平成 25 年 12 月 2 日
東北地方における医学部新設について
全国医学部長病院長会議
平成 25 年 11 月 29 日、下村博文文部科学大臣から「東北地方における医学部
設置認可に関する基本方針」が発表された。
全国 80 の医学部・医科大学は、文部科学省からの要請を受けて、これまで
1,416 人の医学部入学定員増に協力するとともに、被災地支援のため 3,176 人の
医師を被災地に派遣し、被災地の医療崩壊を防ぐために努力してきた。また、
全国医学部長病院長会議は、医学部を新設することは、地域の医療崩壊を招く
だけでなく、医療の質の低下をきたし、将来的に医師過剰を招来させるなど、
現在および将来の日本の医療に大きな禍根を残すことを再三にわたり指摘し、
全国の医学部・医科大学の総意として医学部新設に反対してきた。
今回示された「基本方針」には、設置認可に当たって厳しい条件が付されて
おり、直ちに医学部新設が実現するものとは考えられないが、医師育成を実践
している全国 80 の医学部・医科大学の声を無視し、トップダウンで今回の「基
本方針」が示されたことは、真に遺憾であり、日本の将来の医師養成および地
域医療へ与える負の影響を憂慮するものである。
「東北地方における医学部設置認可に関する基本方針」には、留意点として 4
点が示されている。これらは、全国医学部長病院長会議が繰り返し主張してき
た、医学部新設に伴い最も懸念される事項である。特に、②教員や医師、看護
師の確保に際し引き抜き等で地域医療に支障を来さないよう方策を講じること、
③卒業生が東北地方に残り地域の医師不足の解消に寄与する方策を講じること、
④将来の医師受給等に対応して定員を調整する仕組みを講じること、について
は、医学部新設構想を審査する際に、確実かつ実効ある「方策」や「仕組み」
が講じられているか、抜け道が無いか等、厳格にチェックすることを要望する。
また、今回の基本指針に基づき医学部新設が認可され、全国医学部長病院長
会議が懸念している地域の医療崩壊を始めとする諸問題が生じた場合の責任の
所在を、前もって明確にしておくことも要望する。
なお、依然として経済特区における医学部新設の動きがあるが、今回示され
た「基本方針」が引き金となって、医学部新設が次々と派生してくることのな
いよう、関係省庁に強く要望する。