東北への大学医学部新設 地域医療貢献度が焦点 『河北新報』 2013年10月26日付

『河北新報』 2013年10月26日付

東北への大学医学部新設 地域医療貢献度が焦点

政府が検討に着手した東北への大学医学部新設をめぐり、東北ではこれまでに財団法人厚生会仙台厚生病院と東北薬科大(いずれも仙台市青葉区)が設置構想を明らかにした。新設は1校に限られ、どちらが運営主体に選ばれるかが焦点となる。東日本大震災で疲弊が増す地域医療への貢献度も重要な判断基準になるとみられる。両構想のポイントを整理し、展望を探る。(報道部・菊池春子)

<医師不足対策>

各構想の要点は表の通り。東北福祉大(青葉区)を連携先とする厚生病院は医師不足対策として定員の3割を奨学生で受け入れ、卒業後は指定病院への7年間勤務を義務付ける案を作った。

奨学生は全国から募集し、東北出身者を優先する。奨学金の返還は勤務先の自治体などが肩代わりする。希望に応じ他の学生にも学資を貸与し、東北の任意の病院での勤務7年間を義務化する。

奨学金受給者は3人一組で指定病院に派遣する。厚生会の目黒泰一郎理事長は「孤立を防ぎ、交代で休める体制が築ける」とメリットを挙げる。

薬科大は10人程度の地域枠を設け、東北の各高校からの推薦で選抜。指定病院への9年間の勤務を義務とし、成績上位者の学費減免も検討する。

地域枠とは別に、希望する学生には必要な学資を貸与する。貸与した年数の2倍の期間、医師派遣を希望する東北の病院での勤務を義務付ける。

高柳元明理事長は「意欲にあふれる東北出身者を入学させ、地域に定着する医師として育てたい」と言う。地域枠の拡大も検討していく。

<教員の確保策>

指導教員の確保も焦点だ。日本医師会などは「地域医療の現場から働き盛りの勤務医が引き抜かれ、医師不足が加速しかねない」と懸念する。

厚生病院は、総合臨床医育成の先進地米国で活躍する日本人医師ら国内外から人材を集める考え。目黒理事長は「米国並みの厳しい教育を受けた総合医こそ東北で即戦力になる。国際的視野で教員を確保する」と語る。

薬科大は、東北大を含む全国の大学から教員を集める方針。旧東北厚生年金病院(宮城野区)を取得し、今年4月開設した付属病院には「臨床系の教授にふさわしい医師も多くいる」(高柳理事長)。薬剤師養成の実績を生かしチーム医療を担う総合医育成を目指す。

<専門家の見方>

1979年以来となる医学部新設はどんな手続きで進むのか。東北への設置は復興支援の特例措置となり、文部科学省医学教育課は「従来の設置基準や手続きとは別に考えねばならない」と説明。「被災地の地域医療や復興に長期的に寄与できるかが重要だ。地元自治体や厚生労働省、復興庁などと協議して進める必要がある」と話す。

地域医療に詳しい伊関友伸城西大教授(行政学)は「医学部をつくって終わりではなく、地域に定着する総合医をいかに数多く育てるかが大前提となる」と指摘する。

その上で「地域医療の体制構築は東北全体の問題だ。地元自治体や知事会などが当事者意識を持ち、どんな医学部や設置主体がふさわしいか検討すべきだ」と提言する。

 

 

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