3月1日の公開申し入れ書に回答することもなく、
杜撰な評価結果の公表に踏み切ったことは、同機構には「評価行為の正確さ・
公平さと評価方法の絶えざる改善への関心」が欠如していることを示したもの
であり、同機構に対する大学社会全体の信頼を著しく損った。それだけでなく、
国立大学独立行政法人化政策の基盤の一つとされている同機構が、評価に杜撰
であるだけでなく、杜撰であることを意に介さない組織であることが証明され
たことにより、独立行政法人化政策に対する国立大学社会の疑惑に新たな重大
な要素が加わることとなった。

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[86-0-2] 文部科学省を囲んだ人の輪

  号外で紹介した運動は約170の参加者があり文部科学省を囲んだ[86-2-2]。
報道はされなかったようだが、組織の力を借りずにこれだけの人数が集まった
ことは予想外のことであったという。人の輪として現れた「精神の輪」が、こ
れを契機に新たな次元で生長・進化していくことと思う。
(参加された方々に深く謝意を表します。また、週報で知って参加された方は
ぜひ感想などをお寄せください。)

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[86-0-3] 「大学システムの改革に関する研究会」有志の提言の意図への疑念

「大学システムの改革に関する研究会」の提言[86-6-1] の趣旨は、提言冒頭
に書かれているように、従来の断片的大学政策を縫い合わせ全体像を描くこと
により現在の改革作業の能率を上げることにある。提言の中で、3月6日の最
終報告案に取り入れられたものが多いこと、メンバーに独立行政法人化推進派
の石弘光国立大学協会副会長も含まれていること、そして、提言が出された2
月1日という時期を合わせて考えると、独法化推進派への援護射撃という役割
を持っていたように推測される。 
  とは言え、国からの独立性を強く主張している点で「国立大学法人化」にお
ける行政の関与を弱めることへ影響力があると思われるが、文部科学省と他省
庁との確執に利用されるだけだとすると有害無益なものとなる。

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[86-0-4] 国立大学法人化の現実的不可能性

 国立大学法人化をする場合に会計上必要となる、土地・建物・資産の価値確
定の作業が膨大で、実行可能性が危ぶまれているという[86-6-3]。独立行政法
人会計原則は企業会計原則に準じたもので大学の事業とは整合性が低い。独立
行政法人化が大学にもたらす歪みの一例であり、多くの人的・財政的資源が浪
費(数千億円の費用と数年の歳月が必要と言われている)されることになろう
だろう。

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[86-0-5] 黒川放談の盲点

黒川日本学術会議副会長は、日本の大学システムの問題点を解決するためには
アメリカ流に変更することが最善であることを主張している。そのためには独
立行政法人化を非公務員型とすることが必要だと強調している[86-6-2]。しか
しよく読むと独立行政法人化を黒川氏が評価しているのは私学化へのワンステ
ップとしてしかのみであることがわかる。産学官連携の文脈が大学を語る唯一
の文脈とすれば、多くの正論が語られていると思うのだが、他の文脈への配慮
がない点は異様とも言える。私立大学の方の批判[86-3-11] は、その点を具体
的に指摘していて説得力がある。

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[86-0-6] 人材育成における大学と社会の分業のあり方

IDE 2002年2月号 特集「私の大学改革論」は、調査検討会議などの「大学改革
実務家」の視野の外にある、問題の核心を衝く論説が多い。

 伊丹敬之氏(一橋大学・経営学)が、大学改革を論じる3つの要点として
「財政投入」「役割」「仕組み」を挙げ、現在のように前2者を現状通りにし
て仕組みだけを変えようとしても効果は余り望めないことを指摘し、低度均衡
から高度均衡へともっていくことが大学改革論の第一条であると述べている
[86-7-1]。また、人材育成における大学と他の機関との分業について「高度専
門職業人の養成が大学の使命という言い方は,この分業の線を大きく大学のほ
うへと振り,大学が育成し,実社会がその人材を使う,というイメージを生む
危険がある。」と警告している。

 草原克豪氏(拓殖大学副学長)は政府と大学の関係を明確にすることを避け
て進んでいる大学改革の議論に不信感を表明している。

 広田照幸氏(東京大学・教育社会学)は、大学改革において「時間」コスト
の視点が欠落していることを危惧している。結語「時間コストを忘れた大学改
革案は、いかに美しい提案であっても、教育研究の充実とは縁遠いものである。」
は、(美しくもない)独立行政法人化の不毛さをみごとに言い表している。

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            本    文
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[86-1] 大学評価機構の評価公表について2002.3.22
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[86-1-1] 報道記事 2002.3.22/23
・・・・
東京新聞3.23 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3642.htm
NHK 3.23 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3643.htm
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[86-1-2] 報道記事についてのコメント
♯(2002.3.24: NHK・東京新聞の23日の記事は、文部科学省と国立大学協会
との批判を紹介している。後者は文書として公開されているが、文部科学省か
らの機構批判は公表されているのか?「記者クラブ」へのリークではないのか。
また東京新聞の「学問分野別では今後も抽出評価にとどめる方針で、これでは
公正な客観評価は得にくい」というコメントは国立大学協会の3月1日の公開
抗議書を読んで書いているとは思えない。)
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[86-1-3] 国大協第8常置委員長から大学評価機構への申し入れ(2002.3.1)
http://www.kokudaikyo.gr.jp/iken/txt/h14_3_1.html

「意見申し立て」の取り扱いと評価結果の公表についての申し入れ
 平成14年3月1日国立大学協会第8常置委員長 佐々木 毅

抜粋

「上述のように、今回の評価については、具体的な事実誤認にとどまらず、評
価の方法や手続き、その結果の表記形態などにかかわって不備な点が多い。今
回の評価はあくまで試行であることからすればこれは致し方のないことともい
えるかもしれない。しかしその結果が、いったん大学評価の結果として公表さ
れれば、社会においてはそれが本来の意味を超えて用いられる危険が大きいこ
とはいうまでもない。試行段階であるからこそ、率直に問題を認識し、改善の
努力を積み重ね続けることこそが必要なはずであって、現在の段階での評価事
業の成果の誇示にこだわるようなことがあってはならない。」

「現在の評価システムでは、実施に要する大学側の負担は予想したより遥かに
大きいものである。その反面で、評価の結果に必ずしも首肯し得ない場合も少
なくなく、大学の側の自己改善に大きく寄与し得るとも必ずしもいえない。し
かもこの評価の結果、必ずしも正確とはいえない情報が社会に流通することさ
えありえる。これでは大学は良い結果を得るためだけの一種のゲームを演じる
ことになってしまい、健全な評価システムを育成することは難しい。」

「これまで国立大学協会第8常置委員会は、数度にわたって大学評価・学位授
与機構に対して「申し入れ」を行ってきたが、これに対する機構の判断、措置
が明確に回答されたことはなかった。すでに評価結果の公表が予定されており、
このままでは機構の側は評価対象である大学の意見にかかわりなく、一方的に
評価の作業を進めていくことになり、評価の公正性、公平性に対する、大学と
社会の信頼を損なう可能性が大きい。」

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[86-2] 文部科学省を囲んだ人間の鎖
3月25日に全国ネットと文部科学省との交渉が予定されている。
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[86-2-1] 写真記録:170名の人間の鎖が完成ー「最終報告」の撤回を!
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/020322chain.html
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[86-2-2] 3月22日文部科学省前行動 報告 
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3640.htm
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[86-3] 高等教育フォーラムの1週間を振り返って

松田良一氏らが主催する「高等教育フォーラム」では独立行政法人化に関連す
る議論も時々おこなわれている。以下は最近印象に残ったものの感想。
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4494.html
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4496.html
サブタイトルは発行者が付けたもの。「」がオリジナルなタイトル。
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[86-3-1] 2002年03月09日 4300 大学教員が砂に見える高所からの大学改革
O 「「GN」4299辻下様へ」について
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4300.html
「大学の教員個人個人は砂のようなもので、意見のまとめようがありません」
という意見が、ずっとひっかかっています。「だから、行政主導で大学改革を
進めるのは仕方がないのではないか」と続くように感じます。大学の諸活動を
担う教職員が砂にしか見えない高所から大学改革が出来るのだろうか、という
のが素朴な疑念です。果てしのない「大学改革」が個々の砂に与えている影響
は高所からは見えないことは仕方がないと思いますが。
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[86-3-2] 2002年03月17日 4405 再編統合による大学の個性喪失について
OS「大学の再編統合 4402辻下さんへ」について
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4405.html
国立大学の統廃合への懸念に共感を持ちました。小さな組織ほど小さな改善を
積み重ねやすく個性的になるように思います。
「最近の国立大学の状況をみると「統合・再編」がとても気になります。小さ
な組織にすることで個々の意思が運営にも反映できるので、小さな単位の大学
がいいです。大きな組織にすると個々の意思が反映されなくなるので、問題が
解決できなくなり硬直した大学になってしまいます。」
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[86-3-3] 2002年03月18日 4409 教育の現場への競争原理導入について
HS「完全な制度などないが」
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4409.html
日本についてのーーさんの危機感の深さには共感を覚える部分もあります。
「教育の現場においても、市場による競争原理は万能ではなくても、それを上
回るシステムが無い以上、排除できないという事です。」(No 1900)という
意見は、日本の現状と近未来に深い危機感・絶望感を持つ人達の中でかなりの
割合を占めているのかも知れません。

しかし、日本もかなりの「競争」社会でしたし今もそうです。従来とは種類が
違うとは言え、社会全体が「競争原理」強化の方向に動きつつあることに危機
感を感じますーー過度の競争がもたらす「人心の疲弊・荒廃」という影響に対
する無関心が日本を覆っていることへの危機感です。「日本型過当競争*1」と
「市場による競争原理」との相乗効果がどうなるか心配です。

*1: 例: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/common-sense/morinaga.html
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[86-3-4] 2002年03月18日 4412 大学の足腰の弱さの懸念
KS [あまり言いたくはないのだけれど]
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4412.html
市場化の大きな流れの中で大学は受動的に流されるだけなのか、と問われてい
ることが響きました。

「崩壊した産業構造の再建には、民間活力を期待し、規制緩和の方向で、つま
り、自由競争にさらすことで再生を賭けるのに対し、大学へは国からの管理体
制を強化し、鼻先にワッカをつけて引きずりまわそうとしている。現在の大学
とは、国の官僚から、「俺たちが、かつての経済成長を成し遂げたことを、今
度は、大学の教育において担っていかねばならん」と思わせるくらい、足腰が
弱いのでしょうか?」
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[86-3-5] 2002年03月18日 4415 国立大学批判への質問
匿名希望 [ーーーーさんへの質問]
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4415.html
 この発言には種々の批判が出ましたが、ーーさんが「代表」しているセクタ
の国立大学批判に見られる「主観性」への批判としては無視できないものと私
は感じました、それによって政策が決められようとしているのですから。この
方の発言には共感を覚えることが多いです。1999年10月のNo 531,No 525,No
521 は、多くの大学教員の思いをかなり適確に表現されていると思います。な
お、この方は、職場等を含めた社会的アイデンティティはかなり明確になって
いる(4064)ので、実質的に実名での参加に近いと感じます。(黒木玄さんのウェ
ブサイト http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/ で許容される匿名と思い
ます。)
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[86-3-6] 2002年03月20日 4435 独立行政法人化した研究所の現状
4435 PN:武竿 [大学改善は絶対必要。独法化は?]
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4435.html

大学をひとつにひっくるめて議論することの不毛さを指摘されていることに共
感を覚えました。また、独法化した研究所にいる方からの、国立大学独立行政
法人化がもたらすダメージの予想は生々しく感じました。しかし、「いまは大
学による大学改善のための方法論を模索すべき段階だと思います。このことと
大学独法化の議論を混ぜてしまうと,政府の思うつぼになるような気がします。」
という指摘は、今、この時期に大学関係者が模索しなければならない「第三の
道」を示唆しているようで、襟を正す思いがしました。

「現在私はポスドクとして独法化した研究所にいます。場所も状況も4421さん
とほぼ一緒だと考えられます。その拠点で独法化の実体を見ると,1)事務・理
事サイドの権限が強化され,2)研究テーマへの予算配分はかなり恣意的に見受
けられ,3)研究をしない研究者にも身分が保護されるようなポストが作られ,
4)若手の採用は非常に厳しい上に,若手にのみ数年の任期を課す,というよう
なことが行われています。つまり簡単に言えば,論文生産に寄与しなかった年
寄りは楽に遊んで暮らすことができ,業績を挙げる若者には厳しくし,事務作
業が研究者へ一方的に押しつけられ,そして研究所自体はおいしい天下り先に
なっているわけです。現在のところは独法化によって良くなったことは見えて
きません。
 同じことはいくつかの大学でも起こるでしょう。教育もせず論文を書かない
ような"教官"は,自分の身分保護にだけは異常な執着を示すのが一般的です。
もし独法化となったら,低レベル教官は,いかにその内容を骨抜きにするかに
腐心し,組織的に動き,声を荒らげて周囲を恫喝してまわり,大学院生や助手
の業績を吸い上げて見かけの業績を量産し,優秀な教官におおきな迷惑をかけ
ることでしょう。すでにわれわれは,若手の助手に任期を課し,仕事をしない
助教授・教授は形ばかりの評価とした骨抜き任期制や,東大の定年延長などの
悪例を見てきたではないですか。そんな類推から,下手に組織を改造しようと
すると,最悪のシナリオ−研究教育しない人にとって住み良い大学−が実現す
るような気がしてなりません。大学ではグレシャムの法則が働きます。そして
真面目な学生と教官が大きな損害を被るのです。」
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[86-3-7] 2002年03月21日 4450 民主的かつ迅速な合意形成法 
wakei [re4440 やはり声は届きませんか?]
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4450.html
wakei さんの一連のご発言に教えられることが少なくありません。「変わるた
めには、変わる方向性に関する基本的合意が必要なんで、合意形成に失敗すれ
ば、対応するのは難しいのではないでしょうか。」ということが国立大学の独
立行政法人化に関連して一番懸念されることの一つです。
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[86-3-8] 2002年03月22日 4461 黒川提言2000.10について
KS「北村薫さんへ」
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4461.html

北村薫(PN)さんが紹介した「黒川放談」への賛意を表明されたものでした。科
学新聞2000年10月13日号に掲載された黒川氏の提言には大変感銘を受
け記事抜粋をNo 1734 で述べました。この後のコメントは参考になると思いま
す。アメリカにおられる落合さん・原さんのコメントは参考になりました。

1738 2000年10月22日 [黒川提言についての補足コメント]  辻下
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/1738.html
1737 2000年10月20日 [アメリカでは・・・?] 
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4405.html
2000年10月19日 [「黒川提言」について] 
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/1734.html
1734 2000年10月18日 [日本学術会議黒川副会長の提言について]  辻下
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/1734.html
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[86-3-9] 2002年03月22日 4465 私立/国立という不毛な線引き
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4465.html
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4482.html
国立/私立という線引の無意味さを簡潔に述べられています。wakei さんの
4450 末尾にある問いに対し、私が4458で、「国立大学歳出の6割、私立大学
歳出の1割が国庫補助」というつもりで書いた「国立大学は「60%国立40
%私立」、私立大学は「10%国立90%私立」」という悪文のあいまいさを
正して頂いたようです。
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[86-3-10] 2002年03月23日 4477 「基本大学法(試案)」の提言」など
近藤義臣 「国立大学独立法人化の問題点と 「基本大学法(試案)」の提言」
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4477.html
私が No 4174で述べたことは、基本大学法(試案)に含まれていました。近藤
さんの試案と、北村薫さんが紹介した「大学システムの改革に関する研究会」
の提言(テキスト版:
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/201-teigen-original.html)を比
較すると「政府からの独立性」が不可欠とするところは共通しています。

 「大学システムの改革に関する研究会」の提言の趣旨は、提言冒頭に書かれ
ているように、バラバラに出されてきた従来の断片的大学政策を縫い合わせ全
体像を描くことにあります。したがって現在の大学改革の流れは前提とし、そ
れを「改善」しようという点で現実的であるのと同時に現在の改革の流れには
肯定的でもあります。この2月1日提言の中で(国立大学法人についての)3
月6日の最終報告案に取り入れられたものが多いことと、メンバーには独立行
政法人化推進派の石弘光国立大学協会副会長も含まれていますから、提言が出
された時期を考えると、独法化推進派への援護射撃という役割を持っていると
いう印象は拭い難いものがあります。

 とは言え、国からの独立性を強く主張している点で「国立大学法人化」におけ
る行政の関与を弱めることへの影響力があると思います。ただ、文部科学省と
他省庁の確執に利用されるだけだと有害無益になります。
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[86-3-11] 2002年03月23日 4485 黒川放談の問題点
4485 wakei 「re4470 団藤さんの処方箋もそれだけでは不十分」
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4485.html
「黒川放談」が、学術活動の全体には妥当しないことを指摘されたもので、強
い共感を覚えました。

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[86-5] 声明・公開質問書・交渉申し入れ等
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[86-5-1] 3.22 国立大学学長に申し入れ:26大学教職員組合執行委員長連名
2002.3.22「調査検討会議最終報告の拒否を」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/0203162bunsyo.htm#gakutyou"
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[86-5-2] 3.22 調査検討会議に交渉申し入れ:25大学教職員組合執行委員長
連名2002.3.22
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/0203162bunsyo.htm#kousyou
文部科学省調査検討会議「最終報告」決定前の交渉を申し入れ
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[86-5-3] 3.15 独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局声明
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010315syutoseimei.htm
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[86-5-4] 3.14 名大学長への公開質問状 名古屋大学職員組合中央執行委員会
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/314-nuufs-to-matsuo.html
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3632.htm
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[86-5-6] 3.14 名古屋大学教職員組合中央執行委員会 見解
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/314-nuufs.html
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[86-5-7] 3.14 宮崎大学教職員組合から宮崎大学学長への要望
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3621.htm
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[86-5-8] 3.10 全国大学高専教職員組合第25回臨時大会決議(2002.3.10)
http://www.zendaikyo.or.jp/dokuhouka/zendaikyo/02-3-10ketugi.htm
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[86-6] 記事・意見等
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[86-6-1]  大学システム改革への提言 「大学システムの改革に関する研究会」有志
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/201-teigen-original.html
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[86-6-2]  黒川清「21世紀の研究システムの再構築−求められる価値観の転換−」
http://www.sci-news.co.jp/news/kikaku/kurokawa1.htm 2001.11.16
http://www.sci-news.co.jp/news/kikaku/kurokawa2.htm 2001.11.23
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[86-6-3]  ◆国立大の値段は? 法人移行控え資産計算に難問(朝日 2002.3.2)
http://www.asahi.com/edu/news/K2002030201551.html
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[86-6-4]  「ムルアカ氏の奨学金問題の本質」(国立大学付属病院教官 2002.3.19)
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/320-muruaka.html
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[86-6-4-1] 文部官僚、鈴木氏秘書ムルアカ氏に私大講師の職を紹介(朝日 2002/03/15)
http://www.asahi.com/politics/gaimusho/K2002031501356.html
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[86-6-4-2] cf:参議院予算委員会3/12(ムルアカ氏研究奨励金問題)
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/kokkai/02/312-san-yosan.html
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[86-6-5]  団藤保晴氏の論説に対するコメント(竹田保正氏 2002.3.02)
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/320-takeda.html
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[86-6-6]  「国連大学:「融資」と「学問の自由」の危い関係」(2001.5.21)
http://www.debito.org/mediaupdatej052101.html
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[86-6-7]  黒木玄氏サイト「大学院“改革”が悲劇の出発点になった」(2001.10.14)
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/e0013.html#e20011014050133
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[86-7] IDE 2002年2月号<私の大学改革論ー現場からの発言>
定価600円・送料120円 電話03-3431-6822,ふりかえ00130-3-148214
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[86-7-1] 伊丹敬之「資源投入と役割を考える」p5-8
(一橋大学大学院教授・経営学)
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[86-7-2] 草原克豪「政府と大学との関わり方を問う」p9-13
(拓殖大学副学長・拓殖大学北海道短期大学学長)
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[86-7-3] 広田照幸「「時間」コストに配慮した大学改革を」p45-48
(東京大学大学院・教育社会学・教育史・社会史)

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【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題に関連する情報(主に新聞報道・
オンライン資料・文献・講演会記録等)へのリンクと抜粋を紹介。種々のML・
検索サイト・大学関係サイト・読者からの情報等に拠る。転送等歓迎。
【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ
ひ読んで頂きたいもの。
【関連サイト】http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/
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発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp
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発行部数(括弧内は3/21からの増減)  (2002.3.24 現在) 
1700(+3):
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直送 844(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・国会議員等)
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Digest 版 10321(国立大学通信), ML(he-forum,reform,aml,d-mail)
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End of Weekly Reports 86