東北に医学部新設 被災地の再生期待 設置主体選定へ意欲 『河北新報』 2013年11月30日付

『河北新報』 2013年11月30日付

東北に医学部新設 被災地の再生期待 設置主体選定へ意欲

文部科学省が東北に医学部新設を認めることを明らかにした29日、医学部設置構想を打ち出している宮城県内の2グループは、来年6月にも決定する設置主体の選定に向け、それぞれ強い意欲をみせた。

財団法人厚生会仙台厚生病院は、東北福祉大(いずれも仙台市青葉区)を連携先とした医学部設置を目指す。厚生会の目黒泰一郎理事長は「東北の人々の期待に応えられるよう頑張りたい」と決意を示すコメントを出した。

「東北医療への支援を通して復興に貢献するという初心、原点を大切にする」と目黒理事長。連携先の東北福祉大は「国に選ばれるよう最善を尽くす」と述べた。

文科省は、早ければ来年6月にも新設医学部の設置主体を決め、最短で2015年4月に開学させるスケジュールを打ち出した。

単独で医学部設置構想を掲げる東北薬科大(青葉区)の高柳元明学校法人理事長は「15年度開学に向け、認可申請の手続きや校舎新設などを準備する」との談話を発表した。

医学部設置の条件として文科省は、教員となる医師を東北の医療現場から引き抜かないなど、地域医療に支障が出ない方策を求めた。高柳理事長は「そうした事態の回避に十分配慮して(設置準備を)進めたい」と、構想実現に万全を期す考えを示した。

◎3県自治体、歓迎/医師定着策に注文も

東北への大学医学部新設を認める文部科学省の基本方針を受け、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の首長は29日、地域医療の拡充に期待感を示した。教員確保に伴う医師の引き抜きに対する懸念や、卒業生の地元定着対策への注文も出た。

宮城県は医学部新設の支援態勢を強化するため、保健福祉部内に担当職員を配置した。村井嘉浩知事は「設置構想の提出期限までは短期間であり、県としても本腰を入れて取り組んでいく」とのコメントを発表した。

東北市長会会長の奥山恵美子仙台市長は「医師の不足や偏在、震災後さらに人材確保が難しくなった現状を国に訴えてきた立場として、大変ありがたい」と歓迎した。

市立病院が津波被害に遭った亀山紘宮城県石巻市長は「超高齢化を見据え、在宅医療に従事する医師の育成が重要」と強調し、「政府は早期の閣議決定を」と求めた。

戸田公明岩手県大船渡市長は「岩手県沿岸の医師が手薄な地域に卒業生が来てもらえるよう期待する」と話し、「病院勤務の専門医だけでなく地域に根差す総合医を育成してほしい」と要望した。

桜井勝延福島県南相馬市長は「新設が地域の医師不足を招かないよう願う」とくぎを刺す。「原発事故による避難先からの帰還条件に医療体制充実を挙げる住民が多い。地域医療の再生につなげてほしい」と注文を付けた。

 

 

 

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