『東京新聞』埼玉版 2013年9月29日付
奨学金問題 「埼奨ネット」発足
大学時代に借りた奨学金の返済に苦しむ若者を救済するため、弁護士や教員らでつくる「埼玉奨学金問題ネットワーク」(埼奨ネット、代表=柴田武男・聖学院大教授)が二十八日設立され、さいたま市内でシンポジウムが開かれた。奨学金を返済中の参加者たちは「返せるか分からない」と不安を訴え、教育関係者からは「給付型の奨学金を普及させるべきだ」などの意見が聞かれた。
今年三月に設立された全国組織「奨学金問題対策全国会議」によると、近年は学費の高騰や家計収入の減少で奨学金に頼る大学生が増え、二人に一人が奨学金を利用。だが、就職難や非正規雇用の拡大による低賃金などで返済に窮する若者が増えている。
シンポジウムで全国会議事務局長の岩重佳治弁護士は、日本学生支援機構の奨学金がすべて貸与型であることや、返還猶予期間が短いといった課題を挙げ、給付型奨学金の普及などを呼び掛けた。
社会人二年目で団体職員の男性(24)=さいたま市浦和区=は壇上で、自身の窮状を説明した。高校時代に父が失踪し、大学時代に約七百五十万円の奨学金を借りたという男性は「今の月収は二十万円。月約三万円の返済は苦しく、体調が悪くても病院に行くのを控えている。個々の事情に応じた返済を認めてほしい」と訴えた。
埼奨ネットは今後、県内在住の若者の相談に乗るほか、奨学金制度の改正や啓発活動を進める。柴田代表は「若者の未来を切り開くはずの奨学金が逆に未来をふさいでいる。若者に笑顔を取り戻したい」と話した。問い合わせは、埼玉総合法律事務所=電048(862)0800=へ。 (池田友次郎)