就職難…奨学金滞納者30万人台  『読売新聞』2014年3月2日付

『読売新聞』2014年3月2日付

就職難…奨学金滞納者30万人台

奨学金返済、不安募らす学生

奨学金を借りている大学生の間で、返済への不安が広がっている。卒業しても就職できなかったり、安定した収入を得られなかったりする若者が増えているためだ。

このため奨学金制度の問題点を訴える声が高まってきた。

奨学金を借りる大学生は少なくない。文部科学省によると、2011年は全大学生の約37%にあたる約96万人が、日本学生支援機構(旧・日本育英 会)の奨学金を借りた。同機構の奨学金には、家庭の事情などに応じて無利息で借りられるものと、最高3%の利息がつくものがある。返済の義務がない給付型 の奨学金制度は、日本にはあまりない。

一方で、返済滞納者は増加傾向にある。同機構によると04年度は約25万人だったが、12年度は約33万人。滞納者は派遣社員など非正規雇用の労働者が2割以上を占め、無職・休職中も2割近くいた。

 

奨学金を借りたために、卒業前から将来の不安を訴える学生もいる。

東京都内の私立大4年の男子学生(24)は、父親が失業したために家計が厳しく、母親のパートと自分のアルバイトだけでは足りないため、同機構か ら無利息と利息付きの奨学金を両方借りた。返済しなければならない金額は現在約850万円にも上る。「就職して返済するしかない」と考えた時期もあった が、もっと研究を続けたいという思いが強く、奨学金を借りて進学することを決めた。「大学院を終えたら死にもの狂いで返済するしかないが、『就職できな かったら……』と思うと不安になる」

都内の私立大4年の女子学生(22)は、シングルマザーの母親に負担をかけないために、アルバイトをしながら同機構から月6万4000円の奨学金を借りた。返済総額は約230万円。就職先は決まったが「就職1年目から、月々の返済ができるのか心配」と表情を曇らせる。

「給付型」の拡充求める声も

こうした中で、日本の奨学金制度の問題点を指摘する専門家グループが出てきた。中京大教授(教育学)の大内裕和さんは昨年3月に「奨学金問題対策 全国会議」を設立。シンポジウムなどを開いて「国は給付型奨学金を増やすべきだ」と訴えている。欧米では給付型のものが多いといい、「家庭の経済力によっ て、受けられる教育に差が出るのはおかしい」と指摘する。

大内さんは国立大の授業料が1975年度には年3万6000円だったが、現在は約54万円にまで増えた一方、世帯収入は過去16年で約120万円 減ったことを指摘。「学費の負担が重くなり、学生は奨学金に頼るしかなくなった」と話す。加えて大卒の就職事情は悪化し、正社員になれずに低賃金の非正規 雇用で働かざるを得ない、また就職すらできないなど、「奨学金を借りた学生の状況は、かつてないほど厳しい」と話す。

埼玉県内の弁護士らが昨年9月に設立した「埼玉奨学金問題ネットワーク」も、給付型奨学金の必要性を訴える。事務局長の弁護士、鴨田譲さんは「収 支を計算して、最低限必要な額しか借りないようにすることも大切。返済額がいくらになるのかを考えてから、借りる額を決めてほしい」と助言している。(吉 田尚大)

 

 

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