『日経産業新聞』2011年10月3日付
理系女子増やしたい 大学、企業・研究機関と組む
津田塾、中高生招き企業訪問 奈良女子大など、研究機関見る科学塾
理系研究者をめざす女性を増やすため、大学が企業や研究機関と協力する動きが広がってきた。津田塾大学は今年度から女子中高生向けの理系進学促進イベントで資生堂と協力。奈良女子大など関西5大学のグループは学外研究機関の協力を得て「科学塾」を運営する。社会のニーズが多様化するなか、研究や製品開発に女性の視点を一層活用したい大学と企業などが連携し、女性研究者のすそ野を広げる。
津田塾大は女子中高生を対象にキャンパス内で理系の研究を体験してもらう行事を2009年度から毎年開催してきたが、11年度から企業の研究開発現場の訪問をコースに加えた。
女子中高生が興味を持ちやすい内容とするため、化粧品や美容関連機器の研究者を多数抱える資生堂に協力を依頼。8月下旬、同社の東京都内にある直営店を女子中高生と津田塾の教員・学生が訪問した。
画面に映し出された自分の顔が瞬時にメーキャップされる「メーク仮想体験装置」を店舗用に開発した資生堂の研究者が経緯を説明した後、資生堂の女性研究者らが進学先の選び方などについて女子中高生の相談に乗った。
津田塾は女子大であるものの、理系学科の教員・研究者17人のうち女性は4人と少数。学内から研究者を確保しやすくするため、入学前から研究意欲が強い志願者を増やす狙い。理系の女性志願者が増え、自前で研究者を多く育成できれば、中長期的に大学運営もより安定する。
資生堂も、将来、自社の化粧品などの研究開発を担う女性のすそ野を広げるため、理系女子学生を増やそうとする大学の取り組みを支援する。
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学外と協力し女子中高生の理系志願者育成に取り組む主な大学 大学名(五十音順) 内 容
大阪市立大学 研究所の見学などを組み合わせ、物理学が社会で有用であることをPR
首都大学東京 宇宙航空研究開発機構(JAXA)など訪問。12年度からは企業も対象に
津田塾大学 資生堂など企業の現場に出向き研究・開発の楽しさ知らせる
東北大学 東北電力や地元に拠点のある製造業と協力し、理系学問入門セミナー開催
奈良女子大学など5大学 合同で「科学塾」。関西文化学術研究都市にある研究機関訪問を検討
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奈良女子大学、大阪大学、京都大学、神戸大学、大阪府立大学の5大学は今秋、中学1年~高校3年生の女子150人と保護者など50人を対象に「女子中高生のための関西科学塾2012」を開く。11月に京都府、大阪府、奈良県にまたがる「関西文化学術研究都市」にある企業や国の研究機関訪問を検討しており、協力先を募っている。
学外で実施する「科学塾」イベントと前後し、各大学キャンパスでも、実験に参加してもらったり学生が進路相談に応じたりする予定だ。
首都大学東京は8月に約30人の女子中高生を対象とした「東京理系女子探検隊プロジェクト」を開催。大学教員らが参加者を引率し宇宙航空研究開発機構(JAXA)を訪問した。12年度からは協力する企業を募って研究開発部門への訪問を実施する計画だ。
<女性研究者の割合、日本は欧米の半分以下 市場ニーズ把握へ不可欠>
文部科学省が毎年公表する科学技術白書では、毎回テーマを変えて日本の課題が分かるデータを紹介している。08年版白書に載った「女性研究者数の全体に占める割合(国際比較)」で、日本は明らかに見劣りしていた。
最多のラトビア52.7%に対し、日本は12.4%。韓国の11.4%と共に最低水準だ。主要国では米国32.5%、イタリア27.9%、フランス27.5%、英国26%となっていた。
国際比較を掲載しなかった11年版白書で日本は13.6%と、3年前より向上した。それでも欧米主要国からの「周回遅れ」は否めない。
危機感を強めているのは企業だ。スマートフォン(高機能携帯電話)のように独自の機能やデザインで新たな市場を開拓したり、途上国のBOP(ベース・オブ・ピラミッド=低所得層)市場攻略で先行したりする企業は欧米に多い。経営戦略だけでなく、ものづくりの源泉である研究者人材の多様性も、強みの一端との指摘がある。
企業は多様化する市場、消費者ニーズに対応するため、性別や国籍に偏りのない研究者の基盤を構築する必要がある。人材供給源は大学であり、理系をめざす若い女性を増やすことは大学経営の重要課題になっている。
(小暮晃一)