トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

☆社会貢献大半が「満足」  文科省の評価機構が初公表
 
. [he-forum 3642] 東京新聞03/23
--------------------------------------------------------------

『東京新聞』2002年3月23日付

社会貢献大半が「満足」
国立大の自己採点少子化サバイバルは?
文科省の評価機構が初公表


 国立大の教育活動を点検評価する文部科学省の「大学評価・学位授与機構」
(機構長、木村孟・元東京工業大学長)は二十二日、国立九十八大学の「社会
貢献度」と、理学、医学部系の二分野計二十三大学の「教育」「学問研究」に
対する評価結果を公表した。

 同機構が大学の評価結果を公表したのは初めてだが、社会貢献度について大
半が「十分達成」「ほぼ達成」と評価するなど、“お手盛りの通信簿”との印
象がぬぐえない。

 この評価制度は少子化時代の大学間競争を促し、各大学の分野別の教育内容
や研究成果などの公開を図るため一九九八年十月の大学審議会答申を受けて導
入された。

 今回の評価は大学側の自己評価をもとに、同機構が聞き取り調査を加味して
行った。

 九十八の国立大学で実施された大学の「社会的貢献度」は、公開講座や講演
会などを通じた社会貢献を指している。評価は(1)取り組みの水準(2)目
標の達成状況(3)改善システム−の三点に絞って判断した。

 九十四大学が最も評価の高い「十分達成」と次のランクの「おおむね達成」
と評価。「改善が必要」は四大学、「大幅改善が必要」はなかった。

 分野別では▽群馬、岐阜、京都など十二大学(医学部系)▽千葉、東京、熊
本など十一大学(理学部系)が評価の対象となったが、教育面の評価では、京
都・医学部と熊本・理学部研究科(大学院)は最低レベルの「大幅改善が必要」
とされた。

 京都大については「入学時に成績優秀な学生を集めながら、医師国家試験の
合格率が低い」「学生へのアドバイスを行うチューター制度が機能していな
い」、熊本大は「理学部として共通の専門教科が少ない」とそれぞれ問題点が
指摘された。

 二〇〇二年度以降も全国の教養教育、産学連携などについて全大学を対象に
評価し、法学、経済、人文系の研究分野については抽出方式で評価する方針。
同機構は二〇〇〇年、学位授与委員会を改組して発足。国公私立の大学教授や、
民間の学識者ら二百五十人で構成している。

 今回の評価については週明けから、同機構のホームページ
http://www.niad.ac.jp/でも閲覧できる。

■解説 評価法見直し急務

 今回初めて実施された大学評価は、大学が「象牙の塔」と呼ばれ、教育内容
や成果に対して外部評価を受けなかったかつての時代に比べると、一定の意義
を持つ。しかし、評価方法はあくまで大学側の自己申告に基づく「現状評価」。
教育目標の設定はそれぞれの大学に任されている。これでは、達成目標のハー
ドルを恣意(しい)的に低く設定するケースも出てこないとはいえない。

 少子化時代の大学間競争を図るため、国立大学で独立行政法人化が導入され
る。試行段階だった今回は評価対象が分野別の二十三大学と一部の研究機関に
限られた。今後、さらに教養教育や産学連携研究などについてすべての国立大
で調査を予定しているが、学問分野別では今後も抽出評価にとどめる方針で、
これでは公正な客観評価は得にくい。

 この評価制度が大学教育の透明化や水準アップにつながり、サービスを受け
る学生の選択基準となるためにも、評価方法などの見直しが急務だ。

 (佐藤直子)