『中日新聞』 2013年9月19日付
「奨学金」世代間で見方に差 経済状況、大きく変化
利用者や返済に苦しむ人が増える奨学金。しかし、高齢者を中心に「ありがたい制度であって、返済はそんなに難しいはずがない」といった声も強い。ひと昔前の利用者と近年の利用者では、経済状況などが大きく違い、それが奨学金への見方の差につながっている場合が多いようだ。こうした「世代間断層」について考えてみた。
「世代間断層」という言葉は、奨学金問題対策全国会議の代表を務める中京大国際教養学部の大内裕和教授が好んで使っている。
名古屋市昭和区の中京大で、毎月一回のペースで「愛知県学費と奨学金を考える会」の例会が開かれる。会員の大学生、奨学金問題に関心を持つ市民、法律家、地方議員らが、大内教授を中心に話し合う。
この席でよく話が出るのが、ずっと昔の体験やそのころに得た知識を基に「奨学金問題はたいしたことはない」と話す人の存在だ。「親に『奨学金問題ごときでそんなに頑張るな』みたいに言われて激論になった」と大学生が打ち明けたこともある。
近年、大学生をめぐる経済状況は厳しいが、二、三十年前はそれほどではなかった。大内教授は「五十代以上と三十代以下では、考え方に体験から生まれた断層が生じている」と解説。大学生らは親の年齢以上の人に「現状をしっかり認識してほしい」と訴える。
大学生の奨学金の利用割合は一九九六年度は21・2%だったが、今は約50%まで上がった。この状況を知って、五十代以上の人が何げなく口にすることがあるのが「貧しい家庭だったら国立大に行けばいい。私立に比べて授業料などが断然安いので何とかなる」といった言葉だ。
昔はそうした傾向だったが、今は国立大もそれほど安くはない。授業料に入学料を足した国立大の初年度納付金は、七五年度はわずか八万六千円。その後、急ピッチで上昇。九八年度には約七十四万円になり、今は約八十二万円だ。