<2文書への連名のお願い> 3月26日(火)提出しました。ありがとうございました。

全国の国立大学学長諸氏に訴える―調査検討会議「最終報告」を拒否すべきである―(各国立大学学長宛)27大学教職組委員長が連名

「最終報告」決定前に、我々との交渉に応じるよう、申し入れます(文科省調査検討会議宛て)
26大学教職組委員長が連名

 3月26日に行われる文科省「賢人会議」で調査検討会議の「最終報告」が最終了承されるという動きに対し、下記の文書2点について、皆様の賛同連名を7大学教職組委員長連名で呼びかけます。
 年度末のお忙しい時期とは存じますが、下記の2点について、
3月26日(火)昼まで東職メール<tousyoku@u.email.ne.jp>へご連絡ください。
 なお、賛同連名については東職ホームページ上で随時掲載いたしますので、ご確認いただければ幸いです。
 よろしくお願いいたします。

(1)2文書への連名賛同について。
 ※どちらかひとつの場合はその旨明記ください。
 ※原則として連名は教職組委員長とさせていただきますが、組合名での連名をご希望の場合はその旨をお知らせください。

(2)2文書のうち、『「最終報告」決定前に我々との交渉に応じるよう申し入れます』については、以下のとおり、3月26日以前の「調査検討会議」との交渉設定について追求します。
 3/18(月)―この時点の連名で文科省へ申し入れを緊急提出。
 3/22(金)―賛同連名締め切り。再度文科省へ交渉申し入れを提出。
 3/26(火)―交渉設定が不調に終わった場合は、国立大学学長宛文書とあわせ、代表団が「賢人会議」会場へ持参、文書を手交。
 文科省との折衝状況については随時ご報告いたします。3/26以前の交渉が設定された場合に参加可能な方は、その旨をお知らせください。また3/26に代表団による文書提出となった場合に参加可能な方については、その旨をお知らせください。

全国の国立大学学長諸氏に訴える
―調査検討会議「最終報告」を拒否すべきである―

 国立大学の独立行政法人化をめぐる情勢が重要な時期を迎えています。日頃のご苦労とご健闘に敬意を表します。

調査検討会議「最終報告」
 文部科学省は、3月6日の調査検討会議(「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」)連絡調整委員会において「最終報告」(「新しい『国立大学法人』像について」)を決定し、3月26日の「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会(賢人会議)」との合同会議で正式にこれを承認させようとしている。
 調査検討会議の「最終報告」は、突如教職員身分の非公務員化を決定すると同時に、大学の管理運営システムに関しても学外者の関与の度合いがきわめて強い"経営と教学の分離"の仕組みを決定した。学長選考においても、学外者の強い関与に加え、学内における投票を可能なかぎり排除しようとしている。学問の自由の根幹にある教員の身分保障も、教特法の適用を排除することで否定する考え方である。これは、われわれ教育研究の現場で働く教職員の立場から絶対に容認しえないものであり、さらに広く大学関係者の受け入れることのできないものである。
 調査検討会議がこうした方向を出すのは、委員会の性格や構成から想定しえなかったわけではないが、「大学の自治」や「学問の自由」の本旨をまったく理解しないものであり、経済産業省や政府の経済財政政策に追随するものであって、その見識を疑わざるをえない。とりわけ「非公務員化」の決定は、連絡調整委員会の2度ほどの会議で決定されており、調査検討会議の総意であるか否かさえ疑わしい。「非公務員化」をめぐる異常な動きは明らかに政府部内の政治的な決定によっている。1月25日の閣議決定「構造改革と経済財政の中期展望」は、大学の民営化と非公務員化の方向を打ち出していたのである。学問の独立性や自律性の観点から大学の制度を構想するという姿勢は微塵も見られないのである。
 また、「最終報告」は、国立大学協会が主張してきた年来の立場、例えば昨年9月の調査検討会議「中間報告」に対する国大協意見とも大きく齟齬している。さらに、全国理学部長会議、全国農学部長会議の意見など「中間報告」に対して寄せられた多くの大学関係者の意見は無視されている。
この点で、調査検討会議連絡調整委員会の主査を兼ねた国大協会長長尾真氏の責任は大きいと言わざるをえない。長尾氏は、こうした国大協の動向を知りながら、なぜこれと真っ向から対立する調査検討会議の最終報告を取り纏めることができたのであろうか。

国大協のこれまでの態度
 国大協は、これまで調査検討会議と並行して設置形態特別委員会で国立大学の法人化(独立行政法人化)問題を検討してきたが、必ずしも教育研究の現場の意見を代表してはこなかったとわれわれは考える。もともと2000年6月の国大協総会において調査検討会議に参加すると決定したことが誤りであり、これによって、文部科学省から独立して、大学の教職員の叡智を動員してこの問題に立ち向かうという立場を、国大協は放棄してしまったのである。設置形態特別委員会の作業は、その委員が調査検討会議委員と大幅に重複したために、事実上、調査検討会議に引きずられることになってしまった。
 したがって、これまで調査検討会議の検討を基礎に出されてきた国大協の見解は、必ずしも構成メンバーである大学の立場を真に代表してはこなかったといえる。今、調査検討会議の最終報告がまとめられた段階に至ってなお、国大協が調査検討会議に追随するなら、国大協は多くの国立大学の、そして国立大学教職員の信頼をまったく失うことになるだろう。
 国大協は、今こそ、大学の自治と学問の自由の原点に立ち返って、国立大学の真意を表明しなければならない。

最後の重要な機会
 来る4月3日に全国国立大学長会議、19日に国大協臨時総会が開かれる。言うまでもなく、文部科学省の意図は、「最終報告」を大学に認めさせることによって、「国立大学法人法」の法案作りの土台を固めることにある。
 もし、国大協がここで「最終報告」を承認するならば、今後の法案策定の過程で、国立大学の側はこれをすでに容認したと扱われることを意味するだろう。しかしまた、国大協が「最終報告」を承認しえないという立場を表明するならば、文部科学省の国立大学法人化あるいはより具体的には「最終報告」に基づく法人化(われわれの見解では独法化にほかならない)の試みは重大な隘路に逢着することになる。その意味で、この二つの会議は、国立大学の将来にとって決定的に重要な会議になるであろう。したがって、この会議は、国立大学の学長諸氏が真の意見を言いうる、また言わなければならない重要な会議である、とわれわれは考える。
 もう一度言おう。調査検討会議の「最終報告」は、大学の立場を正しく反映していない。また、大学の自治や学問の自由への配慮に欠けるところが大きい。
 今、国立大学が直面しているのは、"法人化"一般でも、"独法化"一般でもない。それは、「最終報告」に具体化された「法人化」の構想である。この最終報告に基づいて、法案策定の作業が始まろうとしているのである。「最終報告」の検討をさらにつづけるという機会がないとすれば、国立大学は、今の時点で、「最終報告」の全体を受け入れるか否かが問われているのである。個別の問題点はあるが全体としてはよい、というようなあいまいな態度はもはや許されない。容認しえない重大な問題があるかぎり、そのような問題点を含む最終報告は拒否すると言わざるをえないのである。そうすることで、国立大学は、この問題をもう一度検討しなおす可能性を手に入れることができるのである。
 もちろん、これからも立法過程においてさまざまな紆余曲折がありうることが予想される。しかし、大学の側がこの機会に「最終報告」を批判しておかなければ、この枠組みが最も有力な支配的な枠組みになるであろうことは自明である。他方、大学がこれを批判し、受け入れがたいという態度を表明するなら、少なくともこうした枠組みによる「法人化」は著しく困難になる。それは、当の大学の意思を無視して行なわれた「改革」として、その正統性が損なわれるからである。文部科学省は、昨年6月14日の学長会議におけると同様の「恫喝」を試みるかもしれない。しかし、それは、大学の意思がそれだけ重要であるということを示す以外のなにものでもない。文部科学省が大学の意思に反して「法人化」を強行するなら、それは「大学の自治」を破壊するものとして社会の糾弾を浴びるであろう。
 国大協臨時総会と全国学長会議は、大学が大学自身の真の意思を表明する最後の最も重要な機会である。

全国の学長諸氏に訴える
 国大協臨時総会では、これまでの経緯にとらわれず、「最終報告」に対する反対の意思を明確に表明すべきである。さらに、国大協がそのような意思を表明するためには、調査検討会議の最終報告についても責任を負う長尾国大協会長の辞任を要求することが必要であろう。
 情勢や力関係がこのような行動を許さないという現実主義的立場もありうるであろう。しかし、それは、調査検討会議が経済産業省や政府の圧力に屈した過程をそのままなぞることを意味する。大学の将来は、大学自身が決定しなければならないのである。それは、「大学の自治」の基本的な要請にほかならない。
 学長諸氏のご賢察と勇気ある行動を心より期待いたします。

2002年3月26日

 北海道大学教職員組合執行委員長     神沼 公三郎
 新潟大学職員組合執行委員長       谷本  盛光
 茨城大学教職員組合執行委員長      森野   浩
 千葉大学教職員組合執行委員長      伊藤  谷生
 東京大学職員組合執行委員長       田端  博邦
 佐賀大学教職員組合執行委員長      西田  民雄
 宮崎大学教職員組合執行委員長      恵下   歛
 徳島大学教職員組合執行委員長      中嶋   信
 愛知教育大学教職員組合執行委員長   舩尾 日出志
 長崎大学教職員組合執行委員長      小原  達朗
 福井大学教職員組合執行委員長      森    透
 秋田大学教職員組合執行委員長      佐藤  修司
 小樽商科大学教職員組合執行委員長   兼岩  龍二
 京都教育大学教職員組合委員長      奈倉  洋子
 室蘭工業大学職員組合執行委員長     橋本  忠雄
 九州大学教職員組合執行委員長      三好 永作
 群馬大学教職員組合中央執行委員長    黒須 俊夫
 埼玉大学職員組合執行委員長        伊藤   修
 和歌山大学教職員組合執行委員長     小林  民憲
 岐阜大学教職員組合執行委員長       長野  宏子
 滋賀大学教職員組合委員長          黒田  吉孝
 宇都宮大学職員組合委員長          片岡  健治
 北海道大学水産学部教職員組合執行委員長 平石  智徳
 東京農工大学教職員組合委員長       小島  喜孝
 北海道教育大学札幌校職員組合委員長   加藤  富夫
 福島大学教職員組合中央執行委員長    後藤  康夫
 静岡大学教職員組合執行委員長       金田  利子


文部科学省国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議
連絡調整委員会 主査
長尾 真 殿

  「最終報告」決定前に、我々との交渉に応じるよう申し入れます

 報じられているところによれば、3月6日の第8回連絡調整委員会において、独法化に関する「最終報告案」が承認され、3月26日に最終的に決定されようとしている。この「最終報告案」には、現在の国立大学の設置形態を変更し、独立行政法人化(「国立大学法人」と言う)するとともに、教職員の身分を非公務員にすることが明記されている。
 我々は、このことに対して、強く抗議するとともに、「最終報告」を決定する前に、我々との交渉を直ちに行うよう、申し入れる。

1.国立大学の教職員の身分を変更し、非公務員化するということは、我々の身分と権利に関する問題であり、憲法に規定された人権と労働権に関わる事柄である。当事者たる我々と、一切の協議も、交渉もなく、一方的に決することは許されない。我々は公務員として採用され、国立大学を職場としてきた。その身分自体の変更を、しかも当事者抜きで決定することは絶対許されない。そのような権限を調査検討会議は誰によっても与えられていない。我々との交渉に直ちに応ずべきである。「最終報告」の決定は中止すべきである。

 3月6日の「最終報告案」は、非公務員化の目的として、「国家公務員法体系にとらわれない、より柔軟で弾力的な雇用形態及び給与体系、勤務時間体系」、「営利企業の役員等を含む兼職・兼業について、法人の方針に基づく弾力的な運用」を挙げる。

 これは、明白に雇用条件、労働条件に関わる。「最終報告案」によれば「各大学の実状に即した多様な職種を自由に設定できる」(「最終報告案」p33)ことが目されている。「多様な雇用形態」とは、例えば「15時間雇用等の短時間勤務」の職員であり、「大学教員任期法の三類型を離れた任期制教員」である。教員には「週3日間勤務制などのワークシェアリング」や「裁量労働制等」の導入も提唱されている。加えて「成績主義賃金体系」の導入が謳われる。第7回連絡調整委員会(2月21日)提出の「最終報告案」にはあった「移行職員が不利益を被ることがないよう」や「解雇事由の制限」という語句が抹消されており、これを合わせて考えれば、当局者が「自由に雇用」し、「自由に解雇」できる身分に我々を置こうとすることが指向されている。

2.非公務員化によって、教育公務員特例法が適用されなくなることも許しがたい。学問の自由と大学の自治の根幹をなす教員の身分保障は法制的に規定されなくてはならない。これを「まさにファシズムの時代かのように教特法というものが隠れ蓑になって大学を聖域化してきた」などという確たる根拠も示さぬ一方的論拠によって葬り去ることは、大学制度が125年間に亘って少なからぬ犠牲と努力を経て作り上げてきた財産と伝統をごみ箱に投げ捨てる暴挙である。

3.「営利企業の役員等を含む兼職・兼業」を進めることは、大学自身の活動を阻害するおそれがあるだけでなく、国立大学の公共性を失わせ、国民の財産である国立大学の公益的活動を私企業の営利に従属させ、国民の財産を簒奪することを意味し、到底容認できない。そのために、教職員の身分を変えようなどということが許されていい筈がない。国民の負託を裏切る背信行為である。

4.「最終報告案」に盛り込まれた構想は、独立行政法人制度をそのままに踏襲しており、大学が大学として機能すること、学問研究と教育を行う機関であることをやめ、一個の官僚機構に変質させようとするものである。「中期目標」を文部科学大臣が策定し、各大学が「中期計画」を提出し、大臣が認可し、これに基づき、文部科学省に置かれる「国立大学評価委員会」が評価を行い、この評価によって、次期の運営費交付金等が算定され、配分される。このような官僚統制のシステムは大学から自由を奪うものである。
 加えて、大学の運営を「学外者」の関与する「役員会」や「運営協議会」に委ね、学長選考にも「学外者」の関与を許し、学内構成員の信任を得た代表者を選ぶ「投票」を排除しようとする。学問の自由と大学の自治を学外者の自由な干渉に委ね、学長の専制を図ろうとするものであり、歴史によって積み上げられてきた大学の在り方を、黒々と墨で塗りつぶす蛮行である。
 更に重大なことは、独法化問題の根底にある、国の高等教育への財政支出削減に対する明確な批判と対抗策を欠いたまま、「各国立大学の枠を越えた再編・統合」を推進しようとしていることである。数合わせの目くらましを闇雲に進めようという訳である。このような「無責任」の一語に尽きる政策ならざる"政策"を断じて許してはならない

5.先に我々は、2月20日調査検討会議に対する28大学教職組委員長連名の要請を提出するに際し、文部科学省にこれを直接手渡し、見解を聞かせるよう申し入れた。それに対する文科省大学改革推進室の回答は、「調査検討会議で検討中のことについて、文科省として見解を述べる段階ではない」であった。であるならば、この問題に直接調査検討会議が答えねばならない。調査検討会議は、「賢人会」と称される99年8月に作られた文部大臣の私的懇談会(「今後の国立大学の在り方に関する懇談会」)に附属して設置された組織とされる。私的組織に公的性格の組織を附置し、それを隠れ蓑にして、独法化の制度設計を進めるという、奇怪な、訳の分からぬやり方である。これ自体が批判さるべきだが、今は問うまい。調査検討会議が、官僚機構の決定を覆う隠れ蓑でないのなら、我々の前に出て来て、直接語るべきである。

2002年3月26日

 北海道大学教職員組合執行委員長     神沼 公三郎
 新潟大学職員組合執行委員長       谷本  盛光
 茨城大学教職員組合執行委員長      森野   浩
 千葉大学教職員組合執行委員長      伊藤  谷生
 東京大学職員組合執行委員長       田端  博邦
 佐賀大学教職員組合執行委員長      西田  民雄
 宮崎大学教職員組合執行委員長      恵下   歛
 徳島大学教職員組合執行委員長      中嶋   信
 愛知教育大学教職員組合執行委員長   舩尾 日出志
 長崎大学教職員組合執行委員長      小原  達朗
 福井大学教職員組合執行委員長      森    透
 秋田大学教職員組合執行委員長      佐藤  修司
 小樽商科大学教職員組合執行委員長   兼岩  龍二
 京都教育大学教職員組合委員長      奈倉  洋子
 室蘭工業大学職員組合執行委員長     橋本  忠雄
 九州大学教職員組合執行委員長      三好 永作
 群馬大学教職員組合中央執行委員長    黒須 俊夫
 和歌山大学教職員組合執行委員長     小林  民憲
 岐阜大学教職員組合執行委員長       長野  宏子
 滋賀大学教職員組合委員長          黒田  吉孝
 宇都宮大学職員組合委員長          片岡  健治
 北海道大学水産学部教職員組合執行委員長 平石  智徳
 東京農工大学教職員組合委員長       小島  喜孝
 北海道教育大学札幌校職員組合委員長   加藤  富夫
 福島大学教職員組合中央執行委員長    後藤  康夫
 静岡大学教職員組合執行委員長       金田  利子