大学不正経理 業者との癒着にメスを『北海道新聞』社説2012年12月25日付

『北海道新聞』社説2012年12月25日付

大学不正経理 業者との癒着にメスを

 北大と道教大で、教員が業者に多額の「預け金」を繰り返してきた実態が明らかになった。

 道教大の教授は私的流用が判明した。預け金がこれまでの調査で総額2億円に達した北大も、私的流用がなかったか調査を進めている。

 流用があった道教大教授は、家族名義の宿泊代などを預け金から捻出していた。大学の教壇に立つ者として許されない行為だ。

 北大はまだ中間報告の段階で、今後、期間を拡大して調査を退職教員にも広げる。徹底解明し、うみを出し切らなければならない。

 預け金は、年度末に使い切れなかった研究費を業者に預け、後で別目的で使う行為である。

 交付元である国などへきちんと返還するのが筋だ。

 北大の調査結果で看過できないのは、預け金防止策を強化した2007年度以降も、架空取引という手法で不正が続いていたことである。

 北大は、納入物品を監視を兼ねた納品受付センターでチェックする仕組みにしたが、あとで物品を業者に持ち帰らせて代金をそのまま預け金にするなど抜け道があった。

 見つからない限り不正経理は続けていいとする感覚がまん延していたとすれば、悪質と言わざるを得ない。研究費は公金という認識が欠けているのは明白だ。

 業者にとっては、預け金が生じても、次年度以降の契約が取れれば、長い目でみて利益が出せる。中間報告は、教員と業者のもたれ合いが続く限り、完全には防げないこともうかがわせる。

 懸念されるのは、業者との癒着は、横領や収賄といった犯罪にもなりかねないことだ。

 京大の元教授が現職時代、特定の医療機器販売会社に総額4億円余の物品を発注した見返りに、海外旅行費用などを肩代わりさせ、収賄容疑で逮捕された事件は記憶に新しい。

 北大はこれまで約100人の教員から事情を聴取し、35人の不正経理を認定した。預け金について、多くは研究費を使い切るのが目的で、別の研究や物品購入に充てていたと説明しているという。

 研究費を単年度で使い切らなくてはならない制度は現実的ではないとの指摘がある。結果を出すまでに長い年月を要する研究もあるからだ。次年度に持ち越せる仕組みを検討しなければならない。

 教員の直接発注を禁ずる対策を取っている大学もある。北大も納品後の抜き打ち検査などを検討中だ。

 教員一人一人があらためて、研究者としての倫理観を自らに問うべきだろう。

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