先端研究、国が大学に出資へ 事業利益出れば回収『朝日新聞』2013年1月9日付

『朝日新聞』2013年1月9日付

先端研究、国が大学に出資へ 事業利益出れば回収

 【花野雄太】大学の先端技術の研究成果を社会で役立てるため、文部科学省は、利益が上がれば回収することを前提に大学へ出資する事業に初めて取り組む。民間企業から資金協力を得ることを義務づけ、大学に研究成果の「刈り取り」を促す。

 出資額は1200億円。安倍晋三首相が重視する「経済再生」の一環と位置づけ、今年度補正予算に一括計上する方向で最終調整している。

 東京大や京都大など世界トップレベルの研究をしている大学に出資する計画だ。研究案件は大学側が決めるが、文科省は、新型の発電システムなどのインフラ、再生可能エネルギー、iPS細胞の臨床応用などの研究を想定している。

 大学がパートナー企業を探して共同研究し、5年程度での実用化をめざす。成功して利益があがれば、国の出資分を返金させる仕組みだ。融資と違い担保や利子は取らない。

 日本の大学は、基礎研究レベルの高さには定評があるが、実用化や商品化につなげられなかったり、他国に先んじられたりする課題が指摘されている。今回の事業は、リスクを敬遠して民間金融機関が融資しないような研究を、国が後押しする狙いがある。大学の研究室で埋もれている技術を、不況で研究投資を手控えている企業と結びつけ、国際競争力や大学機能の強化につなげたい考えだ。

 あくまで大学主導とし、大学のブランドをかけて取り組んでもらう。案件は企業再生のノウハウを持つ専門家らが入って厳選する。企業側には3~5割程度の費用負担を義務づける。

 同時に、他の国立大や公立・私立大向けにも600億円の予算をつける。こちらは、科学技術振興機構を通じて企業に出資し、企業から返還させる方針だ。

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