『日本経済新聞』2011年9月29日付
汚染がれきを発電燃料に 首都大・都・福島県が共同研究
首都大学東京と東京都は福島県と共同で、原発事故の影響で放射性物質を帯びたがれきや樹木を燃料として活用するための研究に乗り出す。今年度中に着手する。放射性物質の拡散を防ぎながら、汚染された木材を火力発電の燃料にする方法などを探り、発電した電力を1次産業に利用する考えだ。ただ発電施設周辺の住民の理解が得られるかなど課題も多い。
首都大は物質内部の放射性物質の分布状況を測定する技術を持っている。表面から放射性物質が検出されても、樹皮をはいだ内部は汚染されていない木材も多いという。この技術を使い、がれきや森林の樹木で汚染されているものとされていないものを選別する。
一般に木材は焼却すると、容量が10分の1程度になるといわれる。このため、同大の吉田博久教授(分子応用化学)は「汚染された木材などをそのまま放置するよりも燃やした方が管理しやすい」と指摘。木くずをチップにして、火力発電に使う方法を検討する。得られた電力や熱を農家のビニールハウスや林業の共同施設で利用することを想定している。
汚染した木材を燃料にした場合、放射性物質の拡散を防ぐことが不可欠になる。このため、焼却時にフィルターで除去する技術などの開発にも取り組む。都は6月補正予算に調査研究費として約5800万円を計上している。
発電施設の周辺住民の理解も重要になる。東京23区はごみを利用した発電事業を実施しており、都はこの環境影響評価(環境アセスメント)をしている。このノウハウを汚染木材を使った火力発電でも応用できないか検討する。
環境省の推計では福島県内のがれきは約220万トンにのぼる。首都大は沿岸部は警戒区域などがあるため、まずは内陸部のがれき、樹木の再利用から始める方針。