『富山新聞』2010年4月16日付
漢方医学の指南所拡充 富大の寄付講座格上げ
全国の医師や薬剤師らに漢方薬の適正使用を指導してきた、富大和漢医薬学総合研究所の寄付講座「漢方診断学部門」がスタッフを増員し、正規の講座「漢方診断学分野」に拡充された。漢方診断学部門は1999年、医薬品製造販売のツムラ(東京)から寄付を受けて発足したが、企業の寄付講座が10年以上続いた上、正規の講座に「格上げ」されるのは富大では初めてで、全国的にも珍しい。今後も「漢方医学の指南所」として、全国からのニーズに応えていく。
漢方診断学分野は、医学部のコアカリキュラム改編で、和漢薬に関する臨床の知識が必要とされるようになったことから、医師、薬剤師、医学生を短期間(1~2週間)または中・長期間(3カ月~1年)受け入れ、漢方診断学を指導する研修機関として発足した。
柴原直利教授によると、これまではツムラとの契約が3年ごとだったため、博士課程の学生を指導できなかったが、今後は研究者も長期間、受け入れていく。また、ツムラ以外の企業とも共同研究を進める方針である。
正規の講座への拡充により、教授、助手の2人体制に准教授1人が加わる。柴原教授は臨床知識の指導に加え、「腎臓、肝臓疾患の和漢薬治療について、トランショナルリサーチ(基礎と臨床の架け橋となる研究)に結びつく成果を挙げたい」と話した。
寄付講座が正規の講座になったケースについて、文部科学省学術機関課は「あまり聞かない」としている。同課は「国立大の法人化後、自助努力による外部資金の獲得は各大学の大きな課題」としたうえで、企業から長期の支援を受け、成果を挙げて正規の講座として存続するまでになった取り組みを評価している。