声明「財務省による政策宣伝活動としての組織的な大学講義は学問の自由を侵すものである」(2012/7/11) 全大教中央執行委員会

(2012/7/11) 全大教中央執行委員会  

声明「財務省による政策宣伝活動としての組織的な大学講義は学問の自由を侵すものである」

1. 財務省が今年1月から5月にかけて、国・公・私立43大学で、消費税増税の必要性について学生の理解を求めることを目的として、財務省職員による講義等を実施した。これは、国・公・私立大学に対する要請によるものである。財務省はホームページ内の「税と社会保障の一体改革」の欄で、消費税増税の必要性の説明資料や各地での対話集会と並んで「大学での説明会」としてその実施状況を宣伝している。こうした経緯から、この一連の大学での講義が、財務省による組織的・系統的な政策宣伝活動として行われたものであることは明らかである。

2. 財務省職員による「説明会」の多くは、当該大学の開講科目における講義の一部という形式をとって実施された。

 大学の講義において、当該科目に密接な関連があるものとして、学外から講師を招いて授業を構成することは、それが当該科目の担当教員の発意に基づき、かつ日本国憲法第23条、第26条及び教育基本法第14条に則って行われるかぎり、たとえ当該学外講師が政治家や官庁職員であったとしても、適法かつ適切な教育活動として是認されるものである。

 しかし、今回の一連の講義は財務省の組織的・系統的政策宣伝として実施されたもので、担当教員の発意によるものとは認められない。これは大学と財務省の間に存在する事実上の支配関係を背景に、大学がこれを拒絶しがたいことを知りながら、財務省から大学にもちかけられたものであり、たとえ「要請」の形式をとろうと実質的な強制があったと言わなければならない。

 大学は、教育・研究活動が政府の政策宣伝手段として利用されることを拒否しなければならない。それはひとり、大学教員の学問の自由・教授の自由を擁護する要請によるのみならず、講義という形を借りて行われる政府の政策宣伝を否応なく聴かされる学生の学問の自由・教育を受ける権利を侵害する可能性があるからである。

3. 国立大学において、当該大学関係者以外の個人・団体が、その施設設備を使用して講演などを行おうとするときは、当該大学の管理機関から、その行事を大学の場で行うことが相応しいかどうかを含めた判断をともなう施設設備の使用許可を得て、また定められた使用料を支払わなければならない。当該国立大学の職員が施設設備を使用して学会大会を開催しようとする場合もこの手続を踏むことになっている。いわんや、政府機関が政策宣伝を目的として国立大学の施設設備を使用するときは当然このルールに従わなければならない。財務省職員による宣伝活動は、講義という形式を借りることでこの手続を回避し、また当該国立大学が本来得ることのできた施設設備使用料収入を徴収しなかったものであり、施設管理上もきわめて不適切である。

 私たちは、今回の大学講義や「給与特例法」をふまえた国立大学等法人への賃金引き下げの「要請」等にみられる政府による事実上の強制、大学への介入に強く抗議する。私たちは、学問の自由と大学の自治を守り発展させるため、今後とも取り組みを進める決意である。

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