【災害看護教育】5大学の連携に期待する 『高知新聞』2013年7月29日付

『高知新聞』2013年7月29日付

【災害看護教育】5大学の連携に期待する

高知県立大学(県大)など看護の専門コースを大学院に持つ全国の5大学が、災害看護学の専門家を養成する共同大学院を2014年4月に設置する。

東日本大震災から2年以上が経過したが、現在も約30万人が避難生活を送る。環境の急激な変化やそのストレスなどで体調を崩したり、病状が悪化して亡くなったりする人が後を絶たない。

災害現場では救命救急だけでなく、被災者の心のケアや避難所での健康維持など長期的な支援が必要だ。それらの活動を担う看護師育成は急務で、5大学の取り組みへの期待は大きい。

災害看護は1995年の阪神大震災を機に、自らも被災した県大の南裕子学長が中心となって確立した分野だ。大学や大学院での看護教育にも取り入れられるようになり、国際的な学会もできた。看護師間の知識や教訓の共有も進んでいる。

だが、南学長は「東日本大震災ではとてもニーズに対応できなかった」と説明する。

東日本大震災では前例のない広域災害で避難者も避難所の数も想定を上回った。福島原発の事故という事態も重なり、従来の支援では被災者の命や暮らし、健康を守ることが難しくなったとの指摘もある。

そこで、より複雑化した課題に対応できる人材を育てるため大学同士の連携が重要になる。

連携する5大学は県大のほか、千葉大、東京医科歯科大、兵庫県立大、日本赤十字看護大だ。

県大は南海トラフ地震を想定した防災支援リーダーの育成を進めており、兵庫県立大は阪神大震災の研究実績がある。日本赤十字看護大は災害現場での看護、救援活動の経験が豊富だ。

共に災害看護教育をけん引してきた大学だ。各大学の強みを生かし、災害時に最前線でリーダーとなれる人材育成に力を注いでもらいたい。

卒業後の活動の舞台は国内に限らない。世界保健機関(WHO)など国際機関でインターンシップを行い、自然災害だけでなく、紛争地の難民キャンプなど海外の災害現場でリーダーシップを発揮することも期待されている。

世界各地で大勢の人が内戦や虐殺、暴力、飢餓、災害の危険にさらされている。命の重みに国境はない。海外でも災害看護の力を生かせるはずだ。

 

 

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