『河北新報』2012年6月3日付
見上一幸・宮教大新学長に聞く 被災地の学習支える
みかみ・かずゆき 東北大大学院理学研究科修了。宮城教育大助教授を経て94年教授。環境教育実践研究センター長、付属小校長などを歴任。07年総務担当理事・副学長。専門は生物学。神奈川県綾瀬市出身。
宮城教育大(仙台市青葉区)の新学長に、見上一幸氏(65)が4月1日付で就任した。東日本大震災の教育面の復興支援や、大学の運営方針について聞いた。(聞き手は報道部・佐藤素子)
-学長就任の抱負は。
「少子化が進む一方、保護者からは質の高い教育が求められており、大学の責任は大きい。被災は岩手、宮城、福島3県の広範囲にわたる。被災地の大学との連携を進め、これまで以上に東北を意識して地域貢献に取り組みたい」
-震災後の6月、学内に教育復興センターを設けた。
「学生も職員も積極的に被災地の学校を支援し、大きな財産になった。本年度は気仙沼市の協力を得て、現地に活動拠点を設けた。大学職員と市職員を1人ずつ常駐している。学生ボランティアはここで心のケアなどの基礎トレーニングを受けた上で、支援先に向かう。仙台市中心部と岩沼市にも順次設置する」
-被災地の学力低下、教育格差の拡大が懸念されている。
「あのときこうしていれば差が出なかった、と後悔しないよう学力レベルを上げる新たな挑戦が必要だ。現場は多忙だが、指導法の研修会を開くなどしてサポートしたい」
「仮住まいのため、住居や部屋が狭いなどの理由で、勉強に打ち込む時間が取りにくい子どものケアにも取り組む。自治体と連携しながら、学習ボランティアの派遣などを続け、少なくとも10年はしっかりと支える」
-大学院教育の充実も掲げている。
「教科教育を学ぶ従来の修士課程を見直し、大学院生が授業で学んだ研究内容を、実際に教育現場で生かせる場を設ける。より実践的なカリキュラムにして、他大学との差別化を図る」
-学生と教員に期待することは。
「学生には、子どもに『勉強って面白い、楽しい』と思わせる教師になってほしい。教師は多様な考えの親と接する。海外交流などにも積極的に参加し、グローバルな視点を養ってほしい」
「教員からは、研究の時間がないという声を聞く。IT化や代行などで事務作業を簡略化したり、海外での研究を後押ししたりして、環境づくりを進めたい」