『毎日新聞』2010年4月27日付
事業仕分け:第2弾 都市再生5事業「縮減」 2日目「廃止」は1件
<追跡>
◇予習万全UR、低姿勢で廃止ゼロ
◇政府批判恐れ、追及ソフトに--科学技術
政府の行政刷新会議は26日、14の独立行政法人の45事業を対象に事業仕分け2日目の作業を行った。ファミリー企業との不透明な取引が指摘される都市再生機構(UR)の都市再生5事業の規模を「縮減」と判定、賃貸住宅事業は「高齢者・低所得者向けは自治体、国に移行。民間並み家賃の住宅は民間移行で整理」とした。「他の法人との統合」や「法人のあり方の抜本見直し」などの判定も多く出たが、「廃止」は宇宙航空研究開発機構の広報施設「JAXA i」(事業費9400万円)のみ。URの廃止判定はなく、科学技術系の独法にも仕分け人がソフトに対応するなど、昨年の第1弾との違いも浮かんだ。
「URからの再就職と随契(随意契約)が多いことは、不透明だし問題があると思っています」。仕分け人の蓮舫参院議員が天下りなどの問題をただすと、UR側は低姿勢で認めた。URの事業は仕分けの目玉の一つで、仕分け人との攻防が注目されたが、意外な形で議論は進んだ。
UR側はこの日、37ファミリー法人との間の天下りや契約の関係をまとめた資料も初めて示した。URとファミリー法人の随意契約の総額は725億円で、役員や職員への再就職者も317人に達するとの内容。ファミリー法人同士の取引額も217億円に上る。
蓮舫氏が資料を手に、「どう見ても人間関係があり、契約関係があり、その中で(仕事を)回していると疑われても仕方ないのでは」と指摘すると、UR側は「そのような印象を持たれるのは当然だと思います」と認めた。「適正な契約か」との質問にも、国土交通省の幹部が「URに聞くまでもなく問題だと考えます」と応じた。
URにとって、仕分け人の指摘は想定の範囲内だった。国交省が2月、URのあり方に関する検討会を設置し、対応策の検討が進んでいるからだ。
低姿勢が功を奏したのか、「賃貸住宅事業はすべて民営化」のような判定は出なかった。URは「利が薄いため民間でやれるかどうか。自治体も手間がかかる事業で引き取ってもいただけない」と説明した。
UR幹部は「理由も聞かない事業廃止は一つもなく、理解を得られて良かった」と安堵(あんど)する。そのうえで「国交相の方針に沿ってという仕分け人の発言もあった。(今後のあり方は)国交省にゲタを預けた形になったのでは」と話した。
◇
この日は研究開発を担う独立行政法人も対象になった。しかし、科学技術の大型プロジェクトに厳しい判定を突きつけて猛反発を受けた前回の反省からか、仕分け人は「科学技術の重要性は理解している」などとソフトムードの演出に努めた。
理化学研究所の仕分けで寺田学衆院議員は「科学技術を軽視してはいない。日本の命運を分けると思っているからこそ、多額の税金を効果的に使うことが重要だ」と述べた。
理研の次世代スーパーコンピューター計画は昨年の仕分けで「予算計上見送りに限りなく近い縮減」と判定され、野依良治理事長ら歴代ノーベル賞受賞者が反論会見を開くなど、世論も巻き込んで政府批判が起きた。
今回、仕分け人の質問は、個別事業や研究内容には踏み込まず、組織運営の効率性に集中。科学技術振興機構の北澤宏一理事長は「研究費本体は削らないという意識を感じた」と語った。寺田議員も「昨年の影響がゼロではない」と認めた。
さらに議論では、本来の仕分け対象ではなく、議長を鳩山由紀夫首相が務める政府の総合科学技術会議の抜本的な見直しを求める異例の結論が出された。
各法人の仕分けで「研究テーマが重複している」との指摘が相次いだ後、科学技術振興機構の結果を取りまとめた寺田議員は「(枝野幸男・行政刷新担当)大臣に怒られるかもしれないが」としたうえで、「(昨年の仕分けで)科学技術を軽んじるなと批判した方々が総合科学技術会議内で方針を示しきれていないことが問題。抜本的に見直さないと物事は始まらない」と、同会議構成員である関係閣僚を批判した。
同会議は科学技術の司令塔的役割を担う。民主党の政策集2009には同会議の改組が盛り込まれている。
第2弾で初めての「事業拡充」判定も出た。国立美術館の美術品収集事業と国立文化財機構の展覧事業で、蓮舫氏は記者会見で「仕分けは、切る、廃止するだけではないという一つのいい例になった」と語った。【石原聖、山田大輔】