『毎日新聞』社説2012年10月28日付
私学解散命令 最悪事態を避けるには
結局、学生にしわ寄せがきた。
創造学園大学などを営む学校法人「堀越学園」(群馬県高崎市)が行き詰まり、文部科学省が年度末までに解散命令を出すことになった。
解散命令は過去3例あるが、既に休眠状態で教育の実態がなかった。今回のように在学生がいる中での決定は初の異例事態だ。
文科省は残された学生たちの転学あっせん、奨学金の継続など必要な支援に万全を期してほしい。それとともに、学生たちを巻き込んだ事態を重く受け止め、これを避けるための制度改善に目を向けよう。
解散命令は妥当と答申した大学設置・学校法人審議会(文科相の諮問機関)の学校法人分科会長も特にコメントを出し、今回のような学生を抱えたケースに対応できる制度的方策を今後の検討課題に挙げた。
同学園は、学生減、理事らの経営権をめぐる内紛などで経営難に陥り、教員の給与未払い、電気料金滞納などという深刻な状態になっていた。文科省は悪化が進んだ07年以来学園を再三行政指導し、財務状況などの報告、再建策の明示を求めた。だが、学園側は十分協力せず、結局、強制的効力がある「解散命令」を使うことになったという。
特異な事例ではある。
だが、少子化で進学者数が頭打ちになるなど、定員を満たせない私立大学が増えている中、今回の事態は警鐘的な意味を持つ。
日本私立学校振興・共済事業団の調べでは、今春、4年制私立大学で定員割れしたのは46%にのぼり、過去最悪の水準だ。学生からの納付金が主柱である私立大にとって、学生減はただちに経営に影を落とす。一部では募集停止も行われている。
また90年代初めの大学設置基準大綱化(緩和)に伴って大学数も増え、今年度は国公私立で783校、うち私立が605校を占めている。
こうした流れの中で文科省は学生を抱えた破綻校が出ることも想定し、近隣校に学生引き受けを要請、応じた場合は経常費補助を増額するなどの対策を05年にまとめた。今回それが適用されることになる。
だが、そうした最悪の事態を避けるため、経営状況公開の徹底など透明化を図ることが何より肝要だ。第一義的に経営者の責任だが、ここに至るまで、行政側にそれ以上なすすべがなかったのかも問われよう。
それとともに、少子高齢時代に多くの大学が存立するためには、もっと大学での教育機会を地域に開き、地元産業界も大学を人材養成、起業の場として活用するなど、積極的に取り込んでいくことが求められる。
また今回の事態を教訓と生かすため、検証と公開も不可欠だ。