リケジョを増やせ! (6)経験伝える学内女子会 『読売新聞』2012年3月23日付

『読売新聞』2012年3月23日付

リケジョを増やせ! (6)経験伝える学内女子会

 お弁当を持った女子学生が続々と集まってきた。昨年12月16日正午過ぎ、広島大学(広島県東広島市)。毎月1回開かれる「研究者を目指す女性院生・学部生のランチ持ち寄り交流会」、通称「Brown Bag Chat(BBC)」だ。

 専攻によっては女性が少なく孤立しやすい女子学生に情報交換や仲間作りの場を提供しようと、2007年に始まった女子限定のランチ会。欧米の大学にある昼食時間帯のセミナーをまねて、「昼食を食べながらおしゃべりしよう」と、同大男女共同参画推進室が呼びかけている。

 「どんな研究をしているの」「実験で何日も研究室に泊まっているよ」。学部や専攻の枠を超えて、女子学生同士が自由に語りあう。身近に女性の先輩や同級生がいなくても、ここに来ればキャリアや研究室の人間関係の悩みへのアドバイスがもらえる。

 院生にとっては、他分野の学生との交流を通して自分の研究を客観的に見られる利点がある。4月から修士課程に進む理学部4年の出射早希子(いでいさきこ)さん(22)は「どうやって研究を続ければいいか体験談を聞けるのがいい」と歓迎する。

 男女共同参画推進室長の坂田桐子・総合科学研究科教授(47)は「ここから学生同士の共同研究が始まったら面白い」と期待を込める。

 東京農工大学(東京都府中市)では、女子学生対象のメンター制度を07年から実施。農学系と工学系の全専攻から募った女性院生が、メンターとして後輩の相談に乗る。

 同大女性未来育成機構によると、以前から学生課に「博士課程にいる女性の先輩に話を聞きたいので紹介してほしい」といった要望が寄せられていた。「女性が少ない専攻の院生ほど、自分の経験を伝えたいと積極的」と同機構。メンター役の女性院生のキャリアアップのため、学会などへの旅費補助も行っているという。

 女子学生がキャンパスライフを過ごしやすくするため、施設を充実させる大学もある。神奈川工科大学(神奈川県厚木市)は他大学に先駆けて、1999年にシャワールームやパウダールームなどを完備した女子学生専用フロアを学生会館に設けた。実験で遅くなって帰宅できなくなった女子学生を安全に泊まらせることなどが目的だ。

 大学が様々な方法でリケジョの学ぶ意欲を支えている。(金来ひろみ、写真も)

 メモ 文部科学省の2011年度学校基本調査によると、大学院修士課程の在籍者数は17万5980人。専攻分野で見ると、工学、社会科学、理学の順で多く、工学は7万4702人と全体の約4割を占めている。国立大学工学部の卒業生の65%が大学院に進学。私立の22%と比べて大きな開きがある。

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