医療技術創出へ政府に司令塔 産業競争力会議、薬や機器開発『日本経済新聞』2013年3月30日付

『日本経済新聞』2013年3月30日付

医療技術創出へ政府に司令塔 産業競争力会議、薬や機器開発

 安倍晋三首相は29日開いた政府の産業競争力会議(議長・安倍首相)で、日本発の医薬品や医療機器の開発を加速するため医療政策の司令塔となる新たな組織の具体策を早急につくるよう関係閣僚に指示した。日本の医療技術をアジアなど新興国に展開するための推進体制もつくる。医療・健康分野の成長戦略を強力に進める狙いだ。

 新組織は米国の国立衛生研究所(NIH)の日本版となる。大学など全国の研究機関の成果から有望な技術を探し出し、産業界に橋渡しすることで実用化の道筋をつける。

 各省庁に分かれた医療政策や予算を一元化する狙いがある。例えばiPS細胞を活用した再生医療では、基礎研究を文部科学省、臨床応用を厚生労働省、産業育成を経済産業省が担っており、政府内の連携不足が指摘される。各省庁の予算が重複する例もあり、一体的な戦略が描けずにいる。

 米NIHはがん研究所、ヒトゲノム研究所など27の研究機関を束ね、医学、生命科学研究の予算を配分している。ほかにも類似の機関を持つ国は多いが、日本では各省庁や大学、産業界の利害が対立して実現していない。

 首相は会議で「研究と臨床がつながっていないことが革新的な治療手段を実用化するネックになっている」と指摘。「研究と臨床の橋渡しや研究費の一元的配分の司令塔機能が必要」と述べ、厚労相、文科相、経産相に具体策づくりを求めた。政府は2014年度にも新組織の設立を目指す。

 アジア新興国に日本の医療技術やサービスを一体的に提供する体制づくりにも着手する。日本に治療に訪れる外国人患者を支援している一般社団法人、メディカルエクセレンスジャパン(東京)が役割を担う予定。同法人は11年に経産省の支援で設立された。今後は厚労省も省内に医療国際展開戦略室(仮称)を設け、同法人を軸にした海外展開を支援する。

 田村憲久厚労相は会議で電子処方箋の検討や介護ロボットの普及を促す方針も示した。ただ民間議員が求めた医療費の自己負担の引き上げや病床規制の撤廃、医療機関への株式会社参入などは「実施困難」と回答。6月の成長戦略の策定に向け、引き続き議論する。

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