大学分科会(第115回) 議事録 平成25年9月12日

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大学分科会(第115回) 議事録

2.場所

平成25年9月12日(木曜日)13時~15時
三田共用会議所 1階 講堂

3.議題

1.各部会等の審議状況について

2.修士レベルの教員養成課程の改善について

3.その他

4.出席者

委員
(分科会長)安西祐一郎委員
(副分科会長)河田悌一委員,黒田壽二専門委員
(委員)浦野光人,大島まり,小原芳明,北城恪太郎,高橋香代,長尾ひろみの各委員
(臨時委員)奥野武俊,樫谷隆夫,勝悦子,金子元久,小畑秀文,佐々木雄太,佐藤弘毅,清家篤,谷口功,美馬のゆりの各臨時委員
(専門委員)白井克彦専門委員

文部科学省
藤木文部科学審議官,板東文部科学審議官,布村高等教育局長,小松私学部長,関文教施設企画部長,大槻総括審議官,川上政策評価審議官,常盤高等教育局審議官,中岡高等教育局審議官,浅田高等教育企画課長,里見大学振興課長,渡辺学生・留学生課長,田中高等教育政策室長,鍋島教員養成企画室長,新田私学経営支援企画室長,今井専門職大学院室長,圓入専修学校教育振興室長 他

オブザーバー
日髙義博(専修大学理事長)

5.議事録

(1)文部科学省及び美馬委員から,机上配付資料「学修環境充実のための学術情報基盤の整備について」(審議まとめ)について説明があった。

【田中高等教育政策室長】  机上の黄色の冊子につきましては,科学技術・学術審議会学術分科会の学術情報委員会が本年8月に取りまとめた審議のまとめの冊子でございます。この審議のまとめにつきましては,昨年8月の中央教育審議会答申におきまして,アクティブ・ラーニングをはじめといたします大学教育の質的転換に必要な取組の一つといたしまして,学生の主体的な学修のベースとなる図書館の機能強化などの学修環境の整備が提言されたことを踏まえまして,同委員会で検討を行い,今般,ラーニングコモンズをはじめといたします学術情報環境の充実について取りまとめを行ったものでございます。

そして,本日御出席の美馬委員が同委員会の専門委員として参画されておりますので,補足などございましたら,よろしくお願いいたします。

 

【美馬委員】  今御説明にありましたように,この黄色い冊子は,今年8月に取りまとめたものでございます。昨年8月の中央教育審議会答申にあるアクティブ・ラーニングを推進するに当たり,学習空間というものはとても重要であると我々は認識しました。

授業方式を変えるだけにとどまらず,授業時間以外の,学習機会をどのように提供していくべきかということについて議論していきました。教える側からすれば一斉授業,あるいは一方通行型の授業で知識を流し込むという形,また学ぶ側からすれば知識を一方的に受け取るというところから,インタラクティブな授業,又は協調的に学んでいくスタイルへ転換が求められているということです。

その際,教室以外で学ぶ場として,大学内でどういったところがふさわしいのかといえば,我々は,やはり知識の宝庫である図書館であると考え至りました。そのうち,図書館がラーニングコモンズへ転換が図られているということです。

一方で学習,学術情報,あるいは図書の電子化によって,図書館の空間も空きつつあります。そこで,今まで図書館というと,一人で静かに学習する空間として機能していたわけですが,そういった機能を残しつつも,協調的な学習空間として授業外の時間に活用できる場として,図書館は最適ではないかということです。

今回の審議の我々の委員会のまとめとしては,その学習環境の充実に関わる学術情報基盤整備として,学習コンテンツをどのように提供していくか,学習空間がどうあるべきか,その中で人的支援をどう行っていくかという三つの柱で,アクティブ・ラーニングを推進していくことに関して提言をまとめさせていただきました。お時間のあるときに御覧いただければと思います。

(2)文部科学省から,各部会等の審議状況について,資料1に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【田中高等教育政策室長】  資料1に基づきまして,各部会の審議状況について御説明をさせていただきます。

各部会におきましては,今期最初の本分科会の決定に基づき設置をされまして,その後,参考資料1にございます,本部会で審議いただきました審議事項も踏まえながら審議を進めているところでございます。

資料1の一番上にございます横表の資料は,五つの部会等の審議状況と今後の予定を一覧表にしたものでございます。そしてその後ろに参考1から5といたしまして,各部会ごとに資料を用意しておりますので,そちらを基に説明をさせていただきます。

まず参考1を御覧ください。参考1は大学教育部会の審議状況を取りまとめたものでございます。

大学教育部会におきましては幾つかの審議事項がございますが,当面,大学の質保証の充実について集中的に審議を行う予定でございまして,資料1の参考1の3ページ,4ページとございますものが具体の検討事項を整理したものでございます。大きく分けて二つの観点から審議を行うこととしておりまして,1点目は大学教育の質的転換を促進するための質保証の在り方といたしまして,学修成果や内部質保証を重視した評価や,評価結果を具体的な教育活動につなげるための方策など,認証評価制度の改善について審議を行っているところでございます。

2点目は4ページでございますが,質保証の観点から課題が指摘されております設置基準の規定について,抽象的な基準を明確にするなど,質保証の充実のための設置基準の改正について審議を行っているところでございます。

そして1枚目にお戻りいただきまして,今後の検討予定といたしましては,設置基準などの制度改正につながるものにつきましては,年度内を目途に,順次改正の方向性を取りまとめますとともに,認証評価制度についても,大学教育の質的転換の促進などの観点から制度全般について審議を行い,年度内をめどに改革の方向性を取りまとめ,これらの検討を踏まえつつ,「質保証のトータルシステム」全体の在り方について審議を行う予定でございます。

次に,参考2を御覧ください。参考2は大学院部会の審議状況でございます。

大学院部会におきましては,3ページ目以降の論点整理にございますように,社会人の受入れや育成すべき人材像などの大学院教育をめぐる現状,課題について全般的に議論を行った上で,特に大学院教育の社会人の受入れに向けた方策。これにつきましては後ほど予算の説明もございますが,今回の概算要求でも必要な予算を要求しているところでございまして,そういった社会人の受入れに向けた方策。それから,修士レベルの教員養成課程の改善について審議を行っているところでございます。

今後,修士レベルの教員養成課程の改善につきましては,教職大学院における専任教員関係の特例措置,いわゆるダブルカウントに係る専門職大学院設置基準の年内の改正に向けて審議を進める予定でございます。

なお,この専門職大学院設置基準の改正につきましては,後ほど資料2に基づきまして説明をさせていただく予定でございます。

そして今後,社会人の受入れ方策,さらには第2次大学院教育施策要綱の取組状況を踏まえた課題について審議を進めていく予定でございます。

続きまして,参考3を御覧ください。参考3は組織運営部会の審議状況でございます。

1ページ目にございますように,組織運営部会につきましては,これまで3回会議を開催いたしておりまして,3ページ目以降に論点ペーパーを付けておりますが,そこにございます論点ペーパーに基づく議論を一通り行ったところでございます。

具体的には,このペーパーの論点ごとに,学長を支える体制の整備や予算,人事に関する学長の権限,学長の選考方法・評価などの学長のリーダーシップの確立,学部長の役割・選考方法や教授会の役割などの学内組織の運営・連携体制の整備などにつきまして,一通り意見交換を行ったところでございます。今後更に全体的に審議を進めまして,ガバナンスの望ましい在り方や制度改正の方向性につきまして,年内を目途に審議結果を取りまとめる予定でございます。

次に,参考4を御覧ください。参考4は大学のグローバル化に関するワーキング・グループの審議状況でございます。

3ページ,4ページとページを付しておりますものが,審議に際しての論点と論点ごとに主な意見を整理したものでございます。

大きく分けて,大学の徹底したグローバル化の推進と留学生の双方向交流の促進の2点の観点から審議を行うこととしておりますが,現在,特に外国大学とのジョイント・ディグリーや海外拠点の活用など,国際的な教育連携などに関する制度の在り方を中心に審議を行っているところでございまして,今後,年内を目途に制度改正の方向性を取りまとめるとともに,さらに大学のグローバル化の在り方や留学生政策の在り方などにつきましても審議を行い,年度内をめどに審議内容全体の中間的取りまとめを行う予定でございます。

次に,参考5を御覧ください。参考5は法科大学院特別委員会の審議状況でございます。

法曹養成制度改革に関する政府全体の検討状況につきましては,後ほど資料5に基づきまして別途説明をさせていただきますが,本年6月に取りまとめられました法曹養成制度検討会議の最終取りまとめにおける法科大学院に関する提言などを踏まえまして,入学定員・組織の見直しや共通到達度確認試験の創設などの成績評価の厳格化などの今後必要となる検討事項を,2ページ目,3ページ目のA3のペーパーにございますように整理をした上で,特別委員会の下に三つの専門的な調査・分析を行うワーキング・グループの設置を検討したところでございます。

具体的には4ページ目から6ページ目に資料を付けておりますが,三つのワーキング・グループ,組織見直し促進策,共通到達度確認試験などの質保証に向けた仕組み,改善状況の調査・分析に関するワーキング・グループを設けて審議を進めまして,政府全体におけます新たな検討体制での法曹養成制度改革の検討を踏まえつつ,年内を目途に具体的な改善方策を取りまとめる予定でございます。

なお,参考資料2に各部会の審議内容に関する参考資料を御用意しておりますので,後ほど御参照いただければと思います。

各部会の審議状況及び今後の予定の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【安西分科会長】  後ほど教員養成課程と,それから法曹養成制度については改めて御意見を頂く予定でありますけれども,今の説明について,全体として何か御質問ある方はおありになりますでしょうか。

【北城委員】  今回の報告でなくて結構ですが,高大接続特別部会の審議内容は大学運営などへの影響が大きいので,今後進捗の状況が分かれば教えていただければと思います。

【田中高等教育政策室長】  高大接続特別部会につきましては,昨年8月に中央教育審議会総会の直属の組織として設置をいたしまして,これまで7回ほど会議を開催したところでございます。そして,その7回の会議の議論につきまして,教育再生実行会議におきまして,6月から大学入試・高大接続に関する議論を進めるということでございましたので,高大接続特別部会の審議の状況につきまして,安西高大接続特別部会長から教育再生実行会議の方にも御紹介を頂いた上で,現在,教育再生実行会議におきまして,大学入試・高大接続の在り方について議論をしているところでございます。

そして今後,教育再生実行会議の議論,改革の方向性などを踏まえまして,引き続き高大接続特別部会におきまして,大学入試・高大接続の在り方について審議を行う予定でございまして,その審議状況につきましては適宜大学分科会にも御報告をさせていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

(3)文部科学省から,修士レベルの教員養成課程の改善について,資料2-1~2-2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【安西分科会長】  次に議題2の修士レベルの教員養成課程の改善についてに移らせていただきますけれども,この件につきましては,中央教育審議会の答申を受けまして,協力者会議が設置されて議論が行われております。大学分科会におきましても第6期に既に議論がされているところでございますけれども,教職員大学院におけます専任教員の特例措置──ダブルカウントと称しておりますが,これは専門職大学院設置基準の改正を必要とするということでございます。これまでの経緯を含めまして,協力者会議の審議状況を御説明いただいて,その後,専任教員の特例措置を中心に御審議を頂くようにしたいと思います。

事務局から,まず説明をお願いします。

【鍋島教員養成企画室長】  ただいま御紹介も頂きましたように,本件につきましては,先日8月20日に開催いただきました大学院部会の方でも御審議いただいた案件でもございます。教員養成の改革につきましては,これまでも様々な経緯もございましたが,特に最近の主な課題としましては,現在は高校までの教員の採用者数が少し多いわけでございますが,これからの少子化に伴いまして,10年,15年後には大きく採用者が減ってくるということがありますので,それに伴う大学の教員養成関係の改革が必須となっているわけでございます。

また,できるだけ学校現場に基づいた大学のカリキュラムを作っていくとか,教育委員会,学校現場との接続を考えたような取組が必要となってまいります。

本日,先生方に頂いた御意見も踏まえまして,是非,協力者会議での議論に,もう少し反映させていきたいと思っております。

資料2-1でございますけれども,昨年8月に,大学分科会の答申と同時期に教員養成関係の答申もございました。教育委員会と大学との連携・協働を進めることでありましたり,また現在の教育学研究科のような修士課程の方から教職大学院のような学校現場との連携が密なものに変えていくようなことでありましたり,また先ほどお話しいただきました教職大学院の専任教員のダブルカウントの在り方についての検討が必要だということもお話を頂いておりまして,9月以降,協力者会議で具体的な議論をしていただいているところでございます。本分科会の高橋委員もメンバーとして参画いただいております。

今,大分議論が進んでまいりましたけれども,もう少しまとまりましたら,改めて具体的な内容については御相談したいと思います。

問題意識としましては,教育再生実行会議の第三次提言でありましたり,また今後の国立大学の機能強化に向けての考え方を6月にも出させていただいていますけれども,教員養成につきまして,学校現場での指導経験のあるような大学の先生を多くしていくことでありましたり,より実践的なカリキュラムに研究の方から転換していくことでありましたり,組織編成について抜本的な見直しの強化を図っていくということが挙げられます。

その中でも,特に教育学研究科で申しますと,例えば教員就職率ということで,学校の先生に実際なる方は,一般的な教育学研究科でございますと,大体54パーセント%という形なんですが,平成20年度から新しく設置されました教職大学院につきましては,93パーセント%の方々が教員になっているということでありましたり,4割以上の方々は実務家の先生がいらっしゃるということで,一つのモデルとして少しずつ機能を発揮しているところでもございます。

現在では,まだまだ,教育学研究科の多くの者は,3,300名ぐらいは一般的な修士課程ですが,現在800名ぐらいの教職大学院,全国でも25大学でございますので,こちらの大学の数を増やしていったり,また厳選しながら改革を進めていく必要があると思っております。

2ページ以降に具体的な内容がございます。これは8月6日までの協力者会議の議論でございますが,教育学研究科から教職大学院の方に少しシフトしていくようなことでございましたり,具体的に,現在,教職大学院が設置されていない都道府県でも,少しずつであるとは思いますが,教職大学院を設置していく改革を進めていくようなことでありましたり,また開放制で行っていくことでもありますので,国公私立大学との役割分担をしっかり考えていくということでございましたり,具体的な教育課程の内容の在り方,そして教員組織を少し変えていくような方向性や,また,それに伴いまして国立大学の教員養成系修士課程の教員組織の在り方につきましても改善が必要だと考えておりまして,もう少しまとまりましたら,また改めて御相談したいと思います。

本日は,そのような大きな改革の中で,資料2-2のとおり,教職大学院におきます専任教員関係の特例措置ということで御相談をさせていただきたいと思います。

教職大学院では,専門職大学院設置基準に基づきまして,必ず置くような形での必置教員という形で,11名ぐらいの先生方がいらっしゃる形になっておりまして,専門職大学院としての独立性の担保ということで,ほかの学位課程の先生とは兼ねることはできないという原則でございます。

ただ,全体的な,この専門職大学院につきまして,制度創設時の平成15年度から今年度末までの10年間の特例措置としまして,ほかの学位課程の教員が必置教員を幾らか兼ねることができるような特例措置がございます。これが今年度末で切れるということで一つ,現在御議論しないといけないということがございます。

昨年秋の中央教育審議会大学分科会での御議論も踏まえまして,博士課程の教員との接続はできる形で措置をしていただいたわけでございますけれども,教職大学院につきましては,昨年の段階では,まだ答申が出て協力者会議でも議論をこれからするという形で,少し遅れておりましたけれども,協力者会議での議論が進んでまいりましたので,改めて御相談をさせていただきたいと思います。

教職大学院につきましては,現在は25大学ございますが,これから特に国立大学,そして私立大学と一緒に作るような形も,もちろんあると思っているのですけれども,新しく新設が,これから当面の間見込まれるようなことがございます。その際に,優秀な教員を確保していくような形が必要となってくると思います。

また,ほかの専門職大学院と比べまして,創設が平成20年度だということで,少し遅れてできた経緯もございますので,その遅れた分につきましての措置を考える必要もあろうかと思っております。

一方で,恒常的にこのような特例措置をお願いするということではございませんでして,本分科会の大学院部会でも御意見を頂いたところでございますが,あくまで限定的な措置で,これから設置が見込まれるような,平成30年度までの間,5年間のような形で考えておりますけれども,現在の特例措置と同様な措置を行っていただくことをお願いできればと思っております。

是非,いい教員養成改革を進めていくことでありましたり,またパブリックコメントなんかも踏まえまして,様々な御意見を頂きながら,全体的な改革を進めていきたいと思っております。

【美馬委員】  今の教職大学院の大学の教員についての意見です。こういった専門職大学院の大学院教員の多様性の担保と協調していく仕組みを是非考えていただきたいということです。

というのは,今までは教育学系大学院の教員は,教育学の研究者が主であり,そこに今回は実務家を足していくということですね。しかしながら,教育学研究者あるいは実務家を足せばいいというものではなくて,いかに教育の理論と実践をつなげていくか,そして,そこから新しい教育の在り方を出していくかというのも大学院の一つの役割だと思います。

その中で,学校外の社会とのつながりが重要になります。実務家というのは大抵が学校の現場の先生を何十年という方です。教育研究者も大学の中にずっといるという,ある意味,学校外の社会とのつながりが余りない方々です。そういう中で,大学教員の多様性というものをもう少し担保する形で,そして,追加するだけではなくて,その人たちが協調し新しい教育の在り方を模索していけるような仕組みを是非お願いしたいと思います。

【鍋島教員養成企画室長】  是非,多様性のある,いろいろな様々な社会人の方々も集まってこられるような,そういったものを目指していきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【谷口委員】  今のこととも関係あると思うのですけど,いわゆる教職大学院の場合には4割以上が教職経験者等の実務家云々と,こうなっています。この教職経験者というのも,何となく分かったようで分からないというか,どれだけ実務をやったら,それを経験者というのかというようなところを含めて少し,この程度はきちんとやっていないとだめですということが分かるようにしておかれるといいのではないでしょうか。1回教えに行ったら,もう経験者かというと,ある種,経験者かもしれませんけど,それでいいかというような話もあるかと思いますので,ここの中身を少し明確にされておいた方がいいと思います。

全体的な考え方はこれでよろしいかと思いますし,5年延ばしてという話も実情に合っているというか,そういう意味では大変結構だと思います。

この中身だけ,この,実務教員というか,教職経験者というものを,どの辺をもってそれだというのかを明確にしていただいたら有り難いと思います。よろしくお願いします。

【白井委員】  特例措置に関して5年延ばすというのは後からできた経緯もあるから,10年というのでこれまでやってきたということからいえば別に意見はありません。それから,実際上のことを考えて非常にリーズナブルだと思うのですが,実際どうなのでしょうか。そういう制度を作るときに,またいろいろな専門職の大学院は生まれてきているし,これからも生まれる可能性があります。そのときに,生まれてから,これは新しくできたから,また10年だというのも何かぐあい悪いです。この教職大学院だけに認めるというお話ですよね。そういう事情は,もちろんあると思います。非常に規模が大きいとか,いろいろな事情があって,リーズナブルではあるけれども,美しさはないという感じがします。

ですから,私はやはり,この教職大学院の重要性ということを考えるとすれば,専門の委員会を設けて,国の問題として,じっくり中身を議論しているわけですので,今もいろいろ御意見あったように,そこのところの教員のやり方,決め方,そういうことも含めて,どんなふうにして教員を確保していくのかということも含めた,やや特別なことがあるということを,別にそれは何の問題もないのではないでしょうか。無理やりに全部,専門職大学院の枠の中で1個の中に入れて,ここだけ延長しましょうとか,そういうことをやる必要は本当にあるのだろうかという,少しだけ疑問を持ちます。

【鍋島教員養成企画室長】  谷口委員からお話しいただきました実務経験というところですが,基本的には教職大学院設置の際に中央教育審議会で御議論いただきまして,大体20年ぐらいを一つの目安にしておりますが,あとは,その方々の様々な経験によって考えるという形を考えておるところでございます。

また,白井委員がおっしゃっていただきましたように,専門職大学院という形の中で収まるのかどうかという御議論も確かにあろうかと思うのですけれども,まずは,その一つある専門職大学院の全体の枠の中で,どのような形で運用というか,工夫ができるかということを,よくよく考えてみたいと思っております。

【高橋委員】  実務家教員の資格については,平成18年度の中央教育審議会の答申を受けて,設置基準などで決められていたと思います。私は平成20年度に岡山大学で教職大学院を設置いたしました。それまでの教育学研究科の教員は,教育研究者が主体でございまして,どちらかといえば社会とも縁が薄かったし,学校とも縁が薄かったという実態がございました。そういう中で,平成20年に発足した教職大学院で,学校現場の課題を解決していくという試みが始まりました。教職大学院では,実務家教員は教職経験者だけでなく,カウンセラーの方とか,様々な方が,大学によって異なりますが,参加できることもありますので,少しは開かれた大学院になったかと思います。

ただ,教育学研究科が初めて学校実践の場に組織的に関わっていくことになったものですから,時間もかかるし、新たな経験と言うことで内部的には苦しい状況があります。小原委員も教職大学院を設置されているわけですが,経営的にも苦しいなど課題を抱えておりまして,なかなか広がらなかったという実態がございます。

これからの学校教育のことを考えると,やはり学校における実践の課題をしっかりと目に入れて,そこでの実践研究ができる大学院を作っていかなければならないと考えます。今回,国立大学においては少なくとも,各県には一つは置く必要があるのではないかと考えます。そういう意味で非常に,特例措置でございますけれども,まだ,多くの大学が,これから変わっていく段階でございますので,特例措置を是非お認めいただいて,教職大学院の設置を推進できる環境をお作りいただきたいということで御提案させていただいた次第です。協力者会議におりますので,御説明させていただきました。

【黒田委員】  教職大学院のこの制度を作るというのは,本当に日本の国にとって非常に重要なことだと思います。しかしながら,既存の教職課程を持っている大学の大学院,それを,この教職大学院とどう整合性をとっていくのか。こちらは専門職大学院,既存の大学院はアカデミック大学院の中で,教職課程の大学院を作って持っておられる。それとの整合性をどうするのかという問題。それが1点です。

それから,もう一つは,前にも専門職大学院を作るときに,実務家教員何割以上と定めたり,100パーセント%実務家教員でアカデミックな教員一人もいないという,そんなところも出てきているわけです。ですから,この何割以上,上限をどこに止めるかということも一つ重要なことだろうと思うのです。そうしないと,実際にこの制度を研究する上で,教職の在り方を研究する人材がいなくなるということです。現場主義で,その日その日がしっかりと教育できればいいという,そういうことになってしまっては,制度的になりかねないので,その辺の歯止めをどうするかということ。この2点についてお伺いをしたいと思います。

先ほどの御説明では,この教職大学院は各県に1校ずつ作りたいということですが,これは本当に必要なのかと思います。少子化の中で,ある程度県をまとめて一つぐらいで済むような地域もあると思うのです。それを,国立大学があるから,そこは全部,この教職大学院を置くという,そういうことになりますと,例は悪いですが,法科大学院のように,就職もできない,合格者も少ない,応募者も少ない,そういうことになりかねないということがあります。

教職大学院ですから,5名とか10名の学生で成り立つものであれば,それでも地域限定でいってもいいと思いますが,恐らくそれぐらいで,この経営は成り立ちませんので,その辺のことも考えていっていただきたいと思います。

【佐藤(弘)委員】  ありがとうございます。今の黒田委員の発言と似ているところがあるのですけれども,教職大学院の制度の充実ということと,いわゆる教職の養成の修士レベル化ということが,どの程度並行して進んでいるのか,よく見えない部分があります。とりわけ教職大学院は,現状においては,ほとんどが国立大学であって,私立大学は,たしか,わずか6大学でしょうか。なぜそういうことになったのか。私立大学にとって非常にハードルが高い,使い勝手の悪い制度なのかどうか。その辺のところも少し検証していただくと有り難いと思っております。

それから,修士レベル化ということで,教職大学院を核にして進めるということだと,これだと恐らく小学校,中学校の教員のことを想定しておられると思いますけれども,さて高等学校のことについては,どのようにしていくのか。それは現在では専修免許状を出す一般のごく平凡な大学院修士課程がこれを担っているわけで,恐らく,そういう修士課程では教職者を養成するという視点は余り持っていないことが推察されます。それを,この修士レベル化で高等学校教諭の資質能力の向上にどう役立たせていくのか。この辺のビジョンというものを早急に打ち立てる必要があろうと思っています。

ついでながら,教職でいえば,あと幼児教育のことをどうするのか。このことについても議論が余り進んでいないのが大変気になるところでございます。大学分科会の枠を超えているかもしれませんけれども,機会ですので発言させていただきました。

【白井委員】  今のことと関係するのですが,教職大学院を各県の大学の修士ですか,そこの普通の課程を転換していくという,それをやると確かに増えるということはあるのかもしれませんけれども,まず非常に性質が違うものだということと,教員をどうするという大問題があるのではないかという気もする。黒田委員が言われたようなこともある。

ですが,それぐらい作っても,まだ,全体の教員数からいいますと,教員のうち,極めてまれな人しか,この教職大学院の教育を,訓練を受けることができないのです。それを考えると,本当の意味はどういうことになるのかという目的が,ないよりはいいというのは分からなくもないけれども,そういうことではないのではないか。やはり全体の教員の資質を上げていくということには,もう少し基本的なことを検討していただいた方がいいのではないかという気がする。

ですから,修士課程レベルのことをやるのであれば,もっとたくさんの人が受けられるようなチャンスを設ける。例えば半分は通信教育にするとか,現場の教員が参加できるような大学院を設計するとか,いろんな方法が現実にあるわけです。そういうことを幅広く検討してほしいというのが,前から申し上げておりますが,是非お願いしたい。この非常に特別な方だけが受けられるような制度は,教員養成には余り合わないのではないかと思っています。

それから,もう一つは,要するに教職大学院を作るのはいいのですが,たくさん作るとすれば,そのクオリティーのコントロールを徹底的にしっかりやっていただかないといけない。あるいは人事の交流ということも含めて,是非検討していただきたい。

【安西分科会長】  大変,多様な意見を頂きましたと思います。もちろんダブルカウントを早くやってほしいという御意見もありましたけれども,一方で,やはり教育の内容というのでしょうか,では,どういう教育をしていくのかということが大学全体については問われている中で,この件を,ダブルカウントだけの外形のこととしてここで審議をするより,もっと広い議論をしてほしいという御意見も多々あったように思いますので,この分布は是非,文部科学省側は受けとめていただければと思いますし,きょうの御意見を今後の制度改正の検討に是非反映していただければと思います。

【常盤高等教育局審議官】  今まさに,いろいろ御指摘を頂きました。事務局からも説明いたしましたように,全体としての教員養成の在り方について,特に修士レベルでどういう対応をしていくのかということについては,協力者会議を設けて,現在まとめに向けて議論しておりますので,それもまた,この場で改めて御議論,御意見を賜る機会を是非作らせていただきたいと思っております。

今回は,そういう意味では,来年の3月31日までということで期限が迫っていることもありまして,このダブルカウントの部分だけを抜き出して御議論いただいているということで,全体像との関係で必ずしも十分御説明できないところがあるのは大変申し訳なく思いますが,ただ,全体として言いますと,やはり,先ほど高橋委員からもお話ありましたように,教職大学院が,既存の教育学部及び教育学研究科がなかなか,学問的な視点が中心になっていて,現場の実践と必ずしもうまく結びついていなかった。それについて,教職大学院が設置されることによって,そこの部分が質的に大きな転換をしつつあるということはありますので,できるだけそういう方向は,多くの教育学部を持っている,特に国立大学については1県1大学ありますので,そういうところは,できるだけそういう方向を目指してほしいと思っております。

ただ,そのときに,ただ単に機械的,自動的にいくのではなくて,やはり最大のカスタマーである都道府県教育委員会の要請をきちんと受けながら,そのそれぞれの都道府県における教育の中にしっかりと役に立つような,そういう形でのハードルというものはしっかりと設けていきたいと思います。

また,個別の先生方についても,もちろん社会人,実務家を4割以上入れるということはありますけれども,それだけではなくて,やはりアカデミックな立場での大学の先生方,教育学部の先生方には,教育学部の中だけではなくて,むしろ附属学校であるとか,あるいは地域の公立学校の中で,できるだけ教育の機会を持っていただいて,そういうアカデミアの先生方にも実践を身に付けていただくということも,国立学校については強く,我々の立場として,各大学にお願いをしているところでございますので,そういうことも含めてです。

あと,もう一つ申し上げますと,お話ございましたように,大学教員全てに修士課程というのは,全体のマスの問題として,それを提供するのはなかなか難しいわけでございますので,そういう意味では既に採用された先生方の現職教育とどう絡み合わせるのかということも,これは初等中等教育局との課題とも連携しますけれども,そういうことも含めて十分議論を重ねて,この場で,また御指導いただきたいと思っております。

【安西分科会長】  それで,こちらも再々で申し訳ありませんが,教員養成系の方々以外の方が気にされているのは,やはり大学の教育が質的にも転換をしていかなければいけない中で,本当にそれが行われていくのかどうかということだと思いますので,そのことは,このダブルカウントとはまた,もっと広い話かとも思いますけれども,是非そこは気に掛けていただければと思います。

(4)日髙大学設置・学校法人審議会学校法人分科会会長及び文部科学省から,解散命令等に係る課題を踏まえた今後の対応の在り方について,資料3に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【安西分科会長】  解散命令等に係る課題を踏まえた今後の対応の在り方については,これまで大学設置・学校法人審議会の学校法人分科会において審議を行って,このたび報告がまとめられたものであります。学校法人分科会の日髙義博会長にいらしていただいておりまして,御説明を頂くことになっております。日髙会長,よろしくお願いいたします。

【日髙学校法人分科会長】  まず私は導入部分の説明をさせていただきまして,具体的な内容については事務局から説明をさせていただきたいと思います。

大学設置・学校法人審議会の学校法人分科会におきましては,昨年の10月,著しく重大な問題を抱え,今後の改善の見通しが立たない状況にありました学校法人──具体的には堀越学園でございますが,その学校法人に対して文部科学大臣が私立学校法に基づき解散を命ずることについて審議を行い,解散命令が妥当である旨の答申を行いました。

この解散命令自体につきましては,本年3月に答申に基づきなされたところでございますが,他方,この答申に係る審議を通じて,こうした状況に立ち入った学校法人に関して行政指導を重ねた後は解散を命ずることによってしか問題の解決が図られない点につきまして,現行制度には課題があるとの認識に至りました。

このため,本分科会におきましては,その後,解散命令等に係る所管庁による一連の対応の過程を改めて検証した上で,現行法における制度上の問題及び考えられる今後の在り方について検討をいたしました。その検討の内容を,ここに整理したものでございます。

本分科会としては,本報告で整理,提言した内容について,今後,文部科学省におかれまして適切に,その実現に向けて検討し,必要な対応をお願いしたいと考えております。

本報告は学校法人分科会としてまとめたものでございますが,大学制度,学校制度にも関係する内容でございますので,今回,その内容について御報告,御説明をさせていただくものでございます。

それでは,具体的な内容につきましては事務局から説明をお願いいたします。

【新田私学経営支援企画室長】  内容について御説明させていただきます。

学校法人分科会におけます審議の経過と方向性につきましては,今,分科会長から御説明のあったところでございます。同分科会では,制度と具体的事例に即した検証を行うワーキング・グループを設置して,必要な事項の整理,検討等を行ったところでございます。名簿につきましては,参考資料の一番最後に付けてございます。

以下,参考資料1の概要資料に基づきまして御説明させていただきます。参考資料1の1ページを御覧いただければと思います。

まずローマ数字1.の現行法における課題と,その基本的考え方ということで,一つ目の丸で,現行の学校法人制度は,私学の自主性と公共性の自覚に信を置いて,行政は関与を極力控えるという基本理念に基づいておりまして,この理念については今後も引き続き大切にされていくべきであるとされる一方で,他方,近年,私立学校制度の趣旨を逸脱,濫用した学校法人の運用が行われて,所轄庁の指導への対応がなされずに,時間の経過の中で状況が一層悪化し,その結果,学生の教育を受ける権利の侵害,あるいは学校法人の役員が逮捕される事態になるなど,社会的にも重大な問題が生じるような異例な事態も少数ながら生じています。

これらを踏まえて○1といたしまして,私学制度創設以来半世紀以上が過ぎ,私立学校を取り巻く社会・経済状況も著しく変化する中で,学生等に著しい不利益を被らせるような異例の事態の防止に資する制度とすることが一つ目。二つ目といたしまして,私学の自主性を尊重しつつ,重大な問題状況にある学校法人に対して的確かつ効果的に対応できるようにするということ。三つ目として,任意の行政指導から最終的な措置としての解散命令までの飛躍が大きいことから,解散命令に至るまでの間に段階的な措置を設けるということ。これらの観点から,今後の対応の在り方を検討する必要があるとされたところでございます。

次に2.の考えられる新たな対応の在り方でございますが,(1)の重大な問題があると考えられる学校法人について,所要の実地調査が可能となる仕組みとすることということでございます。

現行制度では,実態把握のための実地調査は任意の協力に基づいておりまして,協力を拒否される場合,あるいは真摯な対応を欠く場合などもございますことから,重大な問題があると考えられる学校法人を対象に,その運営の改善等を図る上で必要な立入検査を可能とすることが必要とされているところでございます。

二つ目の(2)の重大な問題がある場合に,その改善等のために必要な措置を命ずることを可能とするということでございます。

現行制度では,問題が生じている場合に,行政指導によりその改善を図ることが想定されておりますけれども,具体的な法的裏付けがないため真摯な対応を欠く場合や,結果として事態が改善されないまま解散命令に至ることがある。このようなことから,まず一つ目として,解散命令を出すまでの間に,改善等のための一定の措置を命ずることができるようにすることが必要とされております。

また,2ページ目の(3)の学校法人の理事が法人の財産を不当に流用し,法人に損害を与えるなどの非違行為がある場合であって,法人の内部チェック機能が働かずに,役員としてとどまり続けることによって,教育の継続性等が困難になることがあり得ることから,このような場合には当該役員の解職を命ずることを可能とすることとされています。

また,この役員の解職命令と関連しまして,二つ目の丸ですけれども,役員として法令等を遵守し法人の利益を優先して行動すべきという,社会通念上当然の一般的規範があることを法令上に明確にし,これに対する重大な違反行為は法令違反として役員の解職命令の根拠の一つとなることを念頭に,いわゆる役員の忠実義務を規定することが適当とされております。

(4)の解散命令が避け難い場合に入学者の受入れ停止,あるいは円滑な転学のための措置等を命ずることを可能とすることも必要とされております。なお,これらの命令を行う際には,行政による権限濫用がないように留意することが必要であることから,このために私立学校関係者等によるチェックの仕組み,具体的には現行制度のように,国にあっては大学設置・学校法人審議会,都道府県にありましては私立学校審議会の命令についての事前の諮問,答申を前置することが適当とされております。

3.と4.のところで,学校が実質的に破綻した際の学生等の保護の方策及び今後の更なる私立学校教育の振興についても言及されております。

3枚目,参考資料2でございますけれども,私立学校に関する制度の概要ということで,現行制度では,上段にございますような学校法人に対する運営調査を行いまして,履行状況調査も含めた設置認可,それから認証評価と相まって,学校法人の運営指導を行っているところでございます。

この中で,法人運営が著しく適正を欠き,自主性に委ねた再生が困難な場合があって,それに対する任意の行政指導では,これまで申し上げたような課題が生じる場合があるということを示している図でございます。

最後,次の4ページ目,参考資料3,新しい制度的対応の流れ(イメージ)でございますけれども,先ほど申し上げました2.の考えられる新たな対応の在り方として,これまで御説明いたしました立入検査,一定の措置命令,役員に対する忠実義務,権限濫用の防止の仕組みが,この図の赤い部分ということでございます。今回の検証の結果,規定を整備することが必要という整理になったものにつきまして,イメージとして参考に付けさせていただいたものでございます。

内容については以上でございます。

【黒田委員】  説明ありがとうございます。学校法人は余り,この干渉を受けないということで所轄庁といいます。この所轄庁は,この法律を作るときに,私学人がかち取るのに相当苦労したということを聞いているわけですけれども,今,今日の状態を見ていますと,この改正もやむを得ないのではないかという感じを受けております。

私も実際にいろいろな大学を調査させていただいておるわけですが,幾ら調査しても,文部科学省として,それを,その大学に,このように直してくださいと言うだけで,その後は何も効果がない,一過性のものにすぎないということになってしまうわけです。ですから,その辺を,やはり,これだけ質保証を言われ,大学の経営についてもしっかり頑張ってくださいと言っている段階で,これぐらいのことは,各学校法人が守るべきだと私は思っております。そういう点で,こういう体制に至ったということはやむを得ないことだろうと思います。

あくまでも濫用されないように,大学設置・学校法人審議会の学校法人分科会の方でしっかりとチェックをしていくという,それが大前提になると思いますが,やはり私学の自主性,独立性を担保しながら運用できるように,是非ともお願いをしたいと思っています。

【清家委員】  今,黒田委員が言われたことも,私は大変大切だと思っております。是非,私学の自主性について最大限の配慮を図っていただきたいと同時に,もう一つ,それとの関係で,まず,それぞれの私学がこのような事態に陥らないためにも,また陥った場合に,その手続が妥当なものであるかどうか外部からチェックできるためにも,やはり情報の公開は非常に重要だと思っております。

今,私学については河田副部会長のおられる日本私立学校振興・共済事業団で,私学のしかるべき情報公開について,この充実を進めていただいているわけでございますが,これは最悪の状況でございますので,こういう状況に至る前に,何らかの措置が自主的にも,また周りからも講じることができるように情報の公開が進められると同時に,実際にこういうアクションが起こった場合,それが本当に妥当なものであったのかどうかを検証する,あるいはチェックするためにも適切な情報公開が行われるべきであって,その点について,また日本私立学校振興・共済事業団にも特段の御協力をお願いしたいと思っております。

【河田副分科会長】  参考資料2の上の方にあります日本私立学校振興・共済事業団ということで,我々としても,特に文部科学省の私学部参事官室などと協力しながら,助言,支援そして指導ということではいろいろなことをさせていただきました。

ですが,不幸なことに今,大学法人が557,短大法人が114,大学の数でいきますと4年制が606で,短大340ございますけど,その中には私学の名誉を損なうような学校法人が出現してきたということで非常に残念には思っておりますけれど,現行のような法律のものでは,きちんとした運営の改善の命令も出せない,学生の保護もできない。そのようなことでは困るということで,こういう制度を作っていただきました。今おっしゃいましたように,情報公開については,来年度からは情報公開の大学ポートレートも始まりますので,私学自身として,これを肝に銘じて,きちんとしていくように我々としても,指導と言ったらおこがましいですけれど,そういう姿勢でやらせていただきたいと思っております。

我々日本私立学校振興・共済事業団としては,この制度がきちんとできたことによって,私学はその独自性を,建学の精神を生かしながら,より良い形になっていってくれるものと,今のところ信じております。

【安西分科会長】  今,3名の委員の方々からも御意見がありましたけれども,やはり私立学校の自主性ということについては,ある意味,歴史的にも重視されてきた経緯もありますし,理念,また考え方,実践としてもそうあるべきだという御意見だと理解いたします。

学校法人制度に関する検討につきましては,大学設置・学校法人審議会で中心的に議論されてきておりますけれども,これも私の理解では,大学設置・学校法人審議会が,昔の私学審議会の流れをくんで,やはり私学の自主性を尊重しつつ,一方ではきちんと責任を持って私学の在り方を審議していくということだと理解しておりますので,今回の学校法人制度に関わる検討の整理につきましても,大学分科会といたしましては,できるだけ尊重していくということでよろしいでしょうか。

【樫谷委員】  資料3のいわゆる現在の制度の概要と新しい流れ,イメージ図とのところで若干質問があります。

制度の概要です。私立学校に関する制度の概要のところの上から3分の1ぐらいのところに,「法人運営が著しく適正を欠き,自主性に委ねた再生が困難」と,こういう書き方をしてあります。一方,新しいイメージの方は,一番上のところで,「教育の継続性,安定性に著しい懸念があり,教育環境が著しく悪化しているなど,重大な問題があると考えられる学校法人に対して立入検査」と,こう書いてあるのですが,このレベルというのでしょうか,それぞれ表現が違うので何とも言えないところがあると思います。このレベルをどう見たらいいのか,少し御説明いただきたいということと,それから,今,地方公共団体も,地方の自主性というのがあるわけです。自立性というのはあるわけですけれども,そこでも,夕張市のように財政が破綻してしまったところがあります。その中で,やはり,早期是正措置といいまして,できるだけ,破綻した後どうするかというよりも,破綻に追い込まない段階で早期是正措置を1段階,2段階と一つの指標を提示して,そして,その地方公共団体に提示をして,そして,それが守れない場合には,また次のステップに行くといったイメージになっています。

そうすると,やはり,企業の再生もそうですけど,ぎりぎりになってから発動しても,実は遅い場合がありますので,できるだけ早いといっても,これも自主性の問題があって,この発動のかげんというものが,多分ここの再生が困難というところと,この重大な問題があると考えられる学校法人に対して立入検査との判断にあっては,そこが非常に重要だと思いますので,これについて,なかなか回答は難しいと思うのですが,この文字の違いを教えていただけないでしょうか。

【新田私学経営支援企画室長】  お答えさせていただきます。まず今回の制度のお話ですので,これは異例な状況に陥った学校法人に対する措置ということで,先ほども申し上げました,いわゆる文部科学省あるいは日本私立学校振興・共済事業団等に対する任意の相談,あるいは指導等では,要は,らちが明かないといいますか,さらにひどい状況になったものに対して法的な措置を講ずる必要がある場合という最終手段について制度化するべきであるという御提言になってございます。

また,先ほど御質問いただきました,実際には調査あるいは命令等が発動される重大な問題をどう考えるのかということにつきましては,今後またさらに法制化の段階で詳細に,ほかの例も併せながら検討していくことになりますが,実際には,例えば運営に必要な資産の不足等から学校法人の継続性の確保が困難になるなどの法人運営に支障が生じている場合,あるいは役員の不適切な行為や理事会の機能不全などがある場合であって,このような問題があるときに,その実現可能性のある具体的な改善策や再建計画等が,法人によっては自主的には検討されない,あるいは所轄庁の指導,あるいは資料提供の依頼に対して真摯な対応がなされないといった場合について発動されるような制度設計になるだろうと思っております。詳細には,ほかの公益法人制度におけます法令の例がございますので,それも含めて検討させていただくということになろうかと思っております。

また先ほど,さらに二つ目の地方も併せてということがございました。今は,大学設置法人につきましては文部科学大臣の所管。同じことが幼・小・中・高,専門学校設置の法人につきましては都道府県知事の権限になりますので,この制度としては同じということでございます。

これと併せまして,3.のところです。本日,詳細な説明は省きましたけれども,実際に異例な状況ではないけれども経営が困難になった場合の法人への対処の仕方についても今後併せて検討が必要であるということについても提言されてございますので,これなども踏まえて私どもで受けとめさせていただきたいと思っております。

【樫谷委員】  慎重にやっていただきたいとは思うのですが,手後れにならないように,そこだけはよく留意していただきたいと思います。

【安西分科会長】  大変貴重な御意見を頂きましたけれども,学校法人分科会で検討,整理していただきました内容につきましては,やはり大変大事なことでございまして,文部科学省においても是非真摯に受けとめていただきたい。また,きょう頂いた御意見を含めてでございます。

今後のスケジュールにつきまして,文部科学省として,この報告を受けてどういう対応をお考えかということについては,現段階でのことでありますけれども,御説明いただいた方がいいかと思いますが,いかがでしょうか。

【小松私学部長】  いろいろと御意見をありがとうございます。今後の見通しということでございますけれども,私学行政そのものといたしましては,解散命令等を含みます最近の行政実態というものを考えますと,もちろん私学の自主性,あるいは学生の保護,幾つも重要な問題がございますので,そのための制度的整備は必要ということかなと全体を受けとめておりますけれども,内容的には,実際の審査に当たられた大学設置・学校法人設置審議会の学校法人分科会のこうしたお考え,あるいは本日の中央教育審議会での御意見等を踏まえた形になるようにしていかなければいけないと考えます。

そういたしますと,法改正を含む手順を考えなければいけないということになりますので,これから,こうした内容を踏まえて準備をしていきますと,その詰まりぐあいにもよりますけれども,ごく普通に考えますと,臨時国会とか通常国会とか,いろいろありますけれども,一番早い機会でしたら,例えば次の通常国会とか,そういったようなことを考えながら,必要な検討を行っていきたいと考えております。

今,いつということを,ここで直ちに申し上げられないのですけれども,普通に考えますと,今申し上げたようなスケジュールを念頭に置いて考えていくことと思いますので,よろしくお願い申し上げます。

【小畑委員】  簡単な質問というか,確認をしたいことが1点だけあります。

現行制度では私学振興助成法14条2項による計算書類の届出が,問題がありそうだという大学の把握ができる一つの手段になっているということです。この改正後は,教育の継続性だとか安定性に著しい懸念がある云々という重大な問題があると考えられる学校法人,これを検知するのは,現行の形と変わらないと考えてよろしいのでしょうか。何か新たに,より見つけやすいような,いろいろな制度改革が行われる予定でしょうか。

【新田私学経営支援企画室長】  今あります財務諸表の公開制度につきましては,振興助成法に基づく公開の規定,あるいは平成16年の改正のときに,私学法の方でも規定が整備されておりますので,財務諸表の公開の制度につきましては既に整備は終わっているということでございます。

ですので今回は,むしろ問題を認知した後の,ひどい状況にあるときに,何か対応をしなければいけないときの作用について御提言いただいた部分に限っているということでございます。

【小畑委員】  どうしようもない状況になるもう少し前で検知しようという発想はなかったということでよろしいですか。

【新田私学経営支援企画室長】  そこのところは,従来から今,先ほどの資料2の制度の概要のところで申し上げました,ふだんからの相談なり,あるいはいろいろな情報なりが入ってきての対応ということになっていますから。もちろん,そこの充実策はあるのですけれども,今回は,それで認知して,ひどいものを見つけた後の措置ということでの御検討ということでございます。

【小畑委員】  分かりました。

【安西分科会長】  それでは,この件はここまでにさせていただきます。私学の自主性を尊重していただきつつ,一方で私学側も,やはり責任を持って,情報公開等も含めて進めていくべきだと思います。よろしくお願い申し上げます。

(5)文部科学省から,高等教育局主要事項(平成26年度概算要求)について,資料4に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【浅田高等教育企画課長】  資料4の御説明をさせていただきます。

例年どおり8月末に高等教育局としての平成26年度概算要求を取りまとめ,文部科学省全体として財務省に提出しております。資料4では,1ページ目から7ページ目までが全体の概要をまとめたもの,そして8ページ目以降に,主な事業について一つずつ,少し詳しく説明した資料を付けています。ここでは1ページから7ページについて,そのポイントを御紹介させていただきます。

まず1ページ目にございますように,学びのセーフティネットの構築ということで,一つには大学等奨学金事業の充実。今回は,とりわけ無利子奨学金の大幅拡充,日本人学生の海外留学のための無利子奨学金制度の創設,そして,真に困窮していて返還が難しいという方に対する救済措置の充実などを主な内容としています。

もう一つが,国立大学・私立大学の授業料減免及びその支援に関するものです。御覧いただきますとおり,それぞれ一層の充実を図りたいと思っております。

2ページ目以降が「大学力」向上のための大学改革の推進等ということですが,まず2ページは,国立大学と国立高等専門学校の関係です。国立大学につきましては,基盤的経費である運営費交付金をしっかりと確保するということですが,資料にもございますとおり,国立大学の機能強化の推進等に必要な予算も盛り込んでいます。

国立高等専門学校につきましては,グローバルエンジニア育成経費ということで,諸外国からも注目されている高等専門学校の教育を生かした国際協力に関するものも計上しています。

3ページ目が私立大学改革等,私学の振興です。

まず,私立大学等の教育・研究活動を支援する基盤的経費である経常費補助の充実です。今年度の予算に続いて,私立大学等改革総合支援事業というスキームで,成長戦略,教育再生実行会議の第三次提言等でもグローバル化への対応等の新たな課題への対応の必要性などが提言されておりますので,そういったことも含めて積極的に取り組むところを支援するという内容を盛り込んでおります。

私立高等学校等経常費助成費等の補助についても,充実を図りたいと考えております。

4ページが私立学校の施設・設備の整備の推進,それから施設の災害復旧等です。耐震化の関係では,校舎等の耐震改築事業を新規に要求しているところです。

5ページが国公私立大学を通じた大学教育改革の支援に関するもので,御覧いただきますように様々なメニュー,項目を考えております。

例えば大学教育の充実と質の向上に関しては,これまでのGPのような取組を更に加速するための大学改革加速プログラムや,今年度開始し非常に反響の大きかった地(知)の拠点整備事業,COCと言われているものですが,これについても,各大学の意欲,取組を後押しするため,更に増やしたいと思っています。

それから,高度医療人材の養成と大学病院の機能強化,大学等でのキャリア教育の充実などの課題に対応するための予算も盛り込んでおります。

6ページ,7ページがグローバル人材の育成と大学の国際化に関するものです。

我が国の大学教育の国際化を推進するため,これも成長戦略や教育再生実行会議の第三次提言にも盛り込まれましたスーパーグローバル大学事業というものを新たに実施したいと考えております。より詳しい説明は33ページに付けております。

留学生交流につきましては,送り出し,受入れ,両方とも大事であり,東京でオリンピック・パラリンピックが開催される2020年までにいずれも倍増したいという目標を持っております。特に日本人の若者の海外留学を積極的に支援したいということで,日本人学生の海外留学を支援するための官民が協力した新しい仕組みを作りたいということを考えております。それを含め,送り出し,受入れ,それぞれについて一層の充実を図るための予算を計上しております。

7ページの一番最後にございますように,局全体としては,対前年度比で1,548億円,率にして8.7パーセント%増の予算要求としております。今後,年末に向けて,財務省への説明,折衝等を重ねることになりますが,高等教育の充実強化のために必要な予算の確保に努力したいと思っております。

以上でございます。

【美馬委員】  質問です。きょうのこの会議の冒頭で御報告させていただいた大学教育における質的転換の必要性で,アクティブ・ラーニングとか,ICT利用とか,そういったことが出てきていると思うのですが,それに対応するような予算について,今回の予算要求の枠組みの,きょう御紹介いただいた中には入っているのでしょうか。

【浅田高等教育企画課長】  例えば3ページからの私立大学に関する予算では,私立大学等改革総合支援事業の中でも教育の質的転換等々の重要な課題に積極的に取り組むところを支援することとしています。国立大学法人運営費交付金などの中でも,そういった大学教育の基盤となる部分をしっかり見ていきたいと思っております。

【美馬委員】  いつも,そういう中で公立大学が消えてしまっているのですが,今のは私学と国立に対しての御説明です。公立大学に対しては何かあるのでしょうか。

【浅田高等教育企画課長】  国の予算で公立大学を対象とするものとしては,5ページの国公私立大学を通じた大学教育改革の支援がございます。その中で,大学改革加速プログラム等の中で,そういったことに対応していけるのではないかと思っています。

【美馬委員】  ありがとうございました。

【河田副分科会長】  今,公立の話も出ましたけれど,国公私を通じた大学教育改革の支援というのが今回,352億円入っておりますけれど,今年の8月9日に明治大学で,大学支援の,「大学教育の未来を探る~大学改革支援プログラム(GP)の検証と展望~」という大学改革フォーラムを開かせていただきました。板東文部科学審議官にも来ていただいて,御挨拶いただいております。1日間のフォーラムでしたけれど,当日は非常に盛り上がり,国公私の大学関係者が900人余り集まって,六つの部会に分かれて,大学が変わるためにGPが大きな役割を果たしたという議論でどの会場も大変な熱気がございましたが,この資料で言うならば,どこにそのことが反映されているのでしょうか。GPという言葉をそのまま使うことは難しいと思いますが,どういう形で反映されているのかを,少しお教えいただければと思います。

【里見大学振興課長】  大学振興課長でございます。先ほど来,大変に国公私を通じた改革に対する先生方の思いを伺っておりまして,私もその思いを受けとめさせていただいて,この大学改革加速プログラム,名前は今,通称AP,アクセラレーション・プログラムと呼んでおりますけれども,このような中で,今度,教育再生実行会議の中から様々いろいろな御提言いただいているものも踏まえて,新しい取組をしていただける,そして今までのGPで培った実績を更に加速していただけるところに,このような形で御支援をさせていただきたいと考えておりますので,是非,御支援をよろしくお願いいたしたいと思います。

【河田副分科会長】  ということは,GPはAPに変わったと御説明させていただいていいのですね。

【白井委員】  ここで私が申し上げるのも,気が引けるのですが,放送大学という組織は,これは国公私に入るのか,入らないのか,よく分かりません。例えば,非常に関係深い社会人の学び直しの大学院プログラムのところに,そういうことも書かれています。放送大学としても極めて関心があるのですが,一応,同じような学士課程,あるいは修士,大学院課程というものが同じ設置基準で認められている大学として,是非こういうところに一緒に参加させていただけるようにしていただきたいという希望と,そうすべきだというような主張です。

【浦野委員】  質問ですが,5ページの一番下の方に,大学等におけるキャリア教育の充実ということで,新規に4億円という形があるわけですけれども,この中でうたわれている地域におけるキャリア教育・就職支援体制整備事業ということで,具体的に13か所という数字も出ていますけれども,少し内容を御説明いただければと思います。

というのは,このインターンシップそのものが,従来の流れの中でいうと,必ずしも就職につながらない,あるいは極論を言うと,つながってはいけないといった考え方も今までありました。そういう中で,このキャリア教育,インターンシップということの考え方が大きく変わっているのかどうか。あるいは,支援対象が13か所というのは,厚生労働省との兼ね合いはどうなのか。その辺も,少し教えていただければと思います。

【浅田高等教育企画課長】  御指摘があったのは資料の32ページにこの事業の説明がございます。内容としては,全国の中小企業等を活用したキャリア教育が大学等で充実されるように,多様なインターンシップの導入を図るとともに,それぞれの地域においてインターンシップ等のマッチングとか企業開拓,インターンシップをコーディネートする人材の育成等を実施する体制の構築を考えています。また,そうしたそれぞれの地域を統括する組織を設け,文部科学省と関係する省庁とで連携しながら,それぞれの地域の支援を行うこととしています。このように,主には各地域での体制整備を内容とする事業として考えています。

【浦野委員】  そうすると,インターンシップそのものは,今後は就職に向けてというか,社会との接続という中で積極的に活用していくということでしょうか。今までインターンシップは,単に独立していて,就職活動とつながってはいけないといったことがあったのですが,その辺の考え方が変わったということでよろしいのでしょうか。

【浅田高等教育企画課長】  インターンシップについて直接の担当課が来ておりませんので,御質問の点については機会を改めてお答えさせていただきます。インターンシップの意義自体は非常に重要だと考えており,いろいろなところで提言もされておりますし,より積極的に各大学で取り組んでいただけるよう支援する体制を作っていきたいと思っております。

【佐々木委員】  一昨日資料をお送りいただいてざっと見ただけですので,検討違いのことを申すかもしれませんが,大学教育部会の部会長として一つ申し上げます。昨年8月に答申を出しました。その答申に沿って大学改革を進めるようにと号令を発しました。部会として,あるいはこの大学分科会としても,答申で提言したことが,どこまで現実化していくか,政策化されていくかということをきちんと見届けるのが務めだと思っています。

ところが,今回この概算要求案をざっと見ましたところ,例えば「主体的な学びを通して学ぶ力を学び取る」という提言の趣旨が,さてどこに出ているのだろうかという印象です。

先ほど美馬委員からお話がありましたが,昨年の答申には,御指摘のような主体的な学びのための空間を整備しようということも述べております。そうであれば,そこにフォーカスした予算の要求,概算要求というのがもう少し色濃く出てきてもいいのではないかと思います。

中央教育審議会の答申は言いっ放しというのでは,どうもぐあいが悪いと考えます。現在,組織運営部会で検討されている教学に関わるガバナンスの改革も含めて,答申の提言を前へ進めるための概算要求を是非お考えいただきたい,この中に何とか工夫して盛り込んでいただきたいという思いがいたします。以上です。

【板東文部科学審議官】  担当局課からの御説明に加えて,私からも少し補足させていただきたいと思いますけれども,実は昨年,答申が出ましてから,主体的な学びを支えていくような学習環境を整備していきましょうということを既に盛り込んだ形で平成25年度の予算についても概算要求をしておりまして,先ほど課長の方から説明がございましたように,私学助成の中でも,経常費だけではなくて,施設・設備なども併せて,トータルで改革を推進できるようにという予算の取組をしておりますし,国立大学の運営費交付金の中にも,そういったことを支援しようということで盛り込んでおり,全体といたしましては,既に今年度予算の中から盛り込みつつ,それを更に充実をさせていこうという流れの中にあるということでございます。

一つ,何か予算として立てるべきだという御意見もあるかと思いますけど,むしろ,かなり広範,一般的に充実をさせていく流れの中で,こういった取組を,こういう形でさせていただいているということかと思います。

【小松私学部長】  失礼いたします。ただいまの美馬委員,あるいは佐々木委員の御指摘の点ですけれども,補足として申し上げますと,私大に対する補助,あるいは国立,公立については補助の仕組みが違いまして,少し表現方法が違うのですが,大学の8割を私学が占めておりますので,その大勢を占めるところの関係で,どのように反映しているのかを申し上げますと,資料の3ページから4ページに私学の関係の説明がございます。

それで,3ページの冒頭に私立大学経常費補助とありますけど,これは教育・研究をする上で必要な,いわば人件費の補助でございます。この中に,下線を引いてあるところで,私立大学等改革総合支援事業と書いてあって,これ,下記の一般補助及び特別補助の内数となっております。私学助成は一般補助と特別補助から成り立っておりますが,この中の一定部分は,ここの改革を,学長先生を中心に引っ張っていくというときのために特別に取り置いております。

この説明の一番頭に「教育の質的転換」と書いてあります。もう少し字数が許されれば,まさしく,アクティブ・ラーニングとか,そういう文言を全て入れて書きたいのですけれども,どうしても字数の制約がありまして,質の転換と書いてあります。

次のページをめくっていただきますと,4ページ目に私立学校施設・設備の整備の推進とありまして,こちらは人件費などの教育・研究活動ではなくてハード環境です。例えばラーニングコモンズといったものを作ろうというときの予算ですけど,これも下線を引いているところを見ていただきますと,先ほどと全く同じ文言,私立大学改革総合支援事業,下記の教育・研究装置の整備の内数と書いてあって,ここでも取り置きがしてあります。

このようにして,ソフトからハードまでセットで予算事業が違うものを横断して取り置きをいたしまして,今の学びの質の転換,去年の8月の答申等に取り組まれるようなものにつきまして,全学で取り組んでいることがしっかり確認できるものについては,ソフト,ハードをセットで優先採択をするという形にいたしております。

国立ですとミッションの再定義とか,それから公立を含めたものとしてのアクセラレーション・プログラム。これは大学教育の中身の充実ということです。そういう意味では,分かれておりますが,それなりには去年の,今,板東文部科学審議官からありましたように,作りましたものを充実する,あるいは更新するという形をとっております。

それで,確かに御指摘のとおり,こういう作りにしますと,どこに入っているのか分からないので,趣旨が分かりにくいと,きちんと使われないではないかという御指摘はごもっともと思いました。例えば,このアプローチ,このアングルから見たら,こういうものがあるのだから,それをしっかり活用するようにという理解をしていただきやすいような形で進めることが必要だと思いました。ありがとうございます。

【安西分科会長】  今の件は,重ねてですけれども,大学教育部会の佐々木部会長をはじめとする先生方,委員の方々が相当努力をされて,この分科会でも相当議論がなされて作られた答申が,私の理解でも,やはり昨年の秋以降,薄まっていると言うと申し訳ないのですけど,言葉としては継続されているかどうかということは多少気になっておりまして,そのことは是非もう一度,文部科学省側でも十分捉えていただければ有り難いと思います。

【板東文部科学審議官】  昨年答申で頂きました方向は,その後も教育再生実行会議の第三次提言の中でも質的転換の問題を重ねて強調しており,それを答申を踏まえたような形の柱として出ておりますので,そういうことで説明をさせていただく中で必ず,その教育の質的転換の問題,主体的な学びの問題というのを,グローバル人材の育成などにおいても柱としながら様々な場で説明されているということで,文部科学省としても,必ず説明していっておりますので,薄まっているというより,むしろ,いろいろなところからも応援をしていただきながら強化,広げていきたいと思っているところでございます。

【田中高等教育政策室長】  この答申の関係につきまして,第7期大学分科会の初回でございます今年の4月4日の大学分科会におきましては,答申の進捗状況ということにつきまして,答申と併せて説明をさせていただいておりまして,その際に答申の指摘事項と,それから当時,平成25年度の予算の結果でございますが,どういう予算を付けているかというものを一覧にさせていただいたところでございます。

今後も,その答申の取組状況ということにつきましては,こういった対応関係を明確にした資料などを整理させていただきまして,今後,この会議におきましても引き続き御紹介をさせていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

【金子委員】  今の件ですけれども,私,あえて申し上げませんでした。文部科学省の御苦労はよく分かりますが,今いろいろな御意見で明らかなのは,この審議会で高等教育の質的転換を行うのは非常に重要だということを言っていた割には,それが予算の中に,余り明確に出てはいないのではないかという一般的な印象があるということだろうと思います。

ただ私,これには無理からぬところは多少あるのはあると思うのですが,それはなぜかというと,やはり高等教育の質的転換は,個別大学が本来,自主的に行うべきところでありますから,この国の予算一本で,何か打ち出すという性質のものでは本来はないというところであることは事実だろうと思います。

GPなどは非常に良い例ですけれども,これ,個別に見ると物すごく小さなものでありまして,数百件,あるいは1,000件も超えているでしょうか。ですので,GPと一言で言っても何をやっているか,よく分かりません。ですから,予算上も余り効果が見えないし,説得力も,したがって見えにくいところがあるというのは,やはり,かなり基本的に大きな制約があるということは事実だろうと思います。

ただ,それにもかかわらず何か,やはり,こういった非常に重要な課題を行う,しかも,そのままでは,なかなか起こり得ないことをスピード感を持って達成するためには何ができるのかということは大きな課題であるわけだと思います。

例えば私,この前にアクションプランの中では,大学改革機構とか,大学改革支援機構とかという組織を作ったらどうかと思うのです。そこで様々な改革の予算を選定したり,あるいは,特に効果を測定して,それを次の予算に結びつけていくような機能を果たしたらどうかということは一時的に議論されていたと思うのですが,多分,この新しい組織を作るというのは,現在の政府の下では非常に難しいので,もう落ちてしまったのではないかと思いますけれども,しかし,私はやはり,そういった機能が必要だろうと思います。

特定の機関を作ることはできないにしても,あるいは文部科学省の中で,そういう機能をかなり強力に作るということをするか,あるいは一定の団体で,そういったことをするのかといいますか。個別の大学にイニシアチブを持たせつつも,それを非常に速いスピードで行っていくための刺激をどのようにしていくのかということを,まとめて何か一つのプログラムとして表す,実行していく仕組みが必要なのではないかと思います。

以上です。

【樫谷委員】  確認なのですが,このペーパーの5ページと31ページのところで,大学病院の機能強化なり,あるいは体制強化と書いてあるのですが,最近の新聞で,直接そういうところに来るところは初診料を1万円にするとかと書いてあって,少しハードルを高くするということですけれども,それも機能強化の一環であるのかどうなのかということがまず一つと,それから安全確保とか質の向上を図るということは,やはり量の確保もしないといけないと思います。量の確保の議論がない場合に,この大学病院のベッド数の拡充とか,そういうことは考えられるのかどうなのか,その辺についてお聞きしたい。

大学病院については,国立については借り入れもできますし,量の確保も比較的簡単とは言いませんが,可能なのかと思いますが,その辺はどうでしょうか。ここでいう機能強化と体制強化という意味は,どういう意味なのかについて教えていただきたい。

【浅田高等教育企画課長】  それにつきましては,本日担当課が出席しておりませんので,別途御説明させていただきます。

【安西分科会長】  それでは,この概算要求の件は,ここまでにさせていただきます。ありがとうございました。大変貴重な御意見を頂いたと思います。

(6)文部科学省から,法曹養成制度に関する審議経過と今後の予定について,資料5-1~5-3に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【今井専門職大学院室長】  資料5-1に基づきまして御説明させていただきたいと存じます。

資料にございますように,現在政府におきまして法曹養成制度に関する審議が進められているところでございまして,今,一定の結論が出てきたところでございます。

資料にございますように,昨年の8月に関係閣僚で構成される「法曹養成制度関係閣僚会議」及び有識者等で構成されます「法曹養成制度検討会議」が設置されました。その後,精力的に御議論が行われたところでございまして,本年の4月に中間的な取りまとめが一旦まとめられまして,法曹有資格者の活動領域,法曹人口の在り方,それから法科大学院・司法試験・司法修習,継続教育といったあたりについての一定の考え方をまとめ,パブリックコメントが実施されました。

また,その結果を踏まえまして,最終的に集中的な審議が行われまして,本年6月に最終取りまとめが検討会議としてまとめられたところでございます。

そして,その検討会議での最終取りまとめを踏まえまして,本年7月16日でございますが,法曹養成制度関係閣僚会議におきまして,「法曹養成制度改革の推進について」という決定が行われたところでございます。

大変恐縮ですが,1枚おめくりいただけたらと存じます。資料5-2でございます。本年7月に決定されました法曹養成制度改革の推進についての概要でございます。

一番左側の項目で大きく3点ございました。法曹有資格者の活動領域の在り方,今後の法曹人口の在り方,そして法曹養成制度の在り方でございます。

この法曹養成制度の在り方につきましては,大きく4点ございますが,文部科学省といたしましては,上から二つ目の法科大学院について様々指摘を頂いたところでございます。

この法科大学院につきましては,ポイントといたしましては量の問題,それから質の問題について,それぞれ対応していくということでございます。

さらに,この中央教育審議会におきましても是非御議論をしていただきながら改革に邁進していくべき点が二つございまして,一つは通し番号第4の2の(1)と書かれているところの担当,文部科学省と書かれている一番上でございます。中央教育審議会の審議,これを速やかに開始していただくということを前提に,まずは量の問題でございますが,公的支援の見直しの強化策など,入学定員の削減方策を検討し,その結論を得る。そして,素早く実行に移していただきたいということでございました。

また,通し番号(3)番の文部科学省,上にございますが,中央教育審議会の審議を速やかに開始をしていただいて,共通到達度確認試験(仮称)でございますが,この導入に向けて基本設計・実施を検討していただきたいということで決定がなされているところでございます。

先ほど中央教育審議会法科大学院特別委員会の検討状況については御説明したとおりでございますが,こういった政府全体の指摘を踏まえながら中央教育審議会法科大学院特別委員会でも,その審議を進めているところ,加速させていただいているところでございます。

もう一度もとの資料に戻っていただきまして,そういった政府の決定を踏まえまして,大きくは取り組むべき改善方策,これが決定をされておりますので,関係機関において,その取組を進めること。

また,この検討会議,閣僚会議の中では引き続き検討すべきとされた課題がございます。そういった課題につきましては,内閣におきまして新たに検討体制を設置し,2年以内を目途に検討,そして結論を得るということが決定されているところでございます。

以上,政府の状況でございますが,今後の予定といたしましては,この閣僚会議の決定を踏まえまして,現在準備が進められておりますが,今月中を目途に,その新たな検討体制が内閣の下に設置され,検討が開始される予定というところでございます。

以上,御報告を終わらせていただきます。

(7)文部科学省から,「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」及び「戦略的な留学生交流の推進に関する検討会」の検討状況等について,資料6及び7に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【渡辺学生・留学生課長】  学生・留学生課長の渡辺です。よろしくお願いします。

お手元の資料6及び7に基づきまして,学生支援の検討状況,それから留学生の受入れに関する検討状況につきまして御報告いたします。

まず資料6でございますが,これは学生支援に関する検討であります。具体的に申し上げますと,大部分は奨学金に関する議論でありますが,まず,この検討会は今年の4月に発足し,局長の下で議論を行ってまいりました。

まずは,現在学生が置かれている現状について分析いたしまして,これはもちろん在学生の状況でいいますと家計費収入の減,一方で授業料が上昇しているという状況の下で,いかにして学生がきちんと高等教育を受けることができるかということについての現状分析です。

それが具体的には,どういう形で支援ができているかと申しますと,下の左側でありますが,貸与型の支援,それから給付型の支援というものがございます。

こうした中で,これまでにも有利子奨学金の拡大によりまして貸与規模を大幅拡充するということを貸与で行っておりますし,返還の段階でも,真に返還できない経済状態にある方々の存在がある中で,その対応を行ってまいっております。

それから,給付的な支援といたしましては,国による授業料減免等を行ってまいりました。

他方で,本当の給付型の奨学金というのは,高等教育の段階では,財源等の問題から,現在は導入されてはおりませんが,他方でも世帯年収が進路選択とも一定の相関があるということ,それから国際的に見ても給付型奨学金のない国はないということ等も含めまして,今後の検討課題として,まずは現状を分析いたしております。

こうした中で,来年度に向けて,中間的な段階でのものでありますが,改善・充実を図るための考えとしまして,まずは貸与型の支援としまして,無利子枠の拡充。これは現在,約7割以上が有利子奨学金という形になっておりますけれども,少しでも有利子ではなくて無利子の奨学金の枠を増やしていくべきではないか。それから,社会人の学び直しのための奨学金の制度も充実すべきではないか。

あるいは返還の段階におきましては,借りたものは返還をするということは原則でありますけれども,返還者の経済状況に応じました柔軟な返還方式を,より工夫すべきではないか。あるいは,延滞金についても見直しを行うべきではないか。それから,卒業後の所得に応じた返済方式をきちんと検討すべきでないか。

さらには,将来的な給付型の支援につきましても検討を行っておりますけれども,引き続きは学資の本質部分であります授業料の減免等について充実をすべきであるということ。

それから,実際,本当の給付型ということに関しましては,目的やターゲット層に応じた経済的支援の改善・充実といったことについても具体的に検討すべきであるということで御提言いただいておりますけれども,給付的な支援として,まずは真に経済的に困難な方々に対する給付的な支援を給付的な観点からも検討すべきであるということです。

さらには,在学中の業績などに応じた返還免除の枠組みについても,現在は大学院生に対して行っていますけれども,学部段階への拡大,あるいは社会的要請に応える人材の拡大を検討すべきであるという御提言を頂いております。

今回,中間まとめという形でまとめて,具体的な形で予算要求に盛り込んでおりますけれども,この検討会につきましては,さらに,この秋以降も詳細な検討を行ってまいります。

そうした中で,学生の学びを社会全体で支える必要性についての検討を深めること,それから高等教育の無償化に向けた漸進的な方向性を目指すこと,さらには子供の貧困対策という観点から,より効果的な学生支援の在り方,こういったことについても今後検討を進めてまいる予定でございます。

それから,もう一つは資料7でございますが,留学生の受入れに関する検討でございます。こちらも,これまで留学生の受入れは我が国として行ってきたわけでありますけれども,より受け入れるべき国,地域,あるいは留学生を受け入れる分野を明確にして,そのほかの様々な,現在我が国が置かれている情勢を踏まえながら留学生を受け入れるべきではないか,そのためにはどうすべきかということについて検討を行っております。これも本年3月から検討を開始し,今回,中間的なまとめをいたしました。

背景等につきましては1.に書いているとおり,あるいは今御説明したとおりでありますけれども,諸外国の成長を我が国に取り込み,我が国の更なる発展を図るために,重点地域を設定し,そうした中で外国人留学生受入れに係る戦略を策定する必要があるという考えの下で,3.にありますように,外国人留学生受入れ施策の成果が特に期待できる分野を設定いたしました。これは工学,医療,法学,農学,こうした分野についてです。さらには,こうした分野の留学生を受け入れる上で有効と考えられる,今後,日本との関係でも非常に重要な役割を持つと考えられる地域。これは,少し多いですが,ASEANから米国まで地域を選んでおりますが,こうした地域にある程度重点を置きながら留学生を受け入れるべきではないかという御議論を頂きました。

こうした具体的な方策を実際にどういう形で政策として取り組んでいくのかというのが4.でございますけれども,戦略的な外国人留学生受入れのための留学コーディネーターを海外に配置をする。あるいは国費留学生制度の拡充と,こうした戦略的な受入れを行う国,分野についての受入れ枠を設定するということ。こうしたこと等を行いながら,留学生政策についても戦略的に行っていきたいと考えています。

今御説明申し上げました学生支援,それから留学に関する事項につきましては,先ほど御紹介いたしました来年の概算要求に盛り込んでいるところでございます。

以上でございます。

【美馬委員】  コメントです。外国人留学生の積極的受入れ戦略についてですが,もう少し,戦略というからには,長期的視野で臨む必要があると思います。

1ページ目の中間まとめの中では,2.戦略策定に当たっての主な視点の,一番最後の○にあります,これまで国費を投じて育成した外国人留学生の活用というところに当たると思うのですが,その後ろの資料です。中間まとめの資料ですと,14ページの一番下から15ページにあります。「我が国において学修した外国人留学生は,日本にとっての大きな資産であり」というところです。ここで,この外国人の方々が日本で就職を希望していることが多いといったときに,この長期的な視野で,これを戦略として捉えるならば,ここで外国人の人たちが留学した後に,もっと働きやすいような,日本に残れるような環境を積極的に作り出していく必要があると思います。特に日本は少子化に向かっていますので。

ですので,ここにある,例えば我が国の大学等を紹介する留学フェアや日本企業が海外の参加を促すとか,これは余りにも稚拙な案のような気がします。例えば研究機関や大学などで積極的にそういう人たちを登用していくなどの戦略を今後,是非考えていただきたいと思います。

以上です。

【金子委員】  学生の経済的支援の在り方についてですが,ここに書いておられることは大変よく分かりますし,努力されたことは分かりますが,ある意味では,これまでもずっと言われてきたことです。

ただ私は,既に去年の段階で,教育振興計画自体に大変強調されているのは,所得連動型といいますか,返済能力に応じた返済方法を考えるということはかなり明確に述べられていて,それは当然,国民背番号制といいますか,納税者番号のようなことを伴いますので,簡単にはいかないことは分かりますが,それについてはかなり強く言っていると私は覚えているのですが,これを見ますと,まだ検討するとかそういった段階で,余り強くは言われていないわけで,どこのところに行くのか,方向性が明確ではないように思います。

私は,教育振興基本計画では,むしろ,できる限りは,所得や将来のリスクにかかわらず借りることができるようにすることが重要であると方向付けていたように思うので,そこのところは,もう1回認識していただければと思います。

【勝委員】  手短に申し上げたいと思います。資料7の諸外国の成長を取り込むための外国人留学生の受入れ戦略の内容としては,これで非常に評価したいと思うのですが,先日,実は日本経済新聞と本学の共済で,ASEANの日本語の教員の方を招いて,留学生の出口戦略について議論したのですが,そのときに企業の方がおっしゃるのは,やはり今,外国人の留学生を,ある10パーセント%なら10パーセント%という比率で採りたいということです。ただ,この場合に,やはり日本語能力は非常に重要になってくるということで,中国,韓国の留学生は日本語学校で勉強して,そのまま日本で大学に入るという形で,それが8割を占めているのですが,今回,大きな転換としては,新興国の学生を受け入れるということです。もちろん英語コースは非常に重要であるわけですけれども,それらの渡日前の学生も,やはり日本語ができる形での環境に,そういった制度,仕組みを作っていくことは非常に重要で,その場合,国際交流基金が海外での日本語教育で非常に大きく役割を担っているということを考えますと,JASSOももちろんそうですけれども,そういった国際交流基金とも連携しながら,広い意味で出口,特に企業との接続という部分を意識した,そういった構造的なものを考えていくべきではないかと考えております。

【北城委員】  留学生の受入れの件で,資料に書いてあるのかもしれないのですが,留学生の生活支援として,もっと留学生と日本人学生が寮で住むような環境を整備しておかないといけないと思います。大学外に住むのでは,余り日本の学生との交流が進みません。寮の整備を推進していかないと,日本に留学しても,住宅がうまく見つからない。外のアパートを借りようとしても,なかなか留学生を受け入れてくれないということがあります。

ただ,留学生だけの寮を造るべきでもないので,日本人学生と留学生が一緒に住むような寮を推進していった方がいいと思います。

【安西分科会長】  どの意見も,それぞれ当然といいましょうか,貴重な御意見だと思いますので,やはり各検討会等には,大学分科会でこういう意見が出たということはお伝えいただけると有り難いと思います。よろしくお願いします。

(8)文部科学省から,専修学校の質保証・向上について,資料8及び資料9に基づき説明があった。

【圓入専修学校教育振興室長】  生涯学習政策局から御説明させていただきたいと思います。資料8と9,それから机上配付といたしまして,薄いオレンジ色の冊子「専修学校における学校評価のガイドライン」を配付させていただいておりますので,こちらに沿って御説明させていただきたいと思います。

専修学校の学校評価のガイドラインの1ページ表紙をおめくりいただきまして,その次のページを御覧いただければと思います。これまでの経緯と学校評価のガイドラインの概要でございますけれども,専修学校につきましては,平成19年の学校教育法の改正のときに,他の学校種と同じように自己評価の義務化,それから学校関係者評価の努力義務化ということになっております。その後,中央教育審議会のキャリア教育・職業教育の答申におきましても,なかなか専修学校,今2,800校がございますけれども,様々な質保証の状況ということで,取組が後れているという御指摘を頂きまして,その後,調査研究を重ねてまいりまして,このたび25年3月に有識者会議の調査研究協力者会議におきまして提言をおまとめいただいたところでございます。

そのガイドラインの概要が下の方に書いてございます。もともと専修学校の制度につきましては,これは専門学校もそうでございますけれども,小学校から高校の制度に準じたものになっております。ですので,自己評価の義務,それから学校関係者評価というものがございまして,これは自己評価を基に,いわゆる学校の関係者──ここでの定義では,例えば卒業生,関係業界,企業の方々,それから接続の関係のある中学校や高校,地域住民の方と並んでおりますけれども,そういった方々から客観的に評価をしていただいて,質保証に努めるというような仕組みでございます。

そのような形で,実践的な職業教育を念頭に質保証を図っていくということで,このガイドラインには,後段の方を御覧いただければと思いますけれども,評価項目・指標例を挙げさせていただいておりますが,専門学校におきましては,学んだことが卒業後に職業に直結するという特徴がございますので,職業との関連での項目を掲げさせていただいております。

このような形で質保証・向上に努めていくということを少し進めさせていただければと思っておりますが,これに加えまして,資料8を御覧いただければと思います。職業実践専門課程についてということでございます。

こちらの質保証・向上に関する調査研究協力者会議におきまして続けて御審議いただきまして,このたび制度として公布・施行されているものでございます。こちらの経緯を御覧いただければと思いますが,平成23年1月の「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」答申というところにおきまして,高等教育段階における実践的な職業教育の充実という観点から,この際提言いただきましたのは,今後の検討といたしまして,新たな学校種の制度創設という方策とともに,既存の高等教育機関において新たな枠組みの趣旨を生かしていく方策も検討するということが御指摘いただいておりました。

その後,調査研究を重ねまして,この協力者会議におきまして提言を頂いております。その内容でございますけれども,平成25年3月の囲みのところを御覧いただければと思いますが,平成23年1月の答申を受けまして,既存の高等教育機関において「新たな枠組み」の趣旨を生かしていく方策といたしまして,専修学校の専門課程におきまして,先導的試行として,企業,業界団体の方々との密接な連携によりまして,最新の実務に関する知識や技術が修得できるような教育課程を編成するということ,それから質の確保に組織的に取り組んでいるような専門課程につきまして,文部科学大臣が認定して奨励するという仕組みとさせていただいております。

これが,今年8月30日でございますが,制度といたしまして告示を公布・施行いたしまして,早ければ来年度4月から,この課程がスタートするという状況でございます。

その認定要件につきましては,後段の方を御覧いただければと思いますが,六つの要件を並べております。

こちらにつきましては次のページをおめくりいただきますと告示の内容がございますけれども,3ページ目以降に,そのイメージとして,既にこのような形で取り組んでいるような事例を御紹介させていただいております。

例えば3ページの後段でございますが,企業や業界団体の方々に御参画いただきながら,教育課程の編成,この改善を工夫を行うところでの御意見を頂くような委員会を設置いたしまして,それを組織的に改善に生かしていくというような絵を描いております。このような形のものを外形的に資料等を提出いただきまして,こちらの方で審査をさせていただくような形をとっておりますが,ポイントといたしましては,どの認定基準におきましても企業,業界との連携ということでの基準を設けさせていただいております。

今後の課題といたしましては,教員の方々の資質向上,それから産業界の方々が関与される,例えば第三者評価の在り方,それから国際通用性ということで,アジア諸国等における職業教育の在り方を御指摘を頂いておりました。

なお,来年度以降につきましては,認定校を中心といたしまして,この制度についての検証作業に入らせていただきまして,引き続き改善を図っていくということとさせていただいております。

以上が専修学校の専門学校の質保証に関する御報告でございまして,御参考までに資料9を御報告させていただければと思います。成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業という資料でございますが,こちらにつきましては平成23年度からスタートしておりまして,生涯学習の観点から,例えば社会人の学び直しということ,それから成長分野において新たに必要となる知識・技術等を産業界の方々,福祉の方々と一緒に作っていくというようなスキームになっております。

これは今年から国公私の大学や短大が代表校となって受託していただいている分野でございますので,社会人の学び直しにつきましては,中核的専門人材ということでございますけれども,今後,御意見等を頂ければと思っております。

御報告は以上でございます。

【安西分科会長】  何か御質問,御意見ありますでしょうか。よろしいですか。

それでは,本日の議事はこれまでにさせていただきます。大変貴重な御意見を頂きまして,ありがとうございました。また,学校法人分科会の日髙会長には,御多忙のところをいらしていただきまして,ありがとうございました。

それでは,これで終了とさせていただきます。

── 了 ──

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