国立大学法人評価委員会(第40回) 議事録 平成24年3月23日

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国立大学法人評価委員会(第40回) 議事録

1.日時
平成24年3月23日(金曜日)10時から12時

2.場所
三田共用会議所3階C~E会議室

3.議題
  1.委員長選任及び委員長代理指名
  2.平成23年度評価の評価体制等について
  3.中期目標変更原案及び中期計画変更案について
  4.国立大学改革について

5.その他

4.出席者
委員
北山委員長、大滝委員、河田委員、桐野委員、﨑元委員、塩見委員、田籠委員、フクシマ委員、寺島委員、中小路委員、南雲委員、早川委員、前原委員、松井委員、宮内委員、津坂臨時委員、水戸臨時委員、森山臨時委員

文部科学省
森口文部科学事務次官、山中文部科学審議官、藤木文部科学審議官、田中総括審議官、坂東高等教育局長、吉田研究振興局長、清木文教施設企画部長、德久政策評価審議官、常磐高等教育局審議官、森本研究振興局審議官、髙橋大臣官房会計課長、義本高等教育企画課長、芦立国立大学法人支援課長、澤川学術機関課長、髙橋国立大学法人支援課企画官、下敷領国立大学法人評価委員会室長

5.議事録
 1.国立大学法人評価委員会総会の議事に先立ち、文部科学省を代表して、森口事務次官から挨拶があった。
 2.事務局から、会議資料の確認、委員会概要の説明が行われた。
 3.委員の互選により委員長の選任、委員長による委員長代理指名が行われ、北山委員が委員長に、また、伊井委員が委員長代理に指名された。
 4.平成23年度評価の評価体制について
(中略)

【北山委員長】
 なお、この中期目標・中期計画の変更については財務省と協議する必要があるとのことであり、認可等の手続が終わる前に変更があった場合等の扱いについては私に御一任いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、次ですが、冒頭、次官からもお話がありましたが、「国立大学改革について」を議題と致します。現在、文科省において議論されており、国立大学法人評価にも大きく関連性がございますので、その内容についてまず説明いただき、その後、委員の皆さんと意見交換を行いたいと思います。

 それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【事務局】
 資料4-1をまず御覧いただければと思います。大学改革タスクフォースでの検討状況ということでございまして、冒頭、森口次官からもお話がございましたが、大学改革をめぐってはこれまでもいろいろなところで議論されてきておりますが、昨年11月に行われました政策提言仕分けでもまさにこの点が取り上げられまして、例えば、大学の国際競争力が低下しているのではないか、大学が社会の実情と乖離し、社会ニーズに十分対応できてないのではないか、あるいは大学改革の進捗がよく見えないなどといった厳しい御指摘がなされたところでございます。

 そうしたことも踏まえて、24年度の予算編成過程におきまして、文部科学・財務両大臣の間で大学改革について国として財政的にも支援していこうという一定の合意がなされ、そういう状況を踏まえて、文部科学省内に大学改革タスクフォースというものを設置して、ここで様々なものについて整理の上、改革の方向性について提言していこうという動きになっているところでございます。

 その検討体制につきましては、森ゆうこ文部科学副大臣をトップに、政務からは城井大臣政務官にお加わりいただき、事務方としても森口次官を筆頭に各関係官が参加して、議論を進めるという状況になってございます。

 第1回のタスクフォースについては、昨年12月15日に開催を致しまして、資料上はこれまで5回ということになってございますが、これは中教審でお配りしたものをそのまま活用させていただいておりますので、修正してございませんが、その後3月13日に第6回を開催しておりますので、これまで6回のタスクフォースを開催しているということでございます。そこで、近々一定の成果物といいましょうか、プランのようなものを取りまとめ、それを踏まえて、夏頃までに具体的な改革案をタスクフォースで取りまとめる予定にしてございます。

 具体的にどんなことを検討しているかというのは資料の裏面を御覧いただければと思いますが、まずはグローバル化人材を育成するための学生の学習密度の充実と学修成果を重視した教育システムの確立という話でございますとか、高校と大学の接続の関係の問題、3つ目としましては、そうしたものを実現するために必要なシステムの整備ということで、まずその中で幾つかございますが、特に国立大学法人評価委員会における議論と関連してくると思われる話が、例えば世界標準の質保証の仕組みの整備についてであり、その中で、評価のあり方についても御議論を頂いている状況になってございます。

 ここにおける議論の状況については、この評価委員会の場で今後も随時御紹介をさせていただければと思ってございます。

 続いて資料4-2でございますが、財政的なことでございますが、国立大学の予算については運営費交付金が中心になっており、来年度につきましては1兆1,000億円という金額を計上して、今、国会でも御審議を頂いている状況でございます。加えてこの運営費交付金のほかに、大規模な施設整備の関係の、これは交付金ではなくて補助金になりますが、これをまさに今年度、23年度から措置したものがございまして、これを引き続き来年度も措置しているということでございます。さらに来年度においては、新しい補助金ということで、先ほど財務大臣・文部科学大臣合意という話をさせていただきましたが、その関係で新設をする国立大学改革強化推進事業138億円を計上しております。これらをあわせると、国立大学に対する経費と致しまして総額1兆1,604億円ということで、現在、予算案として御審議を頂いている状況でございます。

 ちなみに、この金額につきましては、平成16年度の法人化以降、毎年交付金自体は縮減をしてきた状況でございますが、平成24年度につきましては、交付金と2つの補助金をあわせて初めて対前年度増に転じることになります 

 あと、ちょっと細かいことが書いてございますが、そこはお時間のあるときにお目通しを頂くと致しまして、資料4-3を御覧いただければと思います。

 来年度新設予定の国立大学改革強化推進事業の関係でございますが、これは1枚おめくりいただきますと、そこに財務・文部科学両大臣の合意書を付けてございます。詳細についてはその次3枚目に付けてございますが、国立大学改革を進めるために、特に3つ目のパラグラフを御覧いただければと思うのですが、国立大学については、幅広い分野において欧米の主要大学に伍して教育研究活動を展開している大学も存在するが、それ以外にも、分野的には国際的にすぐれた水準にあるものも少なからず存在しているということで、今後の知の国際競争を勝ち抜いていくためにも、こうしたところに重点的な強化策を講じる必要がある。また、国立大学の役割として、特化した分野・地域での卓越した人材育成の視点も必要だと。こうした認識から、今回の国立大学強化推進事業を創設したというものでございます。

 資料4-4を横に置いて御覧いただければと思うのですが、これは国立大学の集まりである国立大学協会が昨年6月に出された国民への約束という文章の概要版でございますが、国立大学自身もみずからさらに変わっていかなければいけない、機能を強化していかなければいけないということで、こうしたことをやっていきますよということを国立大学の側から既に表明されている。ナショナルセンター機能の徹底的強化でありますとか、リージョナルセンター機能の抜本的強化でありますとか、そうしたことをいろいろ提言されている。こうしたことを国としても後押ししていくための財政的ツールとして、国立大学改革強化推進事業を来年度創設したということでございます。

 また資料4-3の1枚目にお戻りを頂ければと思います。事業の具体的なイメージのようなものでございますが、国立大学改革を強化推進するためにこれまでにない深度と速度で取組を進める大学に重点的に支援をする。あくまでばらまきではない形で重点的な支援を行うということで、取組例としてはいくつか例示しておりますが、こうしたことをやれば良いというよりは、それぞれの大学ごとに課題等も違いますでしょうし、それぞれの実情に応じてこれまでにない深度と速度で行っていくところについて支援をしていくというものでございまして、これは具体的には個々の大学と直接いろいろなお話をさせていただきながら、今、まさにどういうところにこれを充てるかということについてやりとりをしている状況でございます 

 この事業を使って機能強化を進めていく大学については、中期目標・中期計画の変更もしていただいて、まさに大学として、社会に対してもこうしたことでやっていくのだということをはっきり表明していただいて、この事業をもとに取り組んでいただくということでございます。

 
 その関係で、ちょっと補足的になるのですが、先ほど法人評価の仕組みについての説明がありましたが、法人評価というのは大きく言えば、中期目標の達成状況をチェックするという評価になるわけでございます。従って、高い目標を掲げると、その達成状況がなかなか厳しくなって、厳しい評価になりがちだという御批判等もございましたが、今回の国立大学改革強化推進事業については、まさにそうした意欲的な取組をしていただくところ、従って意欲的な目標を掲げていただくところについて支援をしていくということもあって、評価のあり方についてもこれまでのような評価のあり方で良いかどうかということも含めて、この場でもいろいろ御意見を頂ければと思っております。
 以上でございます。

【北山委員長】
 どうもありがとうございました。これが事実上最後の議題でございますので、十分に時間をとりたいと思います。まず、私自身から申し上げます。

 中教審の大学教育部会で「審議まとめ」の取りまとめを行うということで、先日、大学分科会でもこの原案に対する意見交換がありました。

 そこで私が申し上げたのは、何年も前から、中教審や日本学術会議などが大学改革の必要性やその改革の方法等について様々な提言を行っていますが、なかなか改革のスピードが上っていない、ということです。やるべきことはすべてわかっているので、今はもう、それを実行に移す時期に来ていますし、世の中も、世界も、常に動いているので、進んでいかないと取り残されてしまいます。一刻も早く改革を「PDCAサイクル」に乗せるべきです。

 今、様々な動きが予算面でも出てきているわけですが、大学教育部会の「審議まとめ」でも、教育の質の向上のために、学生の学習時間を増やすことも含め大学の学修内容について検討することとしており、来年度は具体的なアクションプラン作成に入っていくはずです。

 そのような内容の「審議まとめ」なのですが、内容については非常に良いとしても、とにかく早く工程表を作り、PDCAサイクルにきちんと乗せることが最も重要です。大学は、Pのところは得意でも、Cをやって次のコレクションも含めたアクションにつなげていくのが苦手のようです。せっかく認証評価制度があるわけですから、改革の進捗なども評価機関などで見ていくべきでしょう。

 加えて、中教審などでは、日本の高等教育には課題が多いということについて共通の認識があるのですが、外部の人と話すと「それは知らなかった、意外である」という感じで、なかなか国民的な認識になっていない感じがします。経済的な問題、例えば、TPPや消費税の問題と比べると、新聞もあまり記事にしません。高等教育の課題をもっと世の中に発信して、国民的議論としていかなければならないのではないかと申し上げた次第です。

 それでは、皆さんの御意見をお聞きしたいと思います。前原さんお願いします。

【前原委員】
 済みません。急な予定が入ってしまって11時過ぎに退席しますので、最初に発言させていただきます。

 2つ申し上げたい。タスクフォースをやっていらっしゃるということですが、そこでグローバル人材と書いていらっしゃいます。グローバル人材は最近お題目のように皆さんが唱えるのですが、具体的にどういう人をグローバル人材というのかという具体的な人材像が、しっかり描かれていないままに論議が進んでいるケースが非常に多いと思います。このタスクフォースではその辺をぜひ明確に示していただきたい 

 2点目です。私は以前、大学評価・学位授与機構で国立大学の評価をさせていただきましたが、資料4-3に書いていらっしゃるように国立大学といってもその存在意義というか、存在価値がばらばらになってきている、非常に変化してきています。そういう意味では、もう1回各大学のミッションを見直すべき時期に来ていると思います。その際に県単位で見るのでなくて、ここでも書いていらっしゃいますが、広域の自治体連合もありますように、より広域に見て、各大学の役割分担とか、連携強化のあり方について検討していただくと良いのではないか、道州制等をにらんでやっていただくと良いのではないでしょうか。
 今、国立大学はあまりeラーニングを活用されてないと思います。eラーニング等を活用すれば、連携のあり方も非常に変わった形での連携が考えられますので、ぜひ御検討を頂きたいと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。 

【北山委員長】
 今、前原さんがおっしゃったのは、中教審でも従来から提言している機能別分化の推進が、一向に進んでいないという話にも繋がってきます。

【中小路委員】  
 今、委員長もおっしゃいましたが、大学と国民の関係というのが明らかではないというか、国民から見たときに、私立大学も含めて大学というものが一体国民生活にどういう関係があるのかというところがあまり日本は、例えば米国と比べるとクリアではないように思うのです。

 こういうタスクフォースで改革をというときに、大学という機関を国として持っているということで、国立大学に対して国が何を求めているのかというビジョンといいますか、目的が見えないように思います。そういう状態で、改革しろ、改革しろと大学だけに言っても、それぞれの大学としてどこに行こうというのはあるとはいえ、こういうまとまったお金を国立大学に出すときに、国としてどこを目指していくのかというところが大学からはあまり見えないと思います。経緯や論点を説明するドキュメントでも各大学にビジョンやニーズを持てとありますが、国が国立大学に対してどんなビジョンやニーズを持っていて、その中でどのような改革をして欲しいと言っているのか、その部分が漠としてはあると思うのですが、明らかにはなってないように思います。

【北山委員長】
 どうもありがとうございました。それでは、河田さん。

【河田委員】
 私も26歳から15年間、国立大学に勤めて、それから私立大学に移って20数年、勤務いたしました。そのころから比べると国立大学の先生方も必死になっておられるし、職員の方も頑張っておられるのは、隔世の感があると思います。しかし、先ほど南雲委員から、今回の大震災のあと、東北地方6県の国立大学(たしか7大学あると思います)の中期目標の変更のところに東北大学しか出てないではないかと、指摘がありました。これは僕は問題だと考えます。私は今、私学の助成金と共済の仕事をしているのですが、東北被災3県、ひどい被害を受けられて、それぞれの県においては大学が中心になって、そして私学も協力しながら復旧・復興の活動を行っています。岩手県は岩手医科大学という私立の医科大学があるわけですが、それは別にして、やはり国立大学が中心になってくださらなければだめであろうと思います。

 特にこういう国民の約束ということで、東日本大震災で被害を受けたときに、こういうことをやるのだということを表明しておられる86国立大学の中の被災3県の大学だと思うので、今回の国立大学の改革強化の予算をばらまきにならないようにと芦立課長もずっと言っておられますが、これを地域の大学の連携とか、大学の枠を超えた連携ということで私学も取り入れるような形で、かつ今回の大震災に国立大学が何らかの貢献するために百三十数億を使ったということを表明する必要があります。そうすると一般の方たちも、国立大学も頑張っているな、86が多過ぎるとは思えないなというふうになると思うので、ぜひともそういう努力をし、そういう形で使っていただければ、私学に属する者としてはありがたいと思います。

 以上です 

【北山委員長】
 どうもありがとうございました。寺島さん、お願いします。 

【寺島委員】
 発言をさせていただきますが、私、実はこの評価委員会は第1期から参画させていただいて、南雲さんと、現場の学長とも向き合った思い出があるのですが、法人化というのから一つの時代が流れて、国立大学法人化は果たしてうまくいったのかどうかということから、今後の国立大学の改革という議論が出てくるのだろうと思います。

 経年変化の中で今考えなきゃいけないことは、大学改革の思想の軸ですね。要するになぜ法人化しようとしたのかというのですが、これはその時代の背景を見事に反映していて、ある意味では日本がそういう時代に向き合っていた一種の競争主義、市場主義の徹底を大学にも持ち込む必要があるのだということから国立大学の法人化という動きが出てきて、その思想が一巡して、世界的にも競争主義、市場主義の徹底が再評価されなきゃいけないような局面が来ている中、さかのぼってみれば、20年前に冷戦が終わって、大競争の時代が来たなんていう時代認識を背景にして起こった一群の動きの中から法人化というのが動いたのだと思うのです。

 それから一巡して、僕は、ちょっとおやっと思ったのですが、今日配られている国立大学の改革についての基本的考え方という中に、まだ言っているのだよなという意味で、大競争の時代における国際競争力の強化に加えてとか、要するに僕はここだと思うのですね。根底に、一体どういう政策思想の軸を持って国立大学をさらなる改革に向けていこうとしているのかというところがものすごく重要で、一段と大競争の時代に向き合うということですかと。結果的には大競争の時代と向き合って日本の教育予算を削減して、何だかんだ言いながら、その中で各大学が自主・自律で工夫して頑張ってくださいねというところで、改革という流れをつくったようなものだったわけですが、そろそろ基本的な思想の軸を組み立て直さなきゃいけないのではないかなと思います。

 これは、大学が上げてきた業務運営と財務内容について、言ったとおりやっているかどうかという程度のチェックだったら、評価というものについてそれほど難しいことを掲げているとは僕は思いませんが、まさに根底のところで経年変化、第1期からどう、本当に、例えば経済、産業が抱える状況が変わったのか、それから大学に進学してきている学生の中身、コンテンツですね。18歳人口が120万になってしまっているような状況の中で、大学に与えられている使命ってどういうふうに本当に変わっているのかとか、もう1回本当に考え直すときに来ているのではないかなと思う。

 従いまして、例えば一時、欧米の大学に乗り遅れちゃいけないという発想で日本の大学が一気に目指したMBAとか、法科大学院というものは、果たしてどれだけの意味があったのか。むしろネガティブな意味しかなかったのではないのかというぐらいの気さえしますが、そういう意味において、いわゆる第1期からの国立大学改革のプロセスがどうなったのかということについて、文科省としても責任を持ってひとつまとめるべきだと思うし、今までの国立大学評価に関わっていた人たちの意見をもう1回聞き直して、ここらあたりで縛り直して、次なる評価に向けての思想の軸を固め直すべきなのではないかなと思います。

 それが多分、例えば各大学に現場で向き合う人たちの考え方にも大変大きな刺激を与えるだろうし、思想統一なんかをする必要は全くなくて、それぞれが自分の考え方によって向き合えば良いことだが、少なくとも知ってなきゃいけないことを知らずに評価はできないというか、評価というのは価値ですから、価値判断のベースになる思想みたいなものなしに評価できない。これは民間企業で言えば、中期経営計画のすり合わせ作業を通じて収れんさせて、全体の中期計画をにらむというのが文科省の役割だと思うのですが、そういう意味合いにおいてぜひその辺をあれしてもらいたいなと。

 私自身もその後、このグローバル競争力強化なる流れの中で、キャンパスアジア構想とか、グローバル30というのに参画して見ていて、つくづく感ずることがあるのですが、第1期から大きく環境が変わったとすれば、まずアジアダイナミズムとの向き合い方がまるで変わってしまった、日本の貿易構造から人の動きまで含めてグローバルというが、実態的には欧米という視界でグローバルが議論されがちですが、アジアとの相関がすごく重要になって、そういう視界がどれほど取り込まれるのかとか、例えばそういうときに大学というが、各大学が出した目標をチェックしていれば良いというのではなくて、例えば日本の環境問題とか食料問題、医療でアジアのフロントに立っていくためには、アジアの例えば医療大学として、中核大学みたいなのを日本自体が創設して頑張らなきゃいけないような局面に来ているかもしれないなんていう話題に、最近いろいろな意味においてぶつかるのです。

 そういう意味で科学技術の分野をもにらんで、日本が本当の意味で世界の新しい変化の中で前に出るためには、大学がどうあるべきかというところに立ち返った考え方が必要になるのではないかなと思います。

 それからもう1点だけ。実際に評価に参画してきて感じていることは、先ほど文科省自身の方も言っておられましたが、学長として自らに謙虚で厳しい人ほど、達成状況について厳しい認識を持っている。自分に対して甘い人ほどよくやっている、頑張っている、おれはものすごくよくやっているのだという評価が出てくる。そういう中で客観的に評価するというのは非常に難しい。従って、現実にこの表を見ていてもわかりますが、ほどほどによくやっているところに全部の法人が入ってくるみたいな評価に終わってしまうわけです。

 そこで、具体的に行っているアクションとか、実際に大学で学んでいる学生とか、そういう人たちの評価というものも視界に入れながら、大学評価というものの質をもう一歩前に出すところにもう来ているのかなというのが、第1回から参画している僕のあれなのですが、南雲さんなんかがどうお考えになっているかむしろお聞きしたいぐらいなのですけど。
 以上です。

【北山委員長】
 貴重な御意見どうもありがとうございます。それでは、フクシマさん 

【フクシマ委員】
 今回初めて出席をしましたので、今、寺島委員のお話を伺っていて、そういう経緯だったのかと私自身大変勉強になりました。2点申し上げたいことがあります。

 1点目は、先ほど前原委員がお話になられたグローバル人材という点についてです。私自身20年間、人材コンサルティングの仕事をしてきまして、日本の人材のグローバル化というのは10年以上遅いと常に思ってきました。従って、国立大学で真剣にグローバル人材というものを取り上げてくださっているというのは大変うれしいことなのですが、遅過ぎるという感は否めません。先ほど前原委員から「どういう人材像が必要かという要件を明確にする」という御提言があったのですが、これは非常に重要なことだと思います。

 また、今日本の人材のグローバル化はスピード感がないというお話をしたのですが、今回、実際に資料を拝見して、グローバル人材の育成にどこでどれだけ、どういうことをやっているかということが、私の理解不足かもしれませんが、分かりにくいと思います。実際にはかなり先進的なことをやっていらっしゃるのではないかとは思いますが、私の友人で国立大学で日本語教育をしている人がいるのですが、その辺の語学の教育ということについての強化がまだ足りないのではないかという印象があります。

 そして、2点目としては、今、寺島委員がおっしゃった一番最後のポイントですが、アジアのダイナミズムを取り入れるという点です。アジアの経済的台頭で、グローバル教育の定義が大分変わってきているであろうということは、ビジネスの世界から見ても感じております。

 先日、ある会合で、高校生対象に、英語というのはちょっと文化的にハードルが高いだろうということで、中国語、韓国語を教えるというプログラムを積極的に進めていらっしゃる、御存じの方はいらっしゃるかと思いますが、ザ・ジャパン・フォーラムという組織でお話をする機会がありました。そういう「多言語教育」を通して、日本の人材をグローバル化しようという活動を進めていらっしゃるのです。これはもともと海外での日本語教育というところが始まりだったのですが、多言語に拡大しています。そういうことを考えていきますと、やっていらっしゃるところはあると思うのですが、国立大学の中でそういう声が聞こえてこない。アジアの重要性をもう少し加味する必要もあると思います。

 冒頭に伺うべきだったのですが、資料4-1のタスクフォースのところで、裏面の1の「グローバル化人材」という言葉がありますが、「グローバル人材」と「グローバル化人材」は何か違いがあるのでしょうか。ざっと見ますと、「グローバル化するための起爆剤になるような人材」という意味で使われているのか、「グローバル化をするための人材」なのか、それとも「グローバル人材」なのかというのはかなり意識に違いがあるような気がするのですが、いかがでしょうか 

【北山委員長】
 文科省の方、どうですか。

【義本高等教育企画課長】
 これは言葉をちょっと端折って使っておりますが、グローバル化社会に対応した人材という意味でここで使わせていただいておりますので、そういう意味でございます。 

【フクシマ委員】
 その場合に日本の教育システムを考えたとき、先ほどアジアというお話をしたのですが、日本人だけを対象にしていること自体が既にこれはグローバルではないと思うのです。ですから、当然外から呼び込む留学生の話も必要ですし、国内の中でグローバル化を日本人に経験させるということをしていかないと、外へ出ていく人がこれだけ少ないわけですから、どんどん遅れをとってしまうのではないかと思います。
 以上です。

【北山委員長】
 どうもありがとうございました。桐野さん、お願いします。

【桐野委員】
 今まで言われたことと関係するのですが、国際化というのは既にいろいろな大学がかなり意識して、掲げることは掲げてこられたと思うのです。ただ、なかなか進まないし、私は医学部ですが、医学部を卒業して、例えば昔はやっていたのは米国に留学するという方法ですが、最近はチャンスがあっても、そのチャンスを選ばない傾向がかなり強い。国際化は重要だということについておそらく異論はないのでしょうが、これがなぜうまくいかないのかという議論なしに国際化を叫んでもなかなか難しい。我々日本人の相当な不得意種目ですね。だから、これがなぜうまくいかないのかということは、相当議論した上でかからないとだめだと思います。

 2つ目に、国際化は必ずしも言葉の問題ではなく、言葉ができれば良いだけだったら、そんな難しい問題ではないので、ここらのところもちょっと考えないといけない。やっぱり文化的バックグラウンドを相当用意してかからないと、国際化に対応できないだろうと思います。

 それから、評価のあり方の問題で先ほど寺島委員からもありましたが、この大学評価の仕組みというのは、大学がこうやるよと言って、文部科学大臣がそれでいいよと言って、おやりになったことがきちんとできているかどうかということを評価するという、おのずから限界のある仕組みなのです。ですから、以前に﨑元先生が言われたことがあるのですが、全体はとても良い評価でありつつ、全体としては徐々に落ちているということが見えないのです。正しいかどうかわかりませんが、幾つかの国際ランキングで見る限りでは少しずつ落ちている。これは抜かれているのかもしれないし、取り残されているのかもしれないので、本当の国際的な意味で大学を見るのだったら、そういう評価装置がもう一つ必要じゃないかと思います。この2点。 

【北山委員長】
 ありがとうございます。松井さん、どうぞ。

【松井委員】
 私、今年度から参加させていただいた者なのですが、数年前まで国立大学におりまして、その前は企業にいましたが、受け身の立場の国立大学の改革というか、変化が大変遅れているという寺島委員の言われたことに対して少し追加というか、そのとおりだと思っています。それで、この評価は、第2期中期目標が既に定まって、それに対してどの程度進んでいるのかというのを評価するというように認識しております。

 ただ、目に見える、大学がミニ東大化とは言いませんが、個性がなくなって、同じような中期目標・中期計画、もちろん中には少しは違ったことが書いてありますが、総体として同じようなことを書いて、それに対してどの程度進んでいるかという評価になってしまっていまして、第1期、私は国立大学にいまして、第2期の始まりぐらいに私立大学に移ったのですが、第2期に対して第1期からの大改革、つまり文科省が第1期を見て、第2期に対して付け加えて変革されることを文科省側が少しリーダーシップを持って、またはこの委員会が改革をもっと明確に見える形にするような御注文が出るかと思ったのですが、それほど出なかったというので、多分、第2期になっても、国民も評価される委員の方にも国立大学の動きが見えない、遅いということになっていると思うのです。

  結論を申しますと、タスクフォースも含めまして、資料4-3に国立大学改革強化推進事業というのがありますが、この中身を見ましても、どこの大学も中期目標に書いてあるようなことの強化のために国立大学法人にいっている1兆何千億円の1%を追加で新規に補助金として創られたということです。重点支援なのですが、重点支援の中身を少し工夫すれば、本当は10%ぐらい要るのですが、1%の中でどこの大学もできそうなこと、中期目標に書いてあるようなことを重点的に支援じゃなくて、書いてない、そして今問題になっていることを、寺島委員のように明確にするような形の重点支援をやっていただけると、大学の活動の変化がまたもっと見えると思うのです。ですから、その辺の工夫が少し必要ではないかなと思っております。

 以上です。

 【北山委員長】
 ありがとうございます。早川さん、お願いします 

【早川委員】
 皆さんから既に御意見が出ているところでありますが、先ほど委員長から国民的認識に落ちてこないという提起がございまして、メディアからこの委員会に出ているのは私1人なので、そこに対して若干意見を述べさせていただこうかなと思います。

 確かに大学改革についての情報量が少ないというのはまさにそのとおりなのですが、そこをどう考えるかというのは大きな問題かなと思っています。大学改革についての問題を報道で取り上げてもあまり関心を向けられない部分がやっぱり大きい。社会保障の問題であれば世の中の関心はどっと集まってきて、大きな話題になるわけですが、例えば私が解説の中で取り上げても視聴率的にはかなり低い状態です。大学問題は大抵低く出ますので。そうしますと、全体としては関心が低くて、なかなか良い時間帯に取り上げられないというのはそれなりの状況ではあるかなと。

 その中で大学だけではなく行政であるとか、政治の世界であるとか、大学問題として何をより具体的に発信するのか。グローバル人材の育成が大事だということは皆さん共通に思われることだと思いますが、具体的にそれは何なのだということを言っていかないことには世間的な関心を向けられないだろうと思います。そうした中で最近トピックとして秋入学問題が出てきましたが、途端に身近な問題になってしまうわけです。これは視聴率的には大変関心を向けていただいていますので、私たちからすると非常にありがたいことです。

 そういった意味で、発信とは何かというところに非常にかかわる部分ではないのかなと。冒頭で前原委員がグローバル人材、具体的にその中身が示されていないではないかとおっしゃいましたが、まさにそのとおりで、その必要性を発信していくことが必要ではないかと思います。

 もう一つ、当委員会としての役割ということをちょっと考えたいのですが、評価が大学改革に繋がっているのかどうかというところを今後検討していく必要があるのではないかと考えています。先ほど何人かの委員から出ていますが、評価をしていくことで大学自体がどんどん縮小化というか、自分たち自身がハードルを下げていって、クリアすることを目標にしていくという傾向になってきていはしまいか。

  そうなっていくと、改革、改革と言いながら大きな改革に繋がらないというか、そこのところをどう考えるのか。例えば私も前期から引き続き委員をさせていただいていますが、前期の最後だったかと思いますが、評価の書きぶりについて意見を述べさせていただきましたが、評価したことが将来にどう繋がるかということについての評価になっていないのではないか。つまり、やってきたことがどうだったかというところに評価のポイントがあって、達成度がどうであるということにこれまでわりに重点が置かれていて、今後どう変わっていくのかというところについての評価をもっとしていくべきではないのかなと思っています。そうした方向性について、今後検討していく必要があるのではないかと思います。 

【北山委員長】
 どうもありがとうございます。宮内さん、どうぞ。

 【宮内委員】
 宮内です。一番最初から評価委員に入っておりまして、評価の仕組みの段階から関わってきた者としては、御指摘はさることながら、もう一つ重要な問題があるのかなと思っております。

 それは独立行政法人の評価の問題と国立大学法人の評価の仕組みそのものがもともと異なっておりまして、独立行政法人は主務大臣が決めて、政策実現のためにこういうふうにせよと。それをどれだけやっていけるかということについての評価を行っているわけです。それに対して国立大学法人の場合には、国立大学において目標を立て、計画を立てて、それを結果としては文部科学大臣が承認し、そのとおりにやっていきますという建て付けが考えられている。その中での進捗度チェックという方法をとっているわけで、やり方としてこれが適切なのかどうかという議論は、十分にまたさらにやっていかなければならない時期になっているのかと思っております。

 もう一つ進んでいないという評価は、実は国立大学全体のガバナンスが十分に機能しているのかという問題なのではなかろうかと。確かに達成度評価だけでやっていくと、高い目標を掲げたところが、それが実現できないがゆえに、低く評価される結果になるということがあり、評価委員会の評価としては、そこはちゃんと見ましょうという約束をした上で見ていることは間違いのないところであるのですが、結果的にそういう傾向が出てしまっているということは、残念ながら大学のガバナンス、大学の自治並びに教育の自由というところから斟酌されてつくられている仕組みが、必ずしも大学側によって機能させられていないということの証左になってしまったのではないかということは残念に思っております。

 単純に国がこう決めて、こうやれという話ではないのだろうと思いますので、十分にそこの建て付けは守りながら、でも、さらに活性化できるものを大学に期待できるのかできないのか。逆に今議論されているのは、どうも期待できないことを前提に議論されているような気がしてならないところにちょっと私は懸念を感じているところでございます。 

【北山委員長】
 どうもありがとうございました。ご意見は尽きませんが、時間も参りましたので、この議題に対する意見交換は終了させていただきます。今後もこのような意見交換が行える場を設けていきたいと思います。板東さん、どうぞ。 

【板東高等教育局長】
 時間がないところ申し訳ございません。先ほどから活発に御意見いただきましてありがとうございました。特にこれからは少し攻めの目標、計画を掲げてやっていくのが必要だと思っておりますので、それにつきましては先ほど御説明をさせていただきました大学改革の強化推進事業を使いまして、今までの中期目標・計画を超えた国立大学法人の目標を掲げていくということでやらせていただきたいと思っております。

 それから、先ほど委員の御指摘のことで、ちょっと御説明を加えさせていただきたいと思います。先ほど南雲委員と河田委員から御指摘がございました、東北大学以外の大学は復興に関してどうなのだということでございますが、かなり復興支援センターを被災地の各大学がつくっておりまして、非常に積極的な取組をしている。むしろ今まで東北大学は地域貢献とか、そういった意識がどちらかと言えば弱いところであり、今回、復興に関して積極的な役割を果たしていくということを積極的に掲げていく、変わっていくというのを強く示したということではないかと思いますが、御指摘のように、ほかの大学ももう少し積極的にアピールをしていく、発信をしていくということも重要ではないかと思っておりますので、これは今後、各大学にも投げかけていきたいと思っております。

 いずれにしろ文部科学省全体、国立大学のミッションをどう考えていくのか、これからの機能をどう考えていくのかということも全体として問われていると思いますので、御指摘を踏まえて改革の取組に繋げていきたいと思っております。どうもありがとうございました。

 【北山委員長】
 板東さん、どうもありがとうございました。
 評価というものは結局のところ、目標とすべき姿にいかに早く効率よく到達させるのかということのためのPDCAの“C”ということになりますので、その辺を踏まえてポジティブに考えていく評価委員会でありたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。 
 本日の議題は以上でございますが、最後に今後の日程について事務局から御説明をお願いします。 

【事務局】
 次回の開催予定でございますが、先ほど国立大学改革についての中で御説明申し上げました改革強化推進事業のそれぞれの大学が中期目標・中期計画を変更してまいりますので、その審議を6月あるいは7月頃予定をさせていただいております。日程について改めて御案内させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。 

【北山委員長】
 これで総会は終了いたします。どうもありがとうございました。

お問い合わせ先
高等教育局国立大学法人支援課国立大学戦略室

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