MSN産経ニュース配信記事2012年7月21日付
「国家公務員に労働協約締結権」 今国会の法案成立断念 連合「野田降ろし」も
野田佳彦首相は、国家公務員に労働協約締結権を付与する公務員制度改革関連法案について今国会での成立を断念する意向を固めた。複数の政府関係者が20日、明らかにした。
法案には自民党が強く反対しており、強行すれば消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法案の成立などに影響を及ぼしかねないと判断した。民主党最大の支持団体である連合(古賀伸明会長)は、公務員改革法案の成立を首相支持の前提条件としてきただけに、今後一気に「野田降ろし」に転じる可能性もある。
政府関係者によると、首相は、今国会では一体改革関連法案や、予算執行に不可欠な特例公債法案の成立を最優先させるよう民主党執行部に指示。公務員改革法案については「継続審議もやむを得ない」との旨を周囲に伝えた。政府高官も「他の法案を押しのけて公務員改革法案が審議されることはない」と語った。
民主党は6月1日、自民党欠席の中、衆院本会議で公務員改革法案の趣旨説明・質疑を強行、衆院内閣委員会に付託した。だが、内閣委では、共通番号(マイナンバー)導入のための個人識別番号法案や地域再生法改正案などの審議を優先させており、公務員改革法案の審議入りは早くても8月下旬にずれ込む見通し。8月末までに強引に衆院通過させても会期末(9月8日)までの成立は困難な情勢だった。
しかも自民党は「官公労の権限を強め、公務員の厚遇につながる」として同法案に強く反発し、審議に応じない構え。政府・民主党は当初、自民党が抵抗しても公明党の協力を得て参院で可決・成立させることができると踏んでいたが、一体改革法案の衆院採決後に参院民主党から離党者が相次ぎ、民主、公明、国民新の3党の賛成による可決・成立は不可能となった。
公務員改革法案は、人事院を廃止し、労組との交渉窓口となる「公務員庁」を内閣府の外局として設置することが柱。公務員庁は、労組と労働協約を締結した上で、給与や労働条件を取り決めることになる。幹部公務員人事を一元管理する「内閣人事局」の新設も盛り込まれている。